第43話 クラレンス殿下の噂とダグラス殿下
文字数 1,599文字
私たちは、王宮で行われる夜会を中心に参加することにしていた。
その中でも、王室が主催している夜会ともなれば、伯爵以上のほとんどの貴族が参加していると言えよう。
そんな中で、私とクラレンスは、仲睦まじく見えるように演技をしていた。
私がクラレンス以外の誰かを選ぶという、噂の上書の為である。
なので、皆様との歓談の時もなるべく寄り添うようにしているし。
ダンスは婚約者同士が踊れる上限の二回目も必ず踊るようにしていた。
「ダンスのうまさは、キャロルのスキル?」
そうクラレンスが訊いてくる。
「そうなんですよ。キャロルってマジメだったんですね。何でもできるのですもの」
本当に、私も見習ってがんばらないと……。
そう思っていると、クラレンスが微妙な顔をしていた。
「そうだな。そういう教育を受けて来たからな。キャロルは」
ぽつんと、そう言う。何だが少し暗くなってる?
「それより、大丈夫? 夫婦でもない限り、三回目は踊れないが」
大丈夫? って噂の事? クラレンス、心配そう。
「大丈夫ですよ。……多分」
私は力ない笑みを返した。今夜の夜会での噂の半分は……何のことだか、よくわかんない。
ダンスも終わり、私達はお互い寄り添って行動していた。
ダンス後の噂は、クラレンス派が流している『仲睦まじくて微笑ましい』というものと、『命乞いの為に、クラレンスが婚約者にしがみ付いている』という反対派が流している噂が混在してきた。
だけど命乞いなんて、そんな……。
クラレンスは、賢者に引き裂かれてもかまわない覚悟で、リリーの事が好きだったのに。
「ひどい。命乞いなんて……」
私は、クラレンスの腕にしがみ付きながら言う。
「私は大丈夫だよ。キャロルが分かってくれているのなら、それで良い」
私は、腕にしがみ付いたまま、クラレンスの顔を見る。
クラレンスは、いつも通り笑っていた。
夜会での闘い方はクラレンスが教えてくれた。
大丈夫。私も笑える。クラレンスの味方をするんだから。
そんな覚悟をしていたら、ダグラスが私たちのところにやってきた。
「クラレンス。キャロル嬢をダンスに誘いたいのだが、かまわないか?」
「ああ。かまわないよ。キャロル。行っておいで」
クラレンスはダグラスの申し出に許可を出して、私を送り出す。
ここのところ、不自然なくらい二人で居すぎたから、正式に申し込まれると断れない。
「キャロル嬢。私と踊って頂けますか?」
「喜んでお受けいたしますわ。ダグラス殿下」
私たちは、曲の変わり目を狙って中央に行き、踊り始めた。
ダグラスは、いつだってこんな風に優しいのに。
その優しさすら、疑わないといけないのかな。
「どうした? うかない顔して」
ん? って感じで、私に訊いてくる。いつの通りの優しいお兄さんの顔だ。
「この前の、返事なのですが」
「ああ」
「わたくしは、ダグラス殿下を選ぶことはできません。クラレンス殿下の側にいたいんです」
私がそう言うと、ダグラスは一瞬だけ真顔になり、すぐに笑顔に戻る。
「そう。そりゃ、仕方が無いな」
にこやかにそう言ってくれる。このまま、ダグラスと疎遠になってしまうのかな。
なんだか、子どもだと言われても、我がままだと言われてもそんなのって……。
「ダグラス殿下。わたくし、こんなのはイヤです。誰かを選んだから、誰かと仲良くできないなんて。わたくしは、ダクラス殿下の事を信じていたい。仲良くしていたいんです」
これが私の本音。警戒しろと言われても、出来ない。
「キャロル嬢の事を好きな俺に、この言葉を言うんだ」
なにか、いつもと違う感じでダグラスが言う。
「ずるいな」
苦笑いとも、なんともとれない顔をしていた。
辛そう。なんでそんな顔をするの? 私はただ、今まで通りにしていたいだけなのに。
ダンスが終わった後も、ダグラスは私を離さず、会場の死角になる場所に連れて行かれてしまった。
その中でも、王室が主催している夜会ともなれば、伯爵以上のほとんどの貴族が参加していると言えよう。
そんな中で、私とクラレンスは、仲睦まじく見えるように演技をしていた。
私がクラレンス以外の誰かを選ぶという、噂の上書の為である。
なので、皆様との歓談の時もなるべく寄り添うようにしているし。
ダンスは婚約者同士が踊れる上限の二回目も必ず踊るようにしていた。
「ダンスのうまさは、キャロルのスキル?」
そうクラレンスが訊いてくる。
「そうなんですよ。キャロルってマジメだったんですね。何でもできるのですもの」
本当に、私も見習ってがんばらないと……。
そう思っていると、クラレンスが微妙な顔をしていた。
「そうだな。そういう教育を受けて来たからな。キャロルは」
ぽつんと、そう言う。何だが少し暗くなってる?
