第7話 キャロルと由有紀とメアリーと
文字数 1,305文字
「それで? 何が知りたかったの?」
キャロルは、大福を食べ終わってから訊いてきた。
これはもう賢者たちが教えて無いのだろう。
本当にキャロルは他人の結界の中に入る意味を知らない。
「あなたが結界の中に入った時点で、知りたいことは全てわかった」
「そうなの? 便利ねぇ」
本心から感心している。
「結界を張っている側にはね。相手の全てが把握できるから」
「あら、イヤだわ。この前ギルが食べなかったケーキを食べた事も……」
それは、知られてはならない重要機密なのか? 意識的にマズいと思っているようだけど。
「そんな些末的な……。そうじゃ無くて良いの? 何もかもさらけ出している状態だよ。キャロル」
「ん~。今さらかな。賢者様もクリスも、会話の必要が無いくらい心を読んでくるし、便利だけど隠し事も出来ないもの」
「そうじゃ無くて。賢者の想い人……愛し子だろう? ユウキ……いや、エマかな?」
「エマの記憶なんて無いわよ。今は由有紀の記憶とキャロルのスキルがあるだけだもの」
「だろうね。あなたは普通の人間だ。体は賢者の石が創っただけあって頑丈だけど」
そう言うと、少しだけ下を向き、さみしそうな素振りをする。
「そう。だから賢者様はもう私には会わないって言ったの。生まれ変わりでもエマにはなれないから」
キャロルから、切ない気持ちが流れてきた。
本当に何やってんだかあの賢者 は。
まぁ、キャロルには悪いけど、それとこれとは別問題だ。
こちらはこちらで、確かめないといけない事があるからな。
「昔ね。君がエマでいた頃よりもはるか数千年も前の昔。この場所にピクトリアンがあったんだ。そこに国を失って逃げてきた王子と家臣たちがいた。彼らはボロボロで王子には魔力があったようだけど、当時の国王よりは、はるかに弱い彼らを手厚くもてなすことにしたんだ」
いきなり始まった昔話に、きょとんとしているのが分かるよ。キャロル。
「手酷く裏切られたよ。王子は王様には勝てない。だがら、何の魔力も能力も持たない庶民を大量殺りく、し始めた。同時に王宮内の武器庫も食糧庫もすべて破壊してね。ひどいと思わないかい?」
キャロルは、私の話に固まっている。
そうだよね。本心ではひどいと思っているのに、この国の事を考えて何も言えなくなっている。
そして、私の正体に気付いて、当時の私の気持ちを考えてくれている。
悲しい気持ちは、分かるけど。私の深い悲しみが理解できないだろうと思ってくれているんだ。
本当に賢者にはもったいないくらい、良い子だよね。
「あなたは、本当に警戒心が無い。私の事を考えている場合では無いだろうに。賢者が教えてないから知らないのだろうけど。自分より能力の高い相手の結界に入るという事は、いつ殺されても文句は言えないという事なんだよ」
「そうなの? それはマズいわね。これからは気を付けなくちゃ」
いや。今、この状態が危ないと警告したのだけど……。
全く、危機感が無い。
「こ れ か ら は無いよ。キャロル」
私は、キャロルの頬にふれる。
「ねぇ、キャロル。賢者の想い人が傷つけられたら、彼はどんな顔をするのだろうね」
私は、笑いながらキャロルにそう問いかけた。
キャロルは、大福を食べ終わってから訊いてきた。
これはもう賢者たちが教えて無いのだろう。
本当にキャロルは他人の結界の中に入る意味を知らない。
「あなたが結界の中に入った時点で、知りたいことは全てわかった」
「そうなの? 便利ねぇ」
本心から感心している。
「結界を張っている側にはね。相手の全てが把握できるから」
「あら、イヤだわ。この前ギルが食べなかったケーキを食べた事も……」
それは、知られてはならない重要機密なのか? 意識的にマズいと思っているようだけど。
「そんな些末的な……。そうじゃ無くて良いの? 何もかもさらけ出している状態だよ。キャロル」
「ん~。今さらかな。賢者様もクリスも、会話の必要が無いくらい心を読んでくるし、便利だけど隠し事も出来ないもの」
「そうじゃ無くて。賢者の想い人……愛し子だろう? ユウキ……いや、エマかな?」
「エマの記憶なんて無いわよ。今は由有紀の記憶とキャロルのスキルがあるだけだもの」
「だろうね。あなたは普通の人間だ。体は賢者の石が創っただけあって頑丈だけど」
そう言うと、少しだけ下を向き、さみしそうな素振りをする。
「そう。だから賢者様はもう私には会わないって言ったの。生まれ変わりでもエマにはなれないから」
キャロルから、切ない気持ちが流れてきた。
本当に何やってんだかあの
まぁ、キャロルには悪いけど、それとこれとは別問題だ。
こちらはこちらで、確かめないといけない事があるからな。
「昔ね。君がエマでいた頃よりもはるか数千年も前の昔。この場所にピクトリアンがあったんだ。そこに国を失って逃げてきた王子と家臣たちがいた。彼らはボロボロで王子には魔力があったようだけど、当時の国王よりは、はるかに弱い彼らを手厚くもてなすことにしたんだ」
いきなり始まった昔話に、きょとんとしているのが分かるよ。キャロル。
「手酷く裏切られたよ。王子は王様には勝てない。だがら、何の魔力も能力も持たない庶民を大量殺りく、し始めた。同時に王宮内の武器庫も食糧庫もすべて破壊してね。ひどいと思わないかい?」
キャロルは、私の話に固まっている。
そうだよね。本心ではひどいと思っているのに、この国の事を考えて何も言えなくなっている。
そして、私の正体に気付いて、当時の私の気持ちを考えてくれている。
悲しい気持ちは、分かるけど。私の深い悲しみが理解できないだろうと思ってくれているんだ。
本当に賢者にはもったいないくらい、良い子だよね。
「あなたは、本当に警戒心が無い。私の事を考えている場合では無いだろうに。賢者が教えてないから知らないのだろうけど。自分より能力の高い相手の結界に入るという事は、いつ殺されても文句は言えないという事なんだよ」
「そうなの? それはマズいわね。これからは気を付けなくちゃ」
いや。今、この状態が危ないと警告したのだけど……。
全く、危機感が無い。
「
私は、キャロルの頬にふれる。
「ねぇ、キャロル。賢者の想い人が傷つけられたら、彼はどんな顔をするのだろうね」
私は、笑いながらキャロルにそう問いかけた。