第50話 犯人の取り調べのお話
文字数 2,311文字
「先ほどの話なのですが、取り調べがスムーズ過ぎて、犯人がウソを吐いているのではないかとも思うのです。だけど、誰も疑いもせず……」
私が寝ている部屋の、少し離れたソファーの所で三人座って仕事の話をしている。
本当は、三人とも部屋を出て行こうとしていたのだけど、私が不安そうな顔をしたのだと思う。
クリスが来る前に、話しかけていた事だし当事者である私に訊かせても良いだろうと判断したんだわ。
「本当の事を、言っているから疑いようが無いんじゃない」
クリスは相変わらずシレッとした物言いをしている。取り調べ現場に行っていないはずなのに、確信めいた事言っているなぁ。
「ですが、忠誠を誓った主人の事を、何の抵抗もなくペラペラとしゃべるでしょうか?」
そう言った瞬間、クリスがチラッとリオンの方を見た。
リオンは慌てて自分の口を塞ぐ。
「失礼しました。出過ぎたことを」
顔が少し青いかもしれない。
つい、反論したのだろうけど、今のリオンの立場では、不敬罪取られてもおかしくないから。
「ああ。気にしないで、別に不敬だとか言わないよ。当然の疑問だし」
けん制しておいて、よく言うと思うけど……。
「クリス。キャロルが殴られた日の夜。犯人に会いに行ったんだろう?」
「面会記録を見たら?」
クリス。明らかにクラレンスに冷たい。
「クラレンス殿下。取り調べが終わるまで、誰の面会も許されてません。それが例え王族でも」
リオンが、今さらな事を言ってくる。黒幕が誰か分からない以上。誰にも会わせられない。
容疑内容によっては、国王だって面会が出来ないシステムになっているのだから。
「面会にでは無く。会いに行っているだろう?」
「僕に何を言わせたいのかな? お兄様は」
クリスは笑顔を作っているけど、怖い。剣呑な空気を纏 っていた。
クラレンスは、リリーの事件の時にクリス殿下が脱走を手伝ったのを知っている。
だから今回も、先に犯人に接触をして、スムーズに証言を得られるよう細工したと思ってるのだと思う。
……思うが多いけど、推測だから仕方ないの。
「このままだと、リオンが単独で裏を取るために動き出す。本当の事を言ってくれ」
「あのさぁ。人間に出来るわけない事を、言わないでくれる?」
なんだか、クリスがブチ切れ寸前になってる。
空気がピリピリするもの。このままだったら、クラレンスを殺してしまうんじゃないかと思うくらい。
「クリス殿下」
リオンが、二人の間に割って入った。
「申し訳ございません。私が変な疑問を持ってしまったばかりに。どうか、お許しください」
そう言ってリオンはクリスに頭を下げていた。
「控えろ、リオン」
クラレンスは、クリスの怒りがリオンに向かない様に言ってくれている。
「いいえ。こんなところでケンカをして……。キャロルが、今にも泣きそうになっていますから」
リオンがそう言ったら、私の方を三人とも向いてしまった。
お仕事の邪魔をしたらいけないと思って、気を紛らわすために三人の実況してたけど。
私の体は震えて、目には涙が溜まっていた。
「キャロル」
クラレンスは、直ぐに私の側に来てくれて、優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫だよ。何も怖いことなどない。少し、兄弟げんかをしてただけだからね」
「まぁ、そうだね。心配しなくても殺したりしないよ」
クリスが私の心を読んで、不穏な事言ってきた。
「次期宰相だっけ? リオン」
「はい」
クリスは少し考えてリオンに言う。
「取調官たちが、犯人のいう事を鵜呑みにしているのは、賢者様がそう命令しているからだよ。そこにウソがあっても、なくても、現場はそれを信じるしかない」
「ウソがある……と、いう事ですか?」
「無いよ。精神の奥深くまで押し入って調べた事だから。それをそのまま犯人が口にしているだけさ」
「精神に押し入って? あの、よく理解が出来ないのですが……」
リオンは戸惑っているように見える。それは、そうかも……。
だって、リオンはクリスの正体知らないし。
「もうね。死んでるんだよ、あの男は。どうせ、次期王妃 を襲ったって事で、処刑は確定しているしね」
リオンが……クラレンスですら信じられないという顔をしてる。私だって信じられない。
だって、今の言い方だったら、クリスが犯人を殺したことになる。
それに対して、クリスはにっこり笑ってこう言う。
「信じなくても良いよ。それは君の自由だからね」
リオンは困惑している。
「キャロル。大丈夫?」
クラレンスは、もう離れても良いか? という意味で訊いてきてる。
「はい。大丈夫です」
私は、ニッコリ笑って言った。
「犯人の自白が調書で上がって来てたが、あれは信用出来るって事だな。名前があがっていた、伯爵位だったか、トルネードはどこと繋がっているのだろう」
クラレンスは、ソファーの方に戻って行きながら訊いている。
「それ以前に、トルネードとあの犯人とのつながりだって、自白だけだろう? 物証なんて残してないだろうし。相変わらず狡猾だよね。ウインゲートも」
シレッとクラレンスの疑問に答えつつ、クリスはリオンを見た。
「自白だけで、いけそう? トルネードの逮捕」
「ごねて逃げられる可能性は、ありますね。クリス殿下が言われている通り、トルネードと犯人ですら、繋がっている物証は見つかってませんし。単独犯だと言われても、仕方ない状況です」
リオンは、先ほどまでの戸惑いの表情 を隠して、仕事の顔になっていた。
