第1話 ピクトリアン王国のメアリー姫
文字数 1,304文字
ピクトリアン王国。
その国は、常に結界の中にあり、自然を味方に付け、その存在は感じさせないまま数千年もの間、移動し続けている。
王宮内、ソーマ・ピクトリアン国王の間。
白く何も無い空間に座っている国王と私は向き合って座っていた。
王宮内の廊下や部屋の中はだいたいこんな感じだ。
王城の敷地内を出れば、普通の街並みが広がっているのだが、全ては結界の中。
貴族制度は無く。王族を名乗れるのは、直系の純血種のみ。
その純血種を維持する為に、国王の妃は全て、姉妹である。
主な仕事は、結界の維持とその移動だった。
「ソーマ・ピクトリアン。私はハーボルト王国に行こうと思う」
傍 から見れば、国王と幼い王女が向き合っているように見えるだろう。
と言うか、その通りなのだが。
私こと、メアリー・ピクトリアンは八年前にソーマ国王の一番末の妹妃から産まれた。
漆黒の絹のような髪を肩の所で、切りそろえ。陶器のような白い肌。
自分で鏡を見る限りでは、お人形のような容姿だ。
「そなたは、ずっとここにいるものだと思っていたが」
普通ならそうなる予定だった。
私たちの世代で異国に出された王女はシャルロット。
国王一代につき、異国に嫁がせる王女は原則一人と決まっている。
それに、惨殺されてしまったとはいえ、今世代はリオンヌまでも、異国に嫁がされていた。
「彼 の国には賢者が戻って来ているという」
この国に留まっても仕方が無い。
何千年も前の国王の意識と能力を持ったのだ。
自分の仕事をしなければならない。
「今、ハーボルトは制度の改革を行っておるそうだ。賢者の石が消え。賢者の石 が選んだ王妃を絶対とする制度を失くそうとしている。王妃の座に……他国の。それも、ピクトリアン王国からの純血種の姫が座るのなら、誰も文句は言うまい?」
ピクトリアンの純血種は、各国とも喉から手が出るほど欲しい存在らしい。
それはそうだと思う。
その純血種は、異国の人間の何倍も生き。その能力は目を見張るものがある。
そして寿命以外の能力は、その子孫にまで恩恵を与えるというのだから。
「それに我らとて、いつまでも結界の中で一族や国民を過ごさせるわけにもいくまい? 結界のほころびを利用して、出て行ってしまう者もいるからなのう。リオンヌを追って出ていったクリストフが良い例じゃないか」
ソーマ国王が目の前でため息を吐いている。
「そなたは、私の後継者に据えようと思っていたのだがな」
「こちらも制度を変えなければ、女の私が国王にはなれないからね。その為には、あちらの賢者とも話を付ける必要がある。まぁ、向こうの王妃になると言っても寿命はこちらの方がはるかに長いんだ。あちらの制度改革に付き合った後でも充分だろう?」
後百年以上も余裕で生きそうなソーマ国王に言う。
「ハーボルト王国へ行く段取りを付けてはくれまいか。ソーマ国王」
「承知した。我が妹にして我が妃の第5子メアリー王女」
長年の因縁がある国だけど、この縁談はハーボルト王国も受けざるを得ないだろう。
そして、ハーボルト王国の国王の下に、一通の手紙が舞い込む。
ピクトリアン王国からの、縁談の打診の手紙が……。
その国は、常に結界の中にあり、自然を味方に付け、その存在は感じさせないまま数千年もの間、移動し続けている。
王宮内、ソーマ・ピクトリアン国王の間。
白く何も無い空間に座っている国王と私は向き合って座っていた。
王宮内の廊下や部屋の中はだいたいこんな感じだ。
王城の敷地内を出れば、普通の街並みが広がっているのだが、全ては結界の中。
貴族制度は無く。王族を名乗れるのは、直系の純血種のみ。
その純血種を維持する為に、国王の妃は全て、姉妹である。
主な仕事は、結界の維持とその移動だった。
「ソーマ・ピクトリアン。私はハーボルト王国に行こうと思う」
と言うか、その通りなのだが。
私こと、メアリー・ピクトリアンは八年前にソーマ国王の一番末の妹妃から産まれた。
漆黒の絹のような髪を肩の所で、切りそろえ。陶器のような白い肌。
自分で鏡を見る限りでは、お人形のような容姿だ。
「そなたは、ずっとここにいるものだと思っていたが」
普通ならそうなる予定だった。
私たちの世代で異国に出された王女はシャルロット。
国王一代につき、異国に嫁がせる王女は原則一人と決まっている。
それに、惨殺されてしまったとはいえ、今世代はリオンヌまでも、異国に嫁がされていた。
「
この国に留まっても仕方が無い。
何千年も前の国王の意識と能力を持ったのだ。
自分の仕事をしなければならない。
「今、ハーボルトは制度の改革を行っておるそうだ。賢者の石が消え。
ピクトリアンの純血種は、各国とも喉から手が出るほど欲しい存在らしい。
それはそうだと思う。
その純血種は、異国の人間の何倍も生き。その能力は目を見張るものがある。
そして寿命以外の能力は、その子孫にまで恩恵を与えるというのだから。
「それに我らとて、いつまでも結界の中で一族や国民を過ごさせるわけにもいくまい? 結界のほころびを利用して、出て行ってしまう者もいるからなのう。リオンヌを追って出ていったクリストフが良い例じゃないか」
ソーマ国王が目の前でため息を吐いている。
「そなたは、私の後継者に据えようと思っていたのだがな」
「こちらも制度を変えなければ、女の私が国王にはなれないからね。その為には、あちらの賢者とも話を付ける必要がある。まぁ、向こうの王妃になると言っても寿命はこちらの方がはるかに長いんだ。あちらの制度改革に付き合った後でも充分だろう?」
後百年以上も余裕で生きそうなソーマ国王に言う。
「ハーボルト王国へ行く段取りを付けてはくれまいか。ソーマ国王」
「承知した。我が妹にして我が妃の第5子メアリー王女」
長年の因縁がある国だけど、この縁談はハーボルト王国も受けざるを得ないだろう。
そして、ハーボルト王国の国王の下に、一通の手紙が舞い込む。
ピクトリアン王国からの、縁談の打診の手紙が……。