「それより、大丈夫? 夫婦でもない限り、三回目は踊れないが」
大丈夫? って噂の事? クラレンス、心配そう。
「大丈夫ですよ。……多分」
私は力ない笑みを返した。今夜の夜会での噂の半分は……何のことだか、よくわかんない。
ダンスも終わり、私達はお互い寄り添って行動していた。
ダンス後の噂は、クラレンス派が流している『仲睦まじくて微笑ましい』というものと、『命乞いの為に、クラレンスが婚約者にしがみ付いている』という反対派が流している噂が混在してきた。
だけど命乞いなんて、そんな……。
クラレンスは、賢者に引き裂かれてもかまわない覚悟で、リリーの事が好きだったのに。
「ひどい。命乞いなんて……」
私は、クラレンスの腕にしがみ付きながら言う。
「私は大丈夫だよ。キャロルが分かってくれているのなら、それで良い」
私は、腕にしがみ付いたまま、クラレンスの顔を見る。
クラレンスは、いつも通り笑っていた。
夜会での闘い方はクラレンスが教えてくれた。
大丈夫。私も笑える。クラレンスの味方をするんだから。
そんな覚悟をしていたら、ダグラスが私たちのところにやってきた。
「クラレンス。キャロル嬢をダンスに誘いたいのだが、かまわないか?」
「ああ。かまわないよ。キャロル。行っておいで」
クラレンスはダグラスの申し出に許可を出して、私を送り出す。
ここのところ、不自然なくらい二人で居すぎたから、正式に申し込まれると断れない。
「キャロル嬢。私と踊って頂けますか?」
「喜んでお受けいたしますわ。ダグラス殿下」
私たちは、曲の変わり目を狙って中央に行き、踊り始めた。
ダグラスは、いつだってこんな風に優しいのに。
その優しさすら、疑わないといけないのかな。
「どうした? うかない顔して」
ん? って感じで、私に訊いてくる。いつの通りの優しいお兄さんの顔だ。
「この前の、返事なのですが」
「ああ」
「わたくしは、ダグラス殿下を選ぶことはできません。クラレンス殿下の側にいたいんです」
私がそう言うと、ダグラスは一瞬だけ真顔になり、すぐに笑顔に戻る。
「そう。そりゃ、仕方が無いな」
にこやかにそう言ってくれる。このまま、ダグラスと疎遠になってしまうのかな。
なんだか、子どもだと言われても、我がままだと言われてもそんなのって……。
「ダグラス殿下。わたくし、こんなのはイヤです。誰かを選んだから、誰かと仲良くできないなんて。わたくしは、ダクラス殿下の事を信じていたい。仲良くしていたいんです」
これが私の本音。警戒しろと言われても、出来ない。
「キャロル嬢の事を好きな俺に、この言葉を言うんだ」
なにか、いつもと違う感じでダグラスが言う。
「ずるいな」
苦笑いとも、なんともとれない顔をしていた。
辛そう。なんでそんな顔をするの? 私はただ、今まで通りにしていたいだけなのに。
ダンスが終わった後も、ダグラスは私を離さず、会場の死角になる場所に連れて行かれてしまった。