第35話 気だるい朝 朝食の間にて

文字数 991文字

 朝食の間。
 クラレンスとたどり着いた時は、もうクリスは座って待っていた。
 なんだか、第二王子の方とも賢者の方とも言い難い雰囲気をしている。
 体の方は、賢者かな? 第二王子の方は、どうなっているのだろう。
 どうしてこうなっているのだろう? 私の体に入っていた後遺症かなぁ。

 朝食を食べて、紅茶を出してもらった後、クリスは人払いをして私に訊いてきた。
「キャロル。昨夜はお疲れ様。体の方はどうだい?」
「少しだるいけど、大丈夫です」
 少し……かなりだるいけど。
「そう? なら良かったけど、しばらくはゆっくりしていたら良いと思うよ」
 クリスからそう言われた。なんだか、バレバレだなぁ。
「それと、昨日の事は、誰にも……お兄さんにも言ってはいけないよ」
 僕ら、一蓮托生だからねっという感じで、クリスからも釘を刺された。

「はい。ベッドの中でクラレンス殿下からも同じことを言われました」
「ベッド?」
 クリスが怖い顔で、クラレンスを睨んでいる。
「何もしてないからな」
 クリスに向かって慌てて、弁明していた。
「いや。分かっているけどね。王宮内で起きていることくらいは、把握できるから」
「分かっているのなら、殺気を放つなよ」
 クラレンスはブツブツ言っているけど。

「ああ。それと、しばらくは第二王子になっていても、中身は賢者の私だから」
 私は、飲んでいた紅茶をテーブルに置いた。
「それで、そんな混ざった感じなんですね」
 クラレンスには、(からだ)も賢者のって言わないんだ。
「うん。色々と都合があってね。だから、クラレンス、私を弟と同じ扱いにしてくれてかまわないからね。周りの目もあるし」
 クリスは、にこやかにそう言った。
「そうですね。かしこまりました」
 クラレンスはそれでも、緊張してそう言った。

「さて、キャロルはもうお屋敷にお帰り。君の兄さんが迎えに来るように手配しておいたから」
 私にそう言って、クラレンスには
「クラレンスの執務室に迎えに来るから、キャロルを連れて行ってやってくれ」
 そう指示を出していた。弟と言いながら意識は賢者なんだものね。
「はい。じゃあ、行こうか」
 クラレンスは、自然な感じで私の手を取り、椅子から立ち上がらせてくれる。
 私たちが、出ていくのをクリスは見守ってくれているようだった。

「さてっと。ちょっと厄介だよな」
 部屋を出て行ってしまった私達には、クリスのつぶやきは聞こえなかったけど。
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