第38話 「さようなら、過ぎ去りし日々よ」
文字数 1,439文字
一人になって、もう一度手紙を開くヴィオレッタ。
この手紙は、ジェルモンから来たもの。ヴィオレッタはもう何度も読み返しています。
ずっと歌で物語が進んできた『椿姫』ですが、ここだけ普通の朗読がなされます(唐突ですが、だからこそ映えるのです!)。
ジェルモンは、ヴィオレッタが約束通りに息子と別れたこと、しかもその理由について口を緘して語らなかったことを褒めてくれています。
アルフレードとドゥフォール男爵の決闘は行われたのです!
その結果、男爵は怪我を負ったようですが、死にはせず、快復しつつあるとのこと。
そしてヴィオレッタとの間で何が起こったのか、ジェルモンは息子にすべて伝えたというのです。
でもアルフレードは決闘騒ぎのいざこざを避けるために、今は外国にいるようです。
アルフレードが自分に会いに来てくれる!
それが手紙を受け取ってからの、ヴィオレッタの唯一と言っていい希望でした。
しかし……
ヴィオレッタは拳でベッドを叩き、悲痛な声で叫びます。
ここで歌われるのが「さようなら、過ぎ去りし日々よ」という曲です。
昨年亡くなったイタリアのソプラノ歌手ミレッラ・フレーニさん。
若々しい声質と高い演技力で高い評価を受けていた方で、指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンのお気に入りだったことでも知られています。
演出によっては、ヴィオレッタが絶望するこのシーンにおいて、幸せいっぱいに嫁いでいくアルフレードの妹の姿を見せることもあるようです。