「ウインゲートに付け入る隙を与えたくないけど、仕方ないね。こちらに恩を売るためにトルネードは、人身御供にされるだろうから……」
やれやれ、という感じでクリスはそんな事をぼやいていた。
私が寝ている部屋の、少し離れたソファーの所で三人座って仕事の話をしている。
本当は、三人とも部屋を出て行こうとしていたのだけど、私が不安そうな顔をしたのだと思う。
クリスが来る前に、話しかけていた事だし当事者である私に訊かせても良いだろうと判断したんだわ。
「本当の事を、言っているから疑いようが無いんじゃない」
クリスは相変わらずシレッとした物言いをしている。取り調べ現場に行っていないはずなのに、確信めいた事言っているなぁ。
「ですが、忠誠を誓った主人の事を、何の抵抗もなくペラペラとしゃべるでしょうか?」
そう言った瞬間、クリスがチラッとリオンの方を見た。
リオンは慌てて自分の口を塞ぐ。
「失礼しました。出過ぎたことを」
顔が少し青いかもしれない。
つい、反論したのだろうけど、今のリオンの立場では、不敬罪取られてもおかしくないから。
「ああ。気にしないで、別に不敬だとか言わないよ。当然の疑問だし」
けん制しておいて、よく言うと思うけど……。
「クリス。キャロルが殴られた日の夜。犯人に会いに行ったんだろう?」
「面会記録を見たら?」
クリス。明らかにクラレンスに冷たい。
「クラレンス殿下。取り調べが終わるまで、誰の面会も許されてません。それが例え王族でも」
リオンが、今さらな事を言ってくる。黒幕が誰か分からない以上。誰にも会わせられない。
容疑内容によっては、国王だって面会が出来ないシステムになっているのだから。
「面会にでは無く。会いに行っているだろう?」
「僕に何を言わせたいのかな? お兄様は」
クリスは笑顔を作っているけど、怖い。剣呑な空気を
クラレンスは、リリーの事件の時にクリス殿下が脱走を手伝ったのを知っている。
だから今回も、先に犯人に接触をして、スムーズに証言を得られるよう細工したと思ってるのだと思う。
……思うが多いけど、推測だから仕方ないの。
「このままだと、リオンが単独で裏を取るために動き出す。本当の事を言ってくれ」
「あのさぁ。人間に出来るわけない事を、言わないでくれる?」
なんだか、クリスがブチ切れ寸前になってる。
空気がピリピリするもの。このままだったら、クラレンスを殺してしまうんじゃないかと思うくらい。
「クリス殿下」
リオンが、二人の間に割って入った。
「申し訳ございません。私が変な疑問を持ってしまったばかりに。どうか、お許しください」
そう言ってリオンはクリスに頭を下げていた。
「控えろ、リオン」
クラレンスは、クリスの怒りがリオンに向かない様に言ってくれている。
「いいえ。こんなところでケンカをして……。キャロルが、今にも泣きそうになっていますから」
リオンがそう言ったら、私の方を三人とも向いてしまった。
お仕事の邪魔をしたらいけないと思って、気を紛らわすために三人の実況してたけど。
私の体は震えて、目には涙が溜まっていた。
「キャロル」
クラレンスは、直ぐに私の側に来てくれて、優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫だよ。何も怖いことなどない。少し、兄弟げんかをしてただけだからね」
「まぁ、そうだね。心配しなくても殺したりしないよ」
クリスが私の心を読んで、不穏な事言ってきた。
「次期宰相だっけ? リオン」
「はい」
クリスは少し考えてリオンに言う。
「取調官たちが、犯人のいう事を鵜呑みにしているのは、賢者様がそう命令しているからだよ。そこにウソがあっても、なくても、現場はそれを信じるしかない」
「ウソがある……と、いう事ですか?」
「無いよ。精神の奥深くまで押し入って調べた事だから。それをそのまま犯人が口にしているだけさ」
「精神に押し入って? あの、よく理解が出来ないのですが……」
リオンは戸惑っているように見える。それは、そうかも……。
だって、リオンはクリスの正体知らないし。
「もうね。死んでるんだよ、あの男は。どうせ、
リオンが……クラレンスですら信じられないという顔をしてる。私だって信じられない。
だって、今の言い方だったら、クリスが犯人を殺したことになる。
それに対して、クリスはにっこり笑ってこう言う。
「信じなくても良いよ。それは君の自由だからね」
リオンは困惑している。
「キャロル。大丈夫?」
クラレンスは、もう離れても良いか? という意味で訊いてきてる。
「はい。大丈夫です」
私は、ニッコリ笑って言った。
「犯人の自白が調書で上がって来てたが、あれは信用出来るって事だな。名前があがっていた、伯爵位だったか、トルネードはどこと繋がっているのだろう」
クラレンスは、ソファーの方に戻って行きながら訊いている。
「それ以前に、トルネードとあの犯人とのつながりだって、自白だけだろう? 物証なんて残してないだろうし。相変わらず狡猾だよね。ウインゲートも」
シレッとクラレンスの疑問に答えつつ、クリスはリオンを見た。
「自白だけで、いけそう? トルネードの逮捕」
「ごねて逃げられる可能性は、ありますね。クリス殿下が言われている通り、トルネードと犯人ですら、繋がっている物証は見つかってませんし。単独犯だと言われても、仕方ない状況です」
リオンは、先ほどまでの戸惑いの
「ウインゲートに付け入る隙を与えたくないけど、仕方ないね。こちらに恩を売るためにトルネードは、人身御供にされるだろうから……」
やれやれ、という感じでクリスはそんな事をぼやいていた。