第3話 子ども達の勉強部屋
文字数 1,737文字
翌日、クリスが夫人のロザリーを伴って自分の娘アリスを連れて勉強部屋へ来ていた。
アリスは、両親譲りの金髪で、父親のクリスによく似た顔立ちの美人だ。
クリスから、今日から一緒に勉強させてもらうと説明があり本人が挨拶をしている。
「アリス・ルフェーヴルと申します。よろしくお願い致します」
アリスは私たちを前にかなり緊張していた。
アリスが名乗ったファミリーネームは、現国王の第二王子クリスが11年前、夫人のロザリーとの婚姻を機に臣下に下った時に領地の名前を取り、つけたものだ。
クリス・ルフェーヴル公爵。
アリスにとっては、ギルバートたちは、いとことはいえ、全員が自分より身分が上だ。
それに、アリスはただ勉強に来るだけじゃない。
幼くして異国にギルバートの婚約者として来なければならなかった私のご学友として、相談にも乗らないといけない。
八歳の子にはちょっと荷が重い……かも。
まぁ、私がフォローすれば良いか。
そう思っていると、スッとギルバートが動いた。
「アリスは、いくつになったんだっけ?」
「八歳になりました」
にこやかに話しているギルバートに対して、アリスはぎこちなく答えている。
「ああ。メアリーと同じ歳だね。メアリー、良かったね。同じ歳のお友達が出来て」
気遣ってくれているんだ。さすが、王太子の子ども。
話を振ってくれたので、私もアリスの前まで移動して、挨拶をする。
「よろしくお願いいたします、アリス様。わたくしの事は、気軽にメアリーとお呼びくださいませ」
私は、なるべく緊張させない様に優しい笑顔を作ったつもりだったのだが。
「こ……こちらこそ、よろしくお願いいたします。わたくしの事もアリスとお呼びください」
アリスが、ガチガチのぎこちない所作で挨拶をした。
ダメだ。緊張しすぎて泣きそうになっている。
「アリス。ここでは身分に関係なく気楽に過ごすようにしてくれ。不敬なんて誰も言わないから……でないと」
ギルバートが、アリスにそう言うか言わないかの内に、勉強部屋は賑やかになった。
「きゃ~! ロザリー、来てたの? 言ってくれたら、もっと早くに公務を終わらせたのに」
そう言って、キャロルがロザリーに抱きついた。ロザリーも抱きつかれながら愚痴を言ってる。
「久しぶり、キャロル。だってクリスったら、『事前に言うと、キャロルが公務をサボる』なんて言うのよ」
「いや、サボるだろう。確実に」
クリスが二人の様子にうんざりしたように言った。
キャロルは、そんなクリスを無視してアリスの方を見た。
「あら~。ちょっと見ないうちに美人さんになったわねぇ。アリス」
「お久しぶりでございます。王太子妃殿下」
アリスは、さらにかしこまって挨拶を……している途中で抱きしめられた。
「キャロルで良いわよ。おばさんなんて言ったら怒るけど……。可愛いわよねぇ。女の子は素直に抱きしめさせてくれるし」
なんだかアリスが呆然として、抱きしめられている。
気持ちは分かる。私も最初は何が起こったのか分からなかった。
抱きしめられているアリスを見ていると今度は私の方にやってきた。
素直に両手を広げて、抱き合う感じになる。
「メアリーも、元気? 困った事があったら、私にいつでも言ってね」
毎日、会うたびに言われている。
そして、次々と自分の子どもたちを抱きしめているけど、王太子の第二王子、五歳のアンリまでは素直に抱きしめられたのだけど……。
「いや……。まずいでしょう、さすがに。母上、やめましょう。というか、やめてください」
ギルバートが必死で抵抗している。
それでもあきらめず抱きしめようとしているキャロルを一生懸命押し返していた。
やれやれ……。
「お義母 さま。わたくしをもう一度抱っこしてくださいませ」
私は首をかしげ、もう一度両手を広げてキャロルを待つ。
「子どもらしく、抱っこって言ってくれて良いのに」
注文が多いな。
でも、ニッコリ笑って言いなおした。
「かあさま。抱っこ」
キャロルが、もうたまんないという顔で抱っこして来る。
キャロルの抱っこは、悪くない。
私の子どもの部分を、暖かくしてくれるから。
