第45話 キャロルの心の内
文字数 1,618文字
私はその内に、王宮に頻繁に遊びに行くようになっていた。
キャロルが幼い時、王妃養育の為に通っていた頃とは違う。私がキャロルに入る前に、定期的に王 太 子 殿 下 とお会いしていた時とも違う。
なにか……そう。リリーが、クラレンスに会っていた時のような感じで……。
実際、お屋敷に籠っているよりは楽しい。
仲睦まじさをみせて、王宮の皆に婚約続行をアピールする目的のおかげかクラレンスは、以前にもまして優しく、気を遣ってくれている。
執務室で、クラレンスが仕事を終わるのを待っている時も、退屈しない様に、ご令嬢方の間で流行っている小説や色とりどりのお菓子を用意していてくれた。
お菓子はともかく、本の方は賢者のクリスが、私の前世からの好みを知っているので助言してるみたい。
どの本を読んでも、とても面白かった。
「キャロル。退屈してないか?」
仕事が一段落着いたのか、私が座っているソファーの横にクラレンスも座ってきた。
「ええ。クラレンス殿下が集めて下さったご本がとても面白くて」
私が機嫌よく答えると、クラレンスも私の前に置いてある本を一冊手に取って、ぱらぱらと読んでみてる。
「ふ~ん。今のご令嬢方はこういう本を好むんだね」
興味があるんだか無いんだか、分からない感じだわ。
まぁね。わかっては、いるのよ。所詮、女の子の憧れが詰まった本だって。
前世でも、たまたま誰かのお見舞いに来た男の子が、私の本を勝手に読んで『信じらんね~。こんな男いるかよ』なんて、言ってたもの。
「クラレンス殿下は、もう仕事は終わられたのですか?」
私は読んでいた本にしおりを挟んで、閉じ。訊いてみた。
「ぜんぜん、終わらない。する度に増えている気さえするよ」
クラレンスも、持っていた本を元の位置に戻して、私に言っていた。
もう、最後の方なんかため息交じりだ。
「まぁ。それは大変ですのね」
ぼやいているクラレンスがなんだか可愛くて、ついくすくす笑ってしまった。
「うん。だから癒してくれる?」
そう言って、やんわり抱きしめられた。
執務室の中には、当たり前だけど、文官の方々や護衛、部屋付き侍女の方々とかいるのに。
どうしよう。恥ずかしすぎる。
私が固まっていると、クラレンスから耳元で言われる。
「じっとしてて、恥ずかしかったら目を閉じていて良いから」
顔が真っ赤になっているのだと思う。
事前に、打ち合わせていたのに。こんな風にみんなの前で抱きしめられると恥ずかしくて、消えてしまいたい。
クラレンスは、抱きしめる以上の事はしてこない。
ほっぺにキスをするのも、かすめる程度だ。
色々な事があったけど、王太子はやっぱりキャロルを大切に想っているし、キャロルもそんな王太子の事が……という風に、持っていきたいのだとか。
もともと、王族の恋愛などどうでも良い人達に対するアピール。
要は、キャロルが誰を選んだかが、明確にわかる様にすればいいだけの作戦。
そして、ここにいるクラレンス派の皆に具体的な噂を流してもらうための茶番劇だった。
なんだか、むなしい。
クラレンスが優しくしてくれても、抱きしめてくれても、それが全て演技なのだと思うと……。
愛されなくても良いと思って、クラレンスを選んだんだけど、それでもやっぱり辛い。
だって、キャロルの記憶の中に残っているもの。
クラレンスとリリーが、仲睦まじくクラレンスのお部屋や執務室から出てきているところが。
本当に愛おしそうに、クラレンスはリリーを見ていた。
私を好きだと……一緒に居たいと言ってくれたクリスに会いたい。
この世界に来て何だかんだ言っても、頻繁に会っていたのに。
頼るなと言いながら、怖い事やイヤな事があると、いつもなぐさめてくれた。
こんなに会わなかったのは、初めてかもしれない。
私は、クラレンスに抱きしめながらつぶやいてしまっていた。
