第54話 キャロルとユウキの思惑
文字数 1,213文字
「そうですなぁ。今の時点では、王太子殿下とキャロル様のご実家以外は、みんな容疑者になってしまいますなぁ」
ウィンゲート公爵は、笑ってそう言った。ただ、目は笑ってなかったけど。
「どちらにしろ、憶測で言って良い話じゃないな。すまなかった、ウィンゲート。キャロルが不快な思いをさせた」
「かまいませんよ。キャロル様は、まだお若い。分からない事も多いのでしょう」
クラレンスの素直な謝罪に、ウィンゲート公爵の怖い笑いが苦笑いに変わってしまっている。
私だって、分かってるのよ。クリスから散々嫌味言われてたから。
この会話が周りからどう取られるか、ウィンゲート公爵がどう思うのかなんて。
だけど、ここで丸く収められてしまったら困る。
「何がでしょうか?」
「キャロル」
私が更に問いかけると、クラレンスから咎めるように名前を呼ばれた。
「良いんですよ。王太子殿下」
と言って、ウィンゲート公爵が私に目線を合わせてきた。
「キャロル様。捜査官がおおぴらに捜査しますと言ってやって来るのに、馬鹿正直に証拠を残しておきますか?」
言い方が、子どもに対するものになってしまっている。
返答は、捜査官が調べた時になぜ証拠が出て来なかったのかという事に絞られていた。
王太子の婚約者に、周りにどう取られるかというのを、説明すると不敬になるかもしれないものね。
「そうですね。隠すと思いますわ」
「でしょう? ご納得いただけましたか?」
「ええ。分かりましたわ。蛇の道は蛇ってことが」
私がにこやかにそう言うと、ウィンゲート公爵の顔から一瞬笑顔が消えた。
だから、穏便にすます気は無いんだって。
それでも、さすがウィンゲート公爵。にこやかに
「そういう事になりますかな。では、これで……」
と言って、去って行った。
クリスはキャロルのスキルは使えないと言ったけど、記憶は充分に使える。
ウィンゲート公爵には、王太子の誕生に合わせて正室に産ませた、王妃候補になり損ねたご令嬢がいるはずだ。
そして、もう22歳にもなるのに、結婚どころか婚約者すらいない。
私が敵視され、あのご令嬢を表舞台に出すことが出来たら、クラレンスが王太子の座を追われる可能性が減ると思う。ウィンゲート公爵も、クラレンスを守るだろうし。
一瞬でも、クラレンスの横に他の女性が立つのを見るのはイヤだけど。
「キャロル。ダメだよ。あまりウィンゲートを刺激しては……。私を敵視するだけでは、すまなくなる」
クラレンスが、心配そうに言ってきた。
「ごめんなさい。つい口が」
てへへって、笑ったけど。
「これからは、挨拶だけにしとこうね。キャロル」
クラレンスにも、子ども扱いされてしまった。
「大丈夫ですよ。そんなに心配しなくても」
と笑って言う。
だって、私が敵認定されたら、クラレンスは安泰だわ。
そう思って会場を見ると、相変わらず令嬢たちに囲まれているクリスと目が合った。
クリスは私を見て、満足そうに笑った。
ウィンゲート公爵は、笑ってそう言った。ただ、目は笑ってなかったけど。
「どちらにしろ、憶測で言って良い話じゃないな。すまなかった、ウィンゲート。キャロルが不快な思いをさせた」
「かまいませんよ。キャロル様は、まだお若い。分からない事も多いのでしょう」
クラレンスの素直な謝罪に、ウィンゲート公爵の怖い笑いが苦笑いに変わってしまっている。
私だって、分かってるのよ。クリスから散々嫌味言われてたから。
この会話が周りからどう取られるか、ウィンゲート公爵がどう思うのかなんて。
だけど、ここで丸く収められてしまったら困る。
「何がでしょうか?」
「キャロル」
私が更に問いかけると、クラレンスから咎めるように名前を呼ばれた。
「良いんですよ。王太子殿下」
と言って、ウィンゲート公爵が私に目線を合わせてきた。
「キャロル様。捜査官がおおぴらに捜査しますと言ってやって来るのに、馬鹿正直に証拠を残しておきますか?」
言い方が、子どもに対するものになってしまっている。
返答は、捜査官が調べた時になぜ証拠が出て来なかったのかという事に絞られていた。
王太子の婚約者に、周りにどう取られるかというのを、説明すると不敬になるかもしれないものね。
「そうですね。隠すと思いますわ」
「でしょう? ご納得いただけましたか?」
「ええ。分かりましたわ。蛇の道は蛇ってことが」
私がにこやかにそう言うと、ウィンゲート公爵の顔から一瞬笑顔が消えた。
だから、穏便にすます気は無いんだって。
それでも、さすがウィンゲート公爵。にこやかに
「そういう事になりますかな。では、これで……」
と言って、去って行った。
クリスはキャロルのスキルは使えないと言ったけど、記憶は充分に使える。
ウィンゲート公爵には、王太子の誕生に合わせて正室に産ませた、王妃候補になり損ねたご令嬢がいるはずだ。
そして、もう22歳にもなるのに、結婚どころか婚約者すらいない。
私が敵視され、あのご令嬢を表舞台に出すことが出来たら、クラレンスが王太子の座を追われる可能性が減ると思う。ウィンゲート公爵も、クラレンスを守るだろうし。
一瞬でも、クラレンスの横に他の女性が立つのを見るのはイヤだけど。
「キャロル。ダメだよ。あまりウィンゲートを刺激しては……。私を敵視するだけでは、すまなくなる」
クラレンスが、心配そうに言ってきた。
「ごめんなさい。つい口が」
てへへって、笑ったけど。
「これからは、挨拶だけにしとこうね。キャロル」
クラレンスにも、子ども扱いされてしまった。
「大丈夫ですよ。そんなに心配しなくても」
と笑って言う。
だって、私が敵認定されたら、クラレンスは安泰だわ。
そう思って会場を見ると、相変わらず令嬢たちに囲まれているクリスと目が合った。
クリスは私を見て、満足そうに笑った。