第186話 スーパードライバー

文字数 659文字

「熱を測るのも億劫よね」
 プロミネンス禍で、かつてないほど人類は検温されている。

「うん、簡易的に測れるのもあるけど、精度はどうなんだろうね」
 マリアもメシヤも、現代人に多い低体温というわけではない。

「あら? 電池が切れてるわね」
 マリアが引き出しからストックのコイン電池を探しだし、ドライバーを手に取った。

「マリア、用意がいいねえ」
 メシヤが見守っている。ところが。

「おかしいわね。ネジが空回りするわ」
 器用なマリアが苦戦している。
「マリア、それじゃねじ山がつぶれちゃうよ! 体温計のネジはサイズが小さいから、精密ドライバーを使わないと!」
 マリアもしょっちゅうドライバーを使うが、+0番以下のものを触ることはほとんど無い。

「融通が利かないわね」
 ブツブツ言いながら、メシヤのドライバーを借りた。

「こんなにネジが小さいと、摘まむに摘まめないわ」
 ネジを落とさないために、日本製のドライバーは先端が磁化しているものが多い。

「ただ、鉄粉を集めちゃってフィット感が悪くなることもあるんだよね」
 海外メーカーで精度の良いものは、磁力が無くてもネジがくっ付く機能がある。

「あ、これ回すの気持ちいいわね。ちゃんと合う道具を使うと仕事がはかどるわ」
 ビス・ネジの種類は覚えきれないほどたくさんあるが、ネジのフランス語がビスという関係性がある。

「ビジネスツールって言われるものがIT関係か抽象的な言葉に終始してなんだか良く分からなかったりするけど、モノ作りの世界ではビジネスよりビスネジが大事なんだ」

「綺麗に締まった・・・のかしら?」





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