第48話 クリス王子殿下の怒りとお礼(クリス側)
文字数 1,410文字
思っていた以上に、キャロルの体の状態がひどい。
腫れていると思っていたお腹は、内出血でパンパンになっていたし、臓器の破損もあったのが確認出来た。
僕に治癒能力が備わっていて良かった。でなければ、今のこの世界の医療技術では、キャロルは死んでたかもしれない。
なんだか、無性に腹が立つな。
そうやって沸々としていると、クラレンスから声が掛かった。
「クリス。賢者様はどうした?」
人がイラついている時に……。
「弾き出したよ、この体から。その後は気配を感じ取れなくなったから、知らないけどね」
ったく、賢者の石の能力に触れて君まで見分けがつくようになっているんだな。
なんだか、ため息が出てしまう。
「今回の犯人にはねぇ。少し感謝してるんだよ。だって、あいつがキャロルを殴らなかったら、賢者に隙が出来無かったからねぇ」
そう言って、僕はクラレンスに笑って見せた。
いや、本当にそこだけは感謝だよ。
「クリス……君は」
せっかく笑ってやったのに、クラレンスの警戒が強くなる。だからって、僕に対して何が出来るわけでもないだろうに。
まぁ、君のそういうところには好感が持てるよ。
「とりあえず、今は問題解決が先だろう? 首謀者捜し、僕が担当するからさ。キャロルに付いててやってくれない?」
「ああ」
クラレンスがキャロルの側にいる事を了承したので、僕は寝室から出て行った。
王宮の別棟、地下に牢屋がある。
ここは、貴族でもなんでもない人間から、下位貴族で罪を犯した人間が入れられるところだ。
そこに、キャロルを殴って、逃亡しようとした男が入れられていた。
「良かった。意識が戻ったんだね」
鉄格子の牢屋の中で、ぐったりしていた男が目を覚ましたようだった。
……って、僕が起こしたのだけどね。
にこやかにしてあげているのに、随分と怯えられてしまっているかな?
「とりあえず、お礼を言うね。君があの女性を殴ってくれたおかげで、邪魔者をこの体から追い出すことができた。ありがとう」
にっこり笑って、僕はお礼を言った。さて、これで筋は通した。
「そうそう、君に指示を与えた人にも、是非お礼を言いたいから、教えてくれるかな」
目の前の男にお願いをしたら、固まったまま、それでも口を動かそうとしている。
「そ……れは、出来ない」
「そう? じゃ、取りあえず。君が女性に与えた痛み返すね」
キャロルを襲っただろう痛みと、内臓に与えた打撃を僕は、そのまま男に返した。
「うぐっ」
男はそのまま、うずくまって、動けないでいる。
「気を失わせたりはさせないよ。だって、あの女性だって気を失ったりはしなかったもの」
痛みに耐えかねて転がっている男の前で、平然と笑ってみせる。
足りない。こんなものじゃあ、全然足りないね。だけど、今は……。
「それでさぁ。誰が君のご主人なのか教えてくれないかなぁ」
「しらんっ」
男の奥歯がガリッといったのが聞こえた。男の口の中に甘味が広がったようだ。
痛がりながらも、男は一瞬の驚きの表情を見せた。
もう、予想通り過ぎて、いっそ滑稽だ。
つい僕は、クスクスと笑ってしまった。
「毒は、抜いてるから。自害できるなんて思わないでね。君には、訊かなきゃならないこともあるし。なにより」
僕は、うずくまっている男の側にスーッと寄っていく。
「楽に死なせてあげる義理なんて、無いよねぇ」
僕は、ニッコリ笑ってそう言った。
楽しい夜になりそうだと思いながら……。
腫れていると思っていたお腹は、内出血でパンパンになっていたし、臓器の破損もあったのが確認出来た。
僕に治癒能力が備わっていて良かった。でなければ、今のこの世界の医療技術では、キャロルは死んでたかもしれない。
なんだか、無性に腹が立つな。
そうやって沸々としていると、クラレンスから声が掛かった。
「クリス。賢者様はどうした?」
人がイラついている時に……。
「弾き出したよ、この体から。その後は気配を感じ取れなくなったから、知らないけどね」
ったく、賢者の石の能力に触れて君まで見分けがつくようになっているんだな。
なんだか、ため息が出てしまう。
「今回の犯人にはねぇ。少し感謝してるんだよ。だって、あいつがキャロルを殴らなかったら、賢者に隙が出来無かったからねぇ」
そう言って、僕はクラレンスに笑って見せた。
いや、本当にそこだけは感謝だよ。
「クリス……君は」
せっかく笑ってやったのに、クラレンスの警戒が強くなる。だからって、僕に対して何が出来るわけでもないだろうに。
まぁ、君のそういうところには好感が持てるよ。
「とりあえず、今は問題解決が先だろう? 首謀者捜し、僕が担当するからさ。キャロルに付いててやってくれない?」
「ああ」
クラレンスがキャロルの側にいる事を了承したので、僕は寝室から出て行った。
王宮の別棟、地下に牢屋がある。
ここは、貴族でもなんでもない人間から、下位貴族で罪を犯した人間が入れられるところだ。
そこに、キャロルを殴って、逃亡しようとした男が入れられていた。
「良かった。意識が戻ったんだね」
鉄格子の牢屋の中で、ぐったりしていた男が目を覚ましたようだった。
……って、僕が起こしたのだけどね。
にこやかにしてあげているのに、随分と怯えられてしまっているかな?
「とりあえず、お礼を言うね。君があの女性を殴ってくれたおかげで、邪魔者をこの体から追い出すことができた。ありがとう」
にっこり笑って、僕はお礼を言った。さて、これで筋は通した。
「そうそう、君に指示を与えた人にも、是非お礼を言いたいから、教えてくれるかな」
目の前の男にお願いをしたら、固まったまま、それでも口を動かそうとしている。
「そ……れは、出来ない」
「そう? じゃ、取りあえず。君が女性に与えた痛み返すね」
キャロルを襲っただろう痛みと、内臓に与えた打撃を僕は、そのまま男に返した。
「うぐっ」
男はそのまま、うずくまって、動けないでいる。
「気を失わせたりはさせないよ。だって、あの女性だって気を失ったりはしなかったもの」
痛みに耐えかねて転がっている男の前で、平然と笑ってみせる。
足りない。こんなものじゃあ、全然足りないね。だけど、今は……。
「それでさぁ。誰が君のご主人なのか教えてくれないかなぁ」
「しらんっ」
男の奥歯がガリッといったのが聞こえた。男の口の中に甘味が広がったようだ。
痛がりながらも、男は一瞬の驚きの表情を見せた。
もう、予想通り過ぎて、いっそ滑稽だ。
つい僕は、クスクスと笑ってしまった。
「毒は、抜いてるから。自害できるなんて思わないでね。君には、訊かなきゃならないこともあるし。なにより」
僕は、うずくまっている男の側にスーッと寄っていく。
「楽に死なせてあげる義理なんて、無いよねぇ」
僕は、ニッコリ笑ってそう言った。
楽しい夜になりそうだと思いながら……。