第49話 お見舞いに来たリオン
文字数 1,759文字
私は、クラレンスの部屋の中の小部屋にベッドを入れてもらい、そこで体調が戻るまで寝かせてもらう事になった。
小部屋と言っても、日本だったら宴会が出来そうなくらい広いけど。
クリスが、私の体調管理をするのに、クラレンスの部屋が都合が良いと言ったから。
私もそう思う。
これが私の屋敷だったら、第二王子であるクリスを選んだと思われてしまう。
今日は、クラレンスからの呼び出しで、私の兄リオンもお見舞いにやって来ていた。
「まさか、ここに妹のお見舞いに来ることになるとは……」
少し、緊張した感じで言った。
リオンも先ほど、私のお腹を見て、とても動かせる状態じゃないと判断したんだろう。
中身はともかく、見た目はまだひどい状態で残しているから。
「それで、犯人の取り調べは進んでいるのか?」
クラレンスがリオンに訊いている。
「拍子抜けするくらい、順調です。もう、誰の子飼いかもわかりました。しかし……」
会話の途中で、コンコンとノックする音が聞こえる。
「ご歓談中のところ、失礼致します。クリス殿下がお見えになっておりますが」
侍女がどうしましょうかと言う感じでお伺いを立ててくる。
「ああ。通してくれて構わないよ」
クラレンスが答えると、クリスが侍女に連れられやってきた。
「クラレンス王太子殿下。入室の許可をありがとうございます」
クリスが部屋の入口の所で礼を執っていた。
次期宰相のリオンがいるから、礼儀通りに入ってきたのだろうか。
「白々しいマネはやめてくれ。キャロルを診に来たんだろ?」
クラレンスが、うんざりしたように言っている横で、リオンは礼を執っていた。
リオンが挨拶の口上を述べだす前に、クリスはそれを手で制した。
「僕の事は、気にしないで仕事の話をしてて」
クリスは、私の方を向いて言った。
「キャロル。口を開けて」
何だろうと思って口を開けると、口の中に何か放り込まれた。
勢い余って飲み込んでしまったけど、これは。
「クリス殿下。これ飲んだら胃が痛くなるから嫌なんですけど……」
病院でも数値が悪くなる度飲まされていた薬。鉄剤。
「僕がそんな副作用が出る薬を飲ませるわけないだろ? 血が足りてないんだから、大人しく飲むの」
そういって、クリスは瓶に入った残りの薬を見せた。
「ちゃんと、一日三回飲むんだよ」
うえ~、普通にイヤなんですけど。
「何を飲ませたんだ?」
クラレンスとリオンが興味津々で薬を見ている。
この世界に、鉄剤は……無いのかもしれない。
「ああ。丁度良いや。クラレンスが管理して。一日三回。血が増える薬だよ。血が増えないといつまでも体がだるいからね」
クリスは軽い感じで言っているけど、自分で調合したのかな?
「クリスが管理して飲ませれば良いのではないのか? だいたいここで看病しなくても」
「クラレンス」
クラレンスが言っていることに、かぶせるように、クリスが制止の声を上げた。
なんだか、殺気だっている。クリスの気に触れて、体が辛くなってきた。
リオンが、クリスと私の間にさりげなく入ってくれたので、少しマシになった気がした。
クラレンスは、気まずそうに顔を背けてるけど……。
迷惑だったんだ。
そうだよね。部屋の中の一室をいつまでも占領してるんだもん。
「クリスと居る方が、安心できるだろ? キャロルも」
聞こえるかどうかの小さな声で、ボソッとクラレンスが言ったのが聞こえた。
「あのね。キャロルが僕の部屋に行くのを泣いて嫌がったから、ここに連れて来てるんだ。君が、キャロルの事を迷惑だと思うのなら、今すぐにでも、僕の部屋へ移動させるけど?」
クリスが、私の心を読んだかのようなセリフを言っている。多分、読んだんだろうけど。
クラレンスが驚いた顔をしていた。
「あ、いや。迷惑だなんて思ってない。キャロルが、良いならここにいてくれ」
クラレンスが、私に向かって言った。
クラレンスにも分かったのだろう、クリスが私の気持ちを代弁してくれてるって。
「キャロル。ごめんね」
クリスが謝ってきた。さっきの事かな。体に障るようなことをして悪かったって。
なんだか、本当に印象が違う。
雰囲気は、賢者の石のクリスなのに……。もとは、同じなのかな。
