第63話 騒動の後始末
文字数 1,378文字
この騒動の決着を付ける時に、私がした覚悟は二つだった。
ウィンゲート公爵を敵に回す覚悟。
賢者の存命が証明できなかった時の処刑される覚悟。
だけど、それだけじゃ足りなかったんだ。
私は、自分が勝った時の事、どんな事が起こるのか、全く理解してなかった。
相手を破滅に追いやる覚悟。
死なせてしまうかもしれない覚悟。
自分が引き起こしてしまった事は、どんな結末になっても最後まで見届けなければならないという覚悟。
そんな覚悟が私には足りないのだと、思い知らされた。
クラレンスは、私を自分の方に向けて、優しく目を隠し悲鳴すら聞こえない様に抱きしめてくれようとしている。
だけど……。
私はクラレンスを押しのけた。
「大丈夫。わたくしもこの騒動の責任者ですから、最後まで見届けます」
賢者の方を見たら、マドリーンが賢者の手を取るところだった。
マドリーンの体を、ふんわりと光が包み込む。
微笑みをたたえていた顔が、苦痛に歪みだした。
「ぐっ……いっ。いや~! いたっ……。助けて、だれか……」
マドリーンは、必死に苦痛から逃れようと、賢者の手を振り払おうとしていた。
私は、その光景に思わず後ずさったのだと思う。
クラレンスが後ろから、抱きしめていてくれた。
どんなにマドリーンが暴れても、悲鳴を上げても、賢者はマドリーンの手を離さなかった。
ぐったりとして、足元に倒れてしまうまで……。
「賢者様。これはあまりにもひどい仕打ちではありませんか」
目の前で起こった娘のあんまりな最期に、ウィンゲート公爵は抗議の声を上げる。
「どうして? これに耐えたら、私は約束を守るつもりでいたよ?」
賢者は心外だという顔をして言う。
「あんなこと、人間に耐えれるはずはありません」
「クラレンスは耐えたけどね。私は彼にも同じことをしたよ。キャロルを庇って、衝撃も痛みも全て耐えきった」
そう言いながら、賢者はクラレンスに、おそらく初めて優しい眼差しを向けていた。
「私は最初から『覚悟があるなら』と言ったはずだよ」
賢者が、控えていた護衛の近衛騎士に視線を向けると、マドリーンの遺体を運び出し始めた。
ウィンゲート公爵、トルネード伯爵とその子飼いの者たちは、監獄に連れて行かれる。
もう、誰も何も言わなかった。
「さて、国王よ。ウィンゲートの嫡子は親と同様の処罰を。後、まだ数人の直系の子孫がいたと思うが、素直に田舎の領地で大人しくするなら良し、そうでなければ……」
「かしこまりました。即座にそのように致します」
国王が賢者に礼を執って、宰相と共に謁見の間から退出していった。
そして、賢者は跪いて礼を執っているダグラスに話しかける。
「ダグラス」
「はい」
「君はこれから、私が決めた相手と婚姻を結び。王宮を出た後、ウィンゲート家を継ぐことになるけど、本当に良いの? 死ぬまで王室の政敵を演じることになるんだよ」
賢者は、優しい話し方になっていた。
「はい。お約束頂いた、母と私の弟妹の身の安全を保障して頂けるのであれば、私はかまいません」
「そう。じゃ、よろしくね。なるげく負担のかからないように、取り計らうから」
「有難きことに、存じ上げます」
更にかしこまってしまったダグラスを、賢者は優しい眼差しで見ていた。
「うん。君ももう、退出して良いよ」
賢者からそう言われ、ダグラスも退出していった。
ウィンゲート公爵を敵に回す覚悟。
賢者の存命が証明できなかった時の処刑される覚悟。
だけど、それだけじゃ足りなかったんだ。
私は、自分が勝った時の事、どんな事が起こるのか、全く理解してなかった。
相手を破滅に追いやる覚悟。
死なせてしまうかもしれない覚悟。
自分が引き起こしてしまった事は、どんな結末になっても最後まで見届けなければならないという覚悟。
そんな覚悟が私には足りないのだと、思い知らされた。
クラレンスは、私を自分の方に向けて、優しく目を隠し悲鳴すら聞こえない様に抱きしめてくれようとしている。
だけど……。
私はクラレンスを押しのけた。
「大丈夫。わたくしもこの騒動の責任者ですから、最後まで見届けます」
賢者の方を見たら、マドリーンが賢者の手を取るところだった。
マドリーンの体を、ふんわりと光が包み込む。
微笑みをたたえていた顔が、苦痛に歪みだした。
「ぐっ……いっ。いや~! いたっ……。助けて、だれか……」
マドリーンは、必死に苦痛から逃れようと、賢者の手を振り払おうとしていた。
私は、その光景に思わず後ずさったのだと思う。
クラレンスが後ろから、抱きしめていてくれた。
どんなにマドリーンが暴れても、悲鳴を上げても、賢者はマドリーンの手を離さなかった。
ぐったりとして、足元に倒れてしまうまで……。
「賢者様。これはあまりにもひどい仕打ちではありませんか」
目の前で起こった娘のあんまりな最期に、ウィンゲート公爵は抗議の声を上げる。
「どうして? これに耐えたら、私は約束を守るつもりでいたよ?」
賢者は心外だという顔をして言う。
「あんなこと、人間に耐えれるはずはありません」
「クラレンスは耐えたけどね。私は彼にも同じことをしたよ。キャロルを庇って、衝撃も痛みも全て耐えきった」
そう言いながら、賢者はクラレンスに、おそらく初めて優しい眼差しを向けていた。
「私は最初から『覚悟があるなら』と言ったはずだよ」
賢者が、控えていた護衛の近衛騎士に視線を向けると、マドリーンの遺体を運び出し始めた。
ウィンゲート公爵、トルネード伯爵とその子飼いの者たちは、監獄に連れて行かれる。
もう、誰も何も言わなかった。
「さて、国王よ。ウィンゲートの嫡子は親と同様の処罰を。後、まだ数人の直系の子孫がいたと思うが、素直に田舎の領地で大人しくするなら良し、そうでなければ……」
「かしこまりました。即座にそのように致します」
国王が賢者に礼を執って、宰相と共に謁見の間から退出していった。
そして、賢者は跪いて礼を執っているダグラスに話しかける。
「ダグラス」
「はい」
「君はこれから、私が決めた相手と婚姻を結び。王宮を出た後、ウィンゲート家を継ぐことになるけど、本当に良いの? 死ぬまで王室の政敵を演じることになるんだよ」
賢者は、優しい話し方になっていた。
「はい。お約束頂いた、母と私の弟妹の身の安全を保障して頂けるのであれば、私はかまいません」
「そう。じゃ、よろしくね。なるげく負担のかからないように、取り計らうから」
「有難きことに、存じ上げます」
更にかしこまってしまったダグラスを、賢者は優しい眼差しで見ていた。
「うん。君ももう、退出して良いよ」
賢者からそう言われ、ダグラスも退出していった。