第42話 少しきな臭いお話

文字数 1,354文字

 食事も終わり、ひと息ついた。
 もう、クラレンスの部屋の人払いはすんでいる。
 社交をするのに気を付けないといけない事が、以前より多くなっているらしい。

「まずね。賢者様が言うには、キャロルは恋愛スキルがないので、その部分はユウキ嬢が対応しなければならないという事だ」
「恋愛スキル?」
「ああ。ユウキ嬢にはそう言った方が、分かりやすいって聞いたが」
「はぁ」
 まぁ、すでにキャロルが出来る事をスキルって、言っているし。
 ゲームみたいだから、分かりやすいと思ったのかな?

「とは言っても、本当に警戒しないといけないのは、ダグラスだけなんだ」
「ダグラス殿下……ですか?」
「そう。ダグラスの母親の実家は、ウィンゲート家だと言えば、分かるかな?」
 ウィンゲート家。
 確か、いろいろな噂があって、キャロルもあまり近付かない様にしていたお家だわ。
 私が入る前は、ダグラスともあいさつ程度の仲だったようだし。
「側室様の実家は知ってますけど、後は悪い噂があるということくらいしか」
「やっぱり、キャロルも具体的な事は知らないか。あのね。リオンとはもう相談したから、キャロルとしては知識だけ持っていてくれたら良いのだけど」
 クラレンスは居住まいをただして続きを言おうとしてる。
 だから、私もピッと姿勢を正した。

「今、事実上キャロルは、私たち三人の内、誰と婚姻を結んでも王妃になる事が決定しているだろ?」
「はい」
「だからウィンゲート家がそれを狙っているんだ」
 それ?
「王位だよ。キャロルが王妃という事は、その伴侶は必然的に王様だ」
「な……なるほど」
「だから、ダグラスとの会話は気を付けて欲しいんだ。キャロルとの婚姻に関する言質を取られたらアウトだから」
「わかりました」
 と言っても、どうしたら良いのか分からないけど。
「クリス殿下の方は、いいのですか?」
「クリス? クリスは……大丈夫だよ。賢者様との事が落ち着いたら、いつも通り接して良いと思うよ」
 そうなんだ。クリスはまだクラレンスを助けるつもりでいてくれてるんだ。私との約束通り。

「ちなみに、今回下手をしたらウィンゲート家とアシュフィールド家、ムーアクロフト家も参戦しての、全面戦争になってしまうからね」
「へ? 何で……」
「特にウィンゲート家とアシュフィールド家は、色々あってね。ウィンゲート家は、代々王太子が産まれるのに合わせて正室に女の子を産ませているんだ。今回も、私と同じ年の令嬢がいるハズだ。なのに、賢者様が選んだのは5歳も年下のキャロルだったんだよ」
 分かるだろう? という感じで見られる。
 もしかしたら……

「わたくしの母が、部屋に籠りっぱなしなのって」
「そう。当時の噂や嫌がらせは酷かったらしいよ。もう、社交界に出れないくらいに」
 そう……なんだ。可哀そうだわ、お母様。
「政治的な事は、こちらで対処するから心配しなくても良いけど。夜会でのダンスなんかはね。女性は余程の事がないと断れないから」
「わかりました」
 

 でも、これってウィンゲート家が悪いわけで、ダグラスが悪いわけじゃ無いんだよね。
 この世界に来て、一番最初に優しくしてくれた人だもの。
 何だか、そんな風に警戒するのもイヤだなぁ。

 クラレンスには、分かりましたと言うしか無いのだろうけど……。
 なんだかモヤモヤする。 
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