それとも、賢者と何百年も離れている間に、別のものになってしまったのかな。
小部屋と言っても、日本だったら宴会が出来そうなくらい広いけど。
クリスが、私の体調管理をするのに、クラレンスの部屋が都合が良いと言ったから。
私もそう思う。
これが私の屋敷だったら、第二王子であるクリスを選んだと思われてしまう。
今日は、クラレンスからの呼び出しで、私の兄リオンもお見舞いにやって来ていた。
「まさか、ここに妹のお見舞いに来ることになるとは……」
少し、緊張した感じで言った。
リオンも先ほど、私のお腹を見て、とても動かせる状態じゃないと判断したんだろう。
中身はともかく、見た目はまだひどい状態で残しているから。
「それで、犯人の取り調べは進んでいるのか?」
クラレンスがリオンに訊いている。
「拍子抜けするくらい、順調です。もう、誰の子飼いかもわかりました。しかし……」
会話の途中で、コンコンとノックする音が聞こえる。
「ご歓談中のところ、失礼致します。クリス殿下がお見えになっておりますが」
侍女がどうしましょうかと言う感じでお伺いを立ててくる。
「ああ。通してくれて構わないよ」
クラレンスが答えると、クリスが侍女に連れられやってきた。
「クラレンス王太子殿下。入室の許可をありがとうございます」
クリスが部屋の入口の所で礼を執っていた。
次期宰相のリオンがいるから、礼儀通りに入ってきたのだろうか。
「白々しいマネはやめてくれ。キャロルを診に来たんだろ?」
クラレンスが、うんざりしたように言っている横で、リオンは礼を執っていた。
リオンが挨拶の口上を述べだす前に、クリスはそれを手で制した。
「僕の事は、気にしないで仕事の話をしてて」
クリスは、私の方を向いて言った。
「キャロル。口を開けて」
何だろうと思って口を開けると、口の中に何か放り込まれた。
勢い余って飲み込んでしまったけど、これは。
「クリス殿下。これ飲んだら胃が痛くなるから嫌なんですけど……」
病院でも数値が悪くなる度飲まされていた薬。鉄剤。
「僕がそんな副作用が出る薬を飲ませるわけないだろ? 血が足りてないんだから、大人しく飲むの」
そういって、クリスは瓶に入った残りの薬を見せた。
「ちゃんと、一日三回飲むんだよ」
うえ~、普通にイヤなんですけど。
「何を飲ませたんだ?」
クラレンスとリオンが興味津々で薬を見ている。
この世界に、鉄剤は……無いのかもしれない。
「ああ。丁度良いや。クラレンスが管理して。一日三回。血が増える薬だよ。血が増えないといつまでも体がだるいからね」
クリスは軽い感じで言っているけど、自分で調合したのかな?
「クリスが管理して飲ませれば良いのではないのか? だいたいここで看病しなくても」
「クラレンス」
クラレンスが言っていることに、かぶせるように、クリスが制止の声を上げた。
なんだか、殺気だっている。クリスの気に触れて、体が辛くなってきた。
リオンが、クリスと私の間にさりげなく入ってくれたので、少しマシになった気がした。
クラレンスは、気まずそうに顔を背けてるけど……。
迷惑だったんだ。
そうだよね。部屋の中の一室をいつまでも占領してるんだもん。
「クリスと居る方が、安心できるだろ? キャロルも」
聞こえるかどうかの小さな声で、ボソッとクラレンスが言ったのが聞こえた。
「あのね。キャロルが僕の部屋に行くのを泣いて嫌がったから、ここに連れて来てるんだ。君が、キャロルの事を迷惑だと思うのなら、今すぐにでも、僕の部屋へ移動させるけど?」
クリスが、私の心を読んだかのようなセリフを言っている。多分、読んだんだろうけど。
クラレンスが驚いた顔をしていた。
「あ、いや。迷惑だなんて思ってない。キャロルが、良いならここにいてくれ」
クラレンスが、私に向かって言った。
クラレンスにも分かったのだろう、クリスが私の気持ちを代弁してくれてるって。
「キャロル。ごめんね」
クリスが謝ってきた。さっきの事かな。体に障るようなことをして悪かったって。
なんだか、本当に印象が違う。
雰囲気は、賢者の石のクリスなのに……。もとは、同じなのかな。
それとも、賢者と何百年も離れている間に、別のものになってしまったのかな。