第56話 「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」
文字数 1,754文字
伯爵が見ている前で、フィガロは大げさな仕草でケルビーノに近づきます。
フィガロは、伯爵に聞こえるよう大声で叫びます。
ここで歌われるのが、フィガロの二つ目のアリア「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」。
このオペラを代表するような、有名な曲です。
「蝶々」は浮気者、伊達男の意味。ケルビーノを激励する形で、からかっている歌です。でも本当のところは、脇にいるあの人への当てつけだったりして……
軍隊式に全員が退場し、第一幕が終わります。
お城での浮ついた生活とはまったく異なる、厳しい軍隊の生活。
稲垣俊也さん演じるフィガロは、力強くこの歌を歌います。ケルビーノはグルグル回され、小突かれ、突き飛ばされて、軍隊の過酷さを知らされますが……
この動画の演出の場合、ケルビーノは歌の途中で大事なことに気付きます。フィガロはちゃんと、伯爵への仕返しを考えてくれている!
ケルビーノは恐怖を乗り越え、フィガロと一緒にノリノリで軍隊ごっこを始めます。
伯爵は不機嫌になって、途中で出て行ってしまいます。フィガロ、ケルビーノ、スザンナの3人はやったー、と大喜び。
確かにこの解釈はアリ。秀逸な演出だと思います!
アカデミー賞を受賞した映画『アマデウス』より。
サリエリが作曲した「ダサい」行進曲が、モーツァルトのセンスにかかると、どんどん洗練された曲に生まれ変わり、ついにフィガロの歌うこの曲が誕生。そんなシーンです!
アントニオ・サリエリは、神聖ローマ皇帝、オーストリア皇帝に仕える宮廷楽長として楽壇の頂点に立っていた人物。モーツァルトよりもずっと高い地位にいました。彼の薫陶を受けた有名作曲家がたくさんいます。
悪いことばかりじゃないよ。この映画がきっかけで、サリエリの曲の良さも見直されているんだって。
というわけで、この映画は史実とはやや異なるようですが、モーツァルトの天才っぷりの描写、そして人間の嫉妬心にフォーカスした着眼点は素晴らしいですね!
これにて登場人物の対立軸を描いた第1幕が終了。
第2幕は、フィガロによる解決策と、その失敗に焦点が当てられます!