「会いたい……な」
クリスに……とは、言葉になっていないはずだったけど。
キャロルが幼い時、王妃養育の為に通っていた頃とは違う。私がキャロルに入る前に、定期的に
なにか……そう。リリーが、クラレンスに会っていた時のような感じで……。
実際、お屋敷に籠っているよりは楽しい。
仲睦まじさをみせて、王宮の皆に婚約続行をアピールする目的のおかげかクラレンスは、以前にもまして優しく、気を遣ってくれている。
執務室で、クラレンスが仕事を終わるのを待っている時も、退屈しない様に、ご令嬢方の間で流行っている小説や色とりどりのお菓子を用意していてくれた。
お菓子はともかく、本の方は賢者のクリスが、私の前世からの好みを知っているので助言してるみたい。
どの本を読んでも、とても面白かった。
「キャロル。退屈してないか?」
仕事が一段落着いたのか、私が座っているソファーの横にクラレンスも座ってきた。
「ええ。クラレンス殿下が集めて下さったご本がとても面白くて」
私が機嫌よく答えると、クラレンスも私の前に置いてある本を一冊手に取って、ぱらぱらと読んでみてる。
「ふ~ん。今のご令嬢方はこういう本を好むんだね」
興味があるんだか無いんだか、分からない感じだわ。
まぁね。わかっては、いるのよ。所詮、女の子の憧れが詰まった本だって。
前世でも、たまたま誰かのお見舞いに来た男の子が、私の本を勝手に読んで『信じらんね~。こんな男いるかよ』なんて、言ってたもの。
「クラレンス殿下は、もう仕事は終わられたのですか?」
私は読んでいた本にしおりを挟んで、閉じ。訊いてみた。
「ぜんぜん、終わらない。する度に増えている気さえするよ」
クラレンスも、持っていた本を元の位置に戻して、私に言っていた。
もう、最後の方なんかため息交じりだ。
「まぁ。それは大変ですのね」
ぼやいているクラレンスがなんだか可愛くて、ついくすくす笑ってしまった。
「うん。だから癒してくれる?」
そう言って、やんわり抱きしめられた。
執務室の中には、当たり前だけど、文官の方々や護衛、部屋付き侍女の方々とかいるのに。
どうしよう。恥ずかしすぎる。
私が固まっていると、クラレンスから耳元で言われる。
「じっとしてて、恥ずかしかったら目を閉じていて良いから」
顔が真っ赤になっているのだと思う。
事前に、打ち合わせていたのに。こんな風にみんなの前で抱きしめられると恥ずかしくて、消えてしまいたい。
クラレンスは、抱きしめる以上の事はしてこない。
ほっぺにキスをするのも、かすめる程度だ。
色々な事があったけど、王太子はやっぱりキャロルを大切に想っているし、キャロルもそんな王太子の事が……という風に、持っていきたいのだとか。
もともと、王族の恋愛などどうでも良い人達に対するアピール。
要は、キャロルが誰を選んだかが、明確にわかる様にすればいいだけの作戦。
そして、ここにいるクラレンス派の皆に具体的な噂を流してもらうための茶番劇だった。
なんだか、むなしい。
クラレンスが優しくしてくれても、抱きしめてくれても、それが全て演技なのだと思うと……。
愛されなくても良いと思って、クラレンスを選んだんだけど、それでもやっぱり辛い。
だって、キャロルの記憶の中に残っているもの。
クラレンスとリリーが、仲睦まじくクラレンスのお部屋や執務室から出てきているところが。
本当に愛おしそうに、クラレンスはリリーを見ていた。
私を好きだと……一緒に居たいと言ってくれたクリスに会いたい。
この世界に来て何だかんだ言っても、頻繁に会っていたのに。
頼るなと言いながら、怖い事やイヤな事があると、いつもなぐさめてくれた。
こんなに会わなかったのは、初めてかもしれない。
私は、クラレンスに抱きしめながらつぶやいてしまっていた。
「会いたい……な」
クリスに……とは、言葉になっていないはずだったけど。