第199話 ポケットの中の宇宙

文字数 861文字

「メシヤの学ランね」
 北伊勢高校の制服は黒一色ではなく、あるていどカスタマイズされたものを選べる。

「この暑さですから、こちらでお脱ぎになられたのですね」
 助走区間も無く、暑さが到来した。

「うわっ、重た!」
 マリアの持ち上げた腕が急降下し、バランスを崩した。

「ごめんごめん、ここに置いてったんだった」
 服の主が戻ってきた。

「あんた、亀仙流にでもなったの?」
 悟空の最強への道も、重い甲羅を背負うところから始まった。

「メシヤの学ランハ、ポケットがたくさん付いてるからネ!」
 立派な改造制服である。

「ポケットのたくさんあるものですと、フィッシィングベストっぽくなりがちですが、メシヤさまのは隠しポケットが多いタイプですね」
 レマも仕事柄、このあたりは詳しい。

「なにをそんなに仕込んでるのよ。勉強と関係ないものばっかりでしょ?」
 筆記用具・小道具・遊び道具・携帯食。海に行くときの渚にまつわる, etc.

「出掛けた先でさ、あれが無い・これが無いって結構ストレスなんだよ」
 メシヤはすぐストレスを吐き出す健康法を、知らない内に実践している。

「女物の服ってポケットが少ないんだよネ。だからバッグを持つのかなって想像できるけド」
 エリの服にも、メシヤに負けず劣らず道具が仕込まれている。

「あ~、それは思うわね! レディースにももっとポケットを付けて欲しいわ」
 活発なマリアは、バッグを持って手が塞がるのを嫌う。

「これもイエスの影響なんだけどさ。ポケットが有る・無しで断然違うし、ちょっとした作業が助かるんだよ」
 カーゴパンツというものもあるが、もっとスタイリッシュで機能的にできないかとメシヤは思案している。

「わたしたちの手が止まっている時に、メシヤさまが道具を貸してくださる状況がとても多いですわ」
 ドラえもんより四次元ポケットが欲しいという人には、いつまでたってもドラえもんはやって来ないだろう。

「ビスケットまで出て来た! こんなのむき出しで入れるんじゃないわよ!」
 もしも、生まれ変わっても、メシヤとマリアは、また巡り逢うだろう。







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