第34話 クラレンス殿下の寝室

文字数 1,153文字

 知らない天井だ。
 って、この前もそんな事を考えたような……。マンガの見過ぎかな?
 
 まだ、外は暗いみたい。
 すぐ横にクラレンスが寝ているって事は、戻って来たのね。
 なんでか賢者の間からは、自動的に飛ぶ前の場所に戻って来るのよね。良いんだけど。
 
 昨日はリリーを隣の国まで無事送り届けることが出来た。
 捜索隊も、リリーたちが国内で見つからなかったら、諦めるよね。
 
 あれだけ頑張ったんだから、もう少し……侍女が紅茶を持ってきてくれるまでは、寝ていて良いよね。クラレンスもまだ寝てるし。
 明け方の寒さに負けて、クラレンスの方にすり寄ってまた寝入ってしまった。



「うっ」
 う? なあに? 
 
 窓辺から、暖かそうな光が差している。
 もう朝なんだ。
 何だか体がだるい。頭がボーっとする。

 何か、クラレンスが変な顔してこっちを見てる。
 でも、体がきつくて眠い。
 クラレンスが掛布を剥ぐもんだから、寒いよ。
 私は、二度寝するためにクラレンスの方にすり寄った。

「こらこらこら。起きろ。キャロル」
 うるさいなぁ。
「あ……れ? クラレンス殿下?」
 寝ちゃダメなの? そう思って、起き上がりベッドの上に座った。
「何で、ここにいるんだ? 賢者の間に寝せて帰ったはずなのに」
「ああ。昨日、ここから飛んだから……。なんか、朝になったら戻っちゃうんですよね」
 てへへって感じで言った。
「……そうなんだ」
 なんだかクラレンスはぐったりしているけど、体きついのかな? 

 クラレンスは私から離れ、ベッドから降りようとしている。
 そして、ふと言い忘れていたというようにこっちを向く。
「あのな。分かっていると思うけど、リリーたちが国外脱出したことは誰にも……たとえば、君のお兄さんにも言ってはいけないからな」
「あっ、はい。そうですね」
 私はふにゃって感じで笑った。まだ、色々力が入らない。
 クラレンスの顔が少し赤い感じがする。

「体、きついなら、もう少し寝ていて良いよ。私は朝食を食べに行くけど、キャロルのはここに持ってきてもらうようにするから」
 クラレンスはベッドから降りながらそう言った。
「あ……いえ。わたくしも一度家に帰らないと」
 少し頭がしっかりしてきた。
 もう一度、転がってしまったらしばらく起き上がれなくなる。自宅のお屋敷ならまだしも、ここで動けなくなるわけにはいかないと思う。

 私は動かない体を、一生懸命動かしてベッドを降りようとした。
 足が床に着いた途端、よろける。
 クラレンスがとっさに支えてくれた。
 そして、私をすぐさまベッドに座らせる。

「侍女を呼んでくるから、そこにいて」
 何だか焦ってる。寝室のすぐ側に侍女たちは待機していたようで、クラレンスと入れ替わる様に、私の衣装と共に入ってきた。
 そして慌ただしい王宮の朝が始まった。
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