第38話 「さようなら、過ぎ去りし日々よ」

文字数 1,439文字

一人になって、もう一度手紙を開くヴィオレッタ。

この手紙は、ジェルモンから来たもの。ヴィオレッタはもう何度も読み返しています。


ずっと歌で物語が進んできた『椿姫』ですが、ここだけ普通の朗読がなされます(唐突ですが、だからこそ映えるのです!)。

「……貴嬢には、約束よくお守り頂き候……」
ジェルモンは、ヴィオレッタが約束通りに息子と別れたこと、しかもその理由について口を緘して語らなかったことを褒めてくれています。
「あれから決闘が行われた結果、男爵は傷つくも、快復に向かいおり候。

貴嬢の心尽くし、伝えおき候ゆえ……」

アルフレードとドゥフォール男爵の決闘は行われたのです!

その結果、男爵は怪我を負ったようですが、死にはせず、快復しつつあるとのこと。


そしてヴィオレッタとの間で何が起こったのか、ジェルモンは息子にすべて伝えたというのです。

でもアルフレードは決闘騒ぎのいざこざを避けるために、今は外国にいるようです。

「……アルフレードはお詫びに参りおり候。小生もいずれ。

貴嬢には、養生専一に。より良き未来に希望を。


  ジョルジュ・ジェルモン」

アルフレードが自分に会いに来てくれる!

それが手紙を受け取ってからの、ヴィオレッタの唯一と言っていい希望でした。

しかし……

手遅れよ……!
ヴィオレッタは拳でベッドを叩き、悲痛な声で叫びます。
待っても待っても、来てくれないわ。

(手鏡を見て)ああ何て変わりよう。これでも先生は希望を持てだなんて。

もう希望はすべて消えたのよ

ここで歌われるのが「さようなら、過ぎ去りし日々よ」という曲です。
さようなら、過ぎた日々よ。過ぎた日々の美しき夢よ。

バラ色の頬も、今はこんなに青ざめて

アルフレードの愛。それさえも私にはもうないわ。

それだけが慰めと支えだったのに

道を誤ったこの女。

神様どうか、この女の希望を叶え、罪をお許しになって御許にお迎え下さい

お墓は誰にでも、すべての行き着く先。

でも涙もお花も、私のお墓にはないわ。

名を刻んだ十字架も、私の遺骸の上にはないわ。


十字架もなく、お花もなく、

道を誤った女の願いを、神様どうか叶えて下さい

昨年亡くなったイタリアのソプラノ歌手ミレッラ・フレーニさん。

若々しい声質と高い演技力で高い評価を受けていた方で、指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンのお気に入りだったことでも知られています。

今回は久々に日本語訳の付いた動画が見つかりました。

良かった~!

し……しかし、痛々しくて見ていられないよ~
演出によっては、もっと血まみれ、苦し気に咳き込むヴィオレッタが登場するけど……
この映像で十分、苦しいよなあ?


十字架もお花もない。誰も自分のお墓参りに来てくれないってことだろ

そうだよ。

しかもジェルモンは今さら手紙で謝ってきたりして。ヴィオレッタじゃなくても「遅すぎ!」って言いたいよね。

何でもっと早く、事情を話してやれなかったかなあ~?

本当のことを話したら、アルフレードが納得してくれなかっただろうからね。

ジェルモンも相当の葛藤があったんじゃないかな。

演出によっては、ヴィオレッタが絶望するこのシーンにおいて、幸せいっぱいに嫁いでいくアルフレードの妹の姿を見せることもあるようです。

……あんまりだ

ジェルモンは結局、こうして打ち明けたわけだよね。やっぱりヴィオレッタに対し、あまりに申し訳ないという思いがあったんだよ、きっと。

まさか、ヴィオレッタはこのまま死ぬの?
そこが、原作小説とオペラの一番の違いなのです!

39話と40話で、どうなるかご注目下さい!

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