第3話 ロザリー姫の不安とクリス殿下の優しさ
文字数 1,804文字
昼食の後、日中は公務があるらしく、キャロル様もクラレンス様も早々に食事の間を退出していった。
クリス様も用事を済ますために、王宮の外に出かけて行ってしまった。
そういう事で私は、いきなり自分の部屋に取り残される事となった。
まぁ、何着かドレスを作るための採寸をされたり、ドレスに合わせる装飾品を選んだりは、させられたのだけれど。
夕食は、食事の間を使わないらしく、私は、一人お部屋で夕食を取った。
当然と言えば当然なのよね。夜会があったり仕事があったりで、夕飯時に全員集まるなんて無理だし。
そもそも私は、食事を誰かと共にしたことが無い。
「ロザリー様。クリス様がお帰りになる前に湯あみを致しましょう」
侍女からそう言われて、湯あみが用意してある部屋に連れて行かれた。
バラが浮かんでいるバスタブにローズの香油を入れられる。
「ロザリー様でしたら、桃の香りも良いかと思いますが……」
そう言いながら、侍女たちは丹念に私の体を洗ってくれているけど。
え? ちょっと待って。
「あの……えっと。やっぱり、同じ部屋になるってそういう」
不安そうな顔になっていたのかな? 侍女たちがあら~って感じの反応をしていた。
「大丈夫ですわ。ああいうのは、殿方に任せておけば良いのですよ」
ああいうの……。
よく分からないけど、楽しそうな侍女たちによって、湯あみの後、オイルマッサージまで受けて、部屋へ送り返された。
その後しばらくして、クリス様が疲れたような感じで帰ってきた。
手には書類らしきものが入った封筒を持っている。
「お帰りなさいませ。クリス様」
私は椅子から立ち上がり、挨拶をした。
なんだか変な感じ。夫婦になっても、ずっと同じ部屋にいたりしないと思うもの。
「ああ。ただいま」
クリス様はそう言って、侍女にお茶を机に持ってくるように頼んでる。
クリス様は机で紅茶を飲みながら、封筒から出した書類を確認し始めた。
どうしようと思ったけど、私は取り敢えずソファーの方に移る。
私が見ても良い書類かもわからないし、長くなったら眠くなって椅子から転げ落ちる可能性もある。みっともないけど。
しばらくボーっと待っていたらクリス様から、声がかかった。
「ロザリー。もう遅いから、寝室に行って先に寝なさい」
私の方を見もしないクリス様から言われた。ずっと、書類の検討をしているみたい。
「え? でも、あの」
先に寝て良いもんなの?
そう思っていると、今度は私の方を見て
「子どもが夜更かしをするものではないよ。先にお休み」
穏やかな口調でそう言って、また書類に戻った。
それでも、しばらくはソファーに座っていたのだけど、クリス様は私の存在など無いかのように書類を比較検討し始める。
本当に、私には興味が無いんだ。
クリス様に言われた通り、私は寝室に入り一人ベッドに入った。
侍女たちの言う通り、夜伽があっても困るけど。
あそこまで、無関心を貫かれると何だかとても悲しい。
分かっていたのに、どんな扱いでも仕方が無いって。
分かっているのに、何で涙なんか……。
良いよね。まだ、仕事しているから来ないよね。
っていうか、ここで一緒に寝るのかなぁ。
遊んでるっていうから、恋人の所に行ってしまったりして……。
ふっ……えっ。ひっく。
私は、嗚咽が聞こえない様に口を押えながら泣いていた。
しばらくすると私が奥の方を向いて泣いている横にするりとクリス様が入ってきた。
ダメだわ。涙が止まらない。
こんなに早く来るなんて思ってもみなかったから。
私の体にそっと触れて、クリス様の方に向けられる。
「ク……リス……さま」
「ああ。何も言わなくて良い。おいで」
そのまま深く抱き込まれた。
私は身を固くする。侍女たちは『殿方に任せれば良い』と言っていたけど。怖い。
そう思っていると、前髪を少し手で触られそのまま額に口付けをされる。
「好きなだけ泣いて、疲れたらそのままお休み。ロザリー」
そう言ったかと思うと、私の背中にまわした手でポンポンとしてくれる。
ゆっくり、子どもをあやすようなリズムで……。
なんだか、暖かい。
悲しい気持ちで泣いていたはずなのに、すごく優しくて安心できる。
クリス様は、私に関心が無かったのではないの?