まぁね。少し離れたところで見ているクリスの怪訝そうな視線には気付いていたのだけど。
アリスは、両親譲りの金髪で、父親のクリスによく似た顔立ちの美人だ。
クリスから、今日から一緒に勉強させてもらうと説明があり本人が挨拶をしている。
「アリス・ルフェーヴルと申します。よろしくお願い致します」
アリスは私たちを前にかなり緊張していた。
アリスが名乗ったファミリーネームは、現国王の第二王子クリスが11年前、夫人のロザリーとの婚姻を機に臣下に下った時に領地の名前を取り、つけたものだ。
クリス・ルフェーヴル公爵。
アリスにとっては、ギルバートたちは、いとことはいえ、全員が自分より身分が上だ。
それに、アリスはただ勉強に来るだけじゃない。
幼くして異国にギルバートの婚約者として来なければならなかった私のご学友として、相談にも乗らないといけない。
八歳の子にはちょっと荷が重い……かも。
まぁ、私がフォローすれば良いか。
そう思っていると、スッとギルバートが動いた。
「アリスは、いくつになったんだっけ?」
「八歳になりました」
にこやかに話しているギルバートに対して、アリスはぎこちなく答えている。
「ああ。メアリーと同じ歳だね。メアリー、良かったね。同じ歳のお友達が出来て」
気遣ってくれているんだ。さすが、王太子の子ども。
話を振ってくれたので、私もアリスの前まで移動して、挨拶をする。
「よろしくお願いいたします、アリス様。わたくしの事は、気軽にメアリーとお呼びくださいませ」
私は、なるべく緊張させない様に優しい笑顔を作ったつもりだったのだが。
「こ……こちらこそ、よろしくお願いいたします。わたくしの事もアリスとお呼びください」
アリスが、ガチガチのぎこちない所作で挨拶をした。
ダメだ。緊張しすぎて泣きそうになっている。
「アリス。ここでは身分に関係なく気楽に過ごすようにしてくれ。不敬なんて誰も言わないから……でないと」
ギルバートが、アリスにそう言うか言わないかの内に、勉強部屋は賑やかになった。
「きゃ~! ロザリー、来てたの? 言ってくれたら、もっと早くに公務を終わらせたのに」
そう言って、キャロルがロザリーに抱きついた。ロザリーも抱きつかれながら愚痴を言ってる。
「久しぶり、キャロル。だってクリスったら、『事前に言うと、キャロルが公務をサボる』なんて言うのよ」
「いや、サボるだろう。確実に」
クリスが二人の様子にうんざりしたように言った。
キャロルは、そんなクリスを無視してアリスの方を見た。
「あら~。ちょっと見ないうちに美人さんになったわねぇ。アリス」
「お久しぶりでございます。王太子妃殿下」
アリスは、さらにかしこまって挨拶を……している途中で抱きしめられた。
「キャロルで良いわよ。おばさんなんて言ったら怒るけど……。可愛いわよねぇ。女の子は素直に抱きしめさせてくれるし」
なんだかアリスが呆然として、抱きしめられている。
気持ちは分かる。私も最初は何が起こったのか分からなかった。
抱きしめられているアリスを見ていると今度は私の方にやってきた。
素直に両手を広げて、抱き合う感じになる。
「メアリーも、元気? 困った事があったら、私にいつでも言ってね」
毎日、会うたびに言われている。
そして、次々と自分の子どもたちを抱きしめているけど、王太子の第二王子、五歳のアンリまでは素直に抱きしめられたのだけど……。
「いや……。まずいでしょう、さすがに。母上、やめましょう。というか、やめてください」
ギルバートが必死で抵抗している。
それでもあきらめず抱きしめようとしているキャロルを一生懸命押し返していた。
やれやれ……。
「お
私は首をかしげ、もう一度両手を広げてキャロルを待つ。
「子どもらしく、抱っこって言ってくれて良いのに」
注文が多いな。
でも、ニッコリ笑って言いなおした。
「かあさま。抱っこ」
キャロルが、もうたまんないという顔で抱っこして来る。
キャロルの抱っこは、悪くない。
私の子どもの部分を、暖かくしてくれるから。
まぁね。少し離れたところで見ているクリスの怪訝そうな視線には気付いていたのだけど。