第153話 神の馬、湯に浸かる

文字数 1,163文字

 北伊勢大神宮近くに、温泉施設が誕生した。耳ざといメシヤたちは、混雑する時間帯を避けて、訪れていた。

「ラノベだと、絶対温泉回ってのが登場するよね」
 メシヤが何を期待しているのか、妙な発言をした。

「ネタ切れ感は否めないわね」
 安易なお色気展開に、危機感を覚えるマリア。

「ワタシハ、風呂上がりのご飯が楽しみだヨ!」
 日本人もユダヤ人も、きれい好きである。

「伊勢神宮に参拝しても、北伊勢大神宮に訪れなければ、片参りと言われているのですね」
 レマは日本人でも聞いたことのない話を、よく知っている。

「さあ、そろそろ中に入ろうぜ。部活で汗かいて早くさっぱりしたいんだ」
 お客の入りは、さっぱりからはほど遠かった。

「おおっ、濃尾平野が一望できる!」
 北伊勢大神宮の所在地は、濃尾平野と伊勢平野の境目付近である。

「広いな。サウナもあるぜ」
 深湯で泳ぐ迷惑客も、あらわれそうだ。

 メシヤたちは先に体を洗い始めた。

 シャンプーの後にコンディショナーで湿潤させたまま、体を泡で磨いてから一気に流せば、お湯も節約できる。

「ところでさ」
 メシヤが目に泡が入らないように気にしながら語りかけた。
「おう」
 イエスも同じ状況だ。

「食器用洗剤で逆さまにした状態で使えるタイプのものが登場したけど、コンディショナーこそ逆さまタイプを出すべきだよね」
 そう、コンディショナーは残り少なくなると、まだ十分量があってもポンプで吸い上げにくくなる。

「そうだな。けちくさいと言われるかも知れんが、最期のほうは俺もひっくり返してる。だが、形状的に逆さにしにくいんだよな」

「これさ、もしこのタイプのものが普及したら、浴室の棚の構造も変わっちゃうのかも知れないね」
 棚上部にシャンプーとコンディショナーをひっくり返してセッティングするのなら、当然、下方から液が垂れて手に取れる機構にしなければならない。キッチンも同様だが。



「マリアさま。綺麗なおみぐしですが、何かケアされているのですか?」
 裁紅谷姉妹の髪も、ペリドット色の美しい艶がある。

「特別なことはしてないんだけど、シャンプーはこれって決めてはいないわね。ドラッグストアってすぐ新しいシャンプーが出るから、気になったものに毎回変えてるかな」
 気まぐれなマリアらしい。

 エリは自前の石鹸で直に体を洗い始めた。手際の良さがもはや忍者である。
「エリちゃん、懐かしい洗い方ね」

「うン、ボディーソープはなんかしっくり来なくてネ。このほうが気持ちいいんダ」
 備え付けのモノも用意されているが、銭湯に行く場合、ボディーソープはかさばる。視界の悪い浴室で、頭皮にボディーソープを付けてしまう悲劇も避けられる。


 メシヤたちとマリアたちが、のれん外で同時に合流した。

「風呂上がりはやっぱりマミーかな!」
 メシヤ御一行は、乾いた喉を一気に潤した。




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