背中のリズムは心地よく、ベッドもぬくぬくしていて。
私はいつの間にか、クリス様の腕の中で安心して眠ってしまっていた。
クリス様も用事を済ますために、王宮の外に出かけて行ってしまった。
そういう事で私は、いきなり自分の部屋に取り残される事となった。
まぁ、何着かドレスを作るための採寸をされたり、ドレスに合わせる装飾品を選んだりは、させられたのだけれど。
夕食は、食事の間を使わないらしく、私は、一人お部屋で夕食を取った。
当然と言えば当然なのよね。夜会があったり仕事があったりで、夕飯時に全員集まるなんて無理だし。
そもそも私は、食事を誰かと共にしたことが無い。
「ロザリー様。クリス様がお帰りになる前に湯あみを致しましょう」
侍女からそう言われて、湯あみが用意してある部屋に連れて行かれた。
バラが浮かんでいるバスタブにローズの香油を入れられる。
「ロザリー様でしたら、桃の香りも良いかと思いますが……」
そう言いながら、侍女たちは丹念に私の体を洗ってくれているけど。
え? ちょっと待って。
「あの……えっと。やっぱり、同じ部屋になるってそういう」
不安そうな顔になっていたのかな? 侍女たちがあら~って感じの反応をしていた。
「大丈夫ですわ。ああいうのは、殿方に任せておけば良いのですよ」
ああいうの……。
よく分からないけど、楽しそうな侍女たちによって、湯あみの後、オイルマッサージまで受けて、部屋へ送り返された。
その後しばらくして、クリス様が疲れたような感じで帰ってきた。
手には書類らしきものが入った封筒を持っている。
「お帰りなさいませ。クリス様」
私は椅子から立ち上がり、挨拶をした。
なんだか変な感じ。夫婦になっても、ずっと同じ部屋にいたりしないと思うもの。
「ああ。ただいま」
クリス様はそう言って、侍女にお茶を机に持ってくるように頼んでる。
クリス様は机で紅茶を飲みながら、封筒から出した書類を確認し始めた。
どうしようと思ったけど、私は取り敢えずソファーの方に移る。
私が見ても良い書類かもわからないし、長くなったら眠くなって椅子から転げ落ちる可能性もある。みっともないけど。
しばらくボーっと待っていたらクリス様から、声がかかった。
「ロザリー。もう遅いから、寝室に行って先に寝なさい」
私の方を見もしないクリス様から言われた。ずっと、書類の検討をしているみたい。
「え? でも、あの」
先に寝て良いもんなの?
そう思っていると、今度は私の方を見て
「子どもが夜更かしをするものではないよ。先にお休み」
穏やかな口調でそう言って、また書類に戻った。
それでも、しばらくはソファーに座っていたのだけど、クリス様は私の存在など無いかのように書類を比較検討し始める。
本当に、私には興味が無いんだ。
クリス様に言われた通り、私は寝室に入り一人ベッドに入った。
侍女たちの言う通り、夜伽があっても困るけど。
あそこまで、無関心を貫かれると何だかとても悲しい。
分かっていたのに、どんな扱いでも仕方が無いって。
分かっているのに、何で涙なんか……。
良いよね。まだ、仕事しているから来ないよね。
っていうか、ここで一緒に寝るのかなぁ。
遊んでるっていうから、恋人の所に行ってしまったりして……。
ふっ……えっ。ひっく。
私は、嗚咽が聞こえない様に口を押えながら泣いていた。
しばらくすると私が奥の方を向いて泣いている横にするりとクリス様が入ってきた。
ダメだわ。涙が止まらない。
こんなに早く来るなんて思ってもみなかったから。
私の体にそっと触れて、クリス様の方に向けられる。
「ク……リス……さま」
「ああ。何も言わなくて良い。おいで」
そのまま深く抱き込まれた。
私は身を固くする。侍女たちは『殿方に任せれば良い』と言っていたけど。怖い。
そう思っていると、前髪を少し手で触られそのまま額に口付けをされる。
「好きなだけ泣いて、疲れたらそのままお休み。ロザリー」
そう言ったかと思うと、私の背中にまわした手でポンポンとしてくれる。
ゆっくり、子どもをあやすようなリズムで……。
なんだか、暖かい。
悲しい気持ちで泣いていたはずなのに、すごく優しくて安心できる。
クリス様は、私に関心が無かったのではないの?
背中のリズムは心地よく、ベッドもぬくぬくしていて。
私はいつの間にか、クリス様の腕の中で安心して眠ってしまっていた。