第205話 空のキャンバス

文字数 683文字

「高速道路がどんどん繋がっていくわね」
 Amazonがすぐ届くのも、こうした交通インフラの賜物である。

「うん。でも日本の高度成長期に造られたトンネルや橋脚もメンテしないとね。けっこうボロボロだよ」
 これは切実で緊迫な課題である。

「造るのをやりたがる人間は多いが、やりっぱなしではな。その後の面倒も見てこそ、だ」
 建設業界最大手のせがれと(いえど)も、率先してハンマーとインパクトを扱うイエス。

「このあいだメシヤの提案で小物入れに色を塗ったけど、コンクリートでもやるといいわよね」
 いっぱしのカラーコーディネーターである。

「グッドアイデアだね!」
 メシヤは同じ年代の子供がぬりえをしていたとき、すでに身の回りのモノにペイントをほどこしていた。

「ああ。それは名案だな。ただ粗雑なやり方をしてしまうと、クラックが進行してしまう。鉄骨のさび止めを施して、クラックも埋めて下処理すればOKだ。洗浄も忘れずにな」
 幼少時のイエスのおもちゃは、余った建築資材だった。

「街中でもさ、コンクリートに苔が生えたり割れたりして、古ぼけてるのが多いのよね。ペイントしたら、街が明るくなりそうだわ」
 補強にもなるし、一石二鳥だろう。

「マリア、犬小屋のペイントもお手の物だったね」
 聖ヨハネ北伊勢教会に、エルというクーバース犬がいる。立派すぎて小屋と呼ぶような代物ではないが。

「つなぎ服もサマになってたな」
 若手を育成するような親方目線である。

「そうそう、エルも喜んでたわ!」
 照れるお転婆娘。
金髪を後ろで結い、白いつなぎに赤いインナーという出で立ちであった。なんぴとたりとも、マリアの前は走らせない。













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