第201話 礼とbroomer

文字数 718文字

「家の中はコードレス掃除機とかルンバとかが役立ってるけど、屋外の掃除はまだまだ手動でやる場面が多いわね」
 聖ヨハネ北伊勢教会を毎日掃除しているマリア。大事な客が来たときに散らかっているようでは、幸運は遠のくばかりだ。

「草刈り機とか高圧洗浄機とかは別として、手作業ばかりだよ。そっちの方がお手軽だしさ」
 店の清掃を毎日しているメシヤも、こなれている。

「メシヤ~、これなんか掃きにくいヨ~」
 昇降口の外を掃いていたエリが、ホウキをぐるぐる回した。

「あ~、これね。ホウキって場所によって使い分けるけど、僕はこの黒シダよりヤシの葉脈ボウキが使いやすくて好きだな」
 フローリングの場合は棕櫚(しゅろ)ボウキを使うのがワックス効果もあり最適だ。ただ、いかんせん値段が高い。外用の葉脈ボウキは、まだ手頃である。

「ホントダ! こっちのほうが固めで掃きやすいネ!」
 メシヤに葉脈ボウキを渡されたエリが、軽快なホウキさばきを見せる。

「棕櫚のホウキが僕も欲しいんだけど、超高級品だからね。職人さんもほんとに少ないんだ」
 棕櫚もヤシの木から取れる繊維で作られる。

「この葉脈ボウキ、扱いやすいしあたしも気に入ったわ」
 ただ、この葉脈ボウキが売られている店は、限られている。

「小さいサイズのものは、車内の清掃にも良さそうですわ」
 葉脈の荒神箒(こうじんぼうき)を手にしたレマが、掃く仕草をする。

「確かにこれは用途が広そうだ。あんまりバッテリーを使う道具は増やしたくないんだよな」
 塁上の掃除人は、身の回りもコンパクトに片付いている。
掃除をするために工具を増やしすぎて、散らかっているようではいけない。

「もう捨てるはずだった素材をこうやって有効活用できてるんだから、なんだか得した気分になるね」





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