第81話 大団円の最終景
文字数 2,372文字
伯爵は激高し、何とも不穏な空気……。
夫人に手を出した者は、絶対に許さないつもりなのです。
そんな心情を写し取ったかのように、オーケストラは軍隊行進曲のように勇ましい音楽を奏でます。だけど感情的になっているのは伯爵だけ。
他の人は無理やり連れて来られて、何が何だか、という感じです。
つまりそこだけ、登場人物がはっきり見える仕掛けです。
伯爵は館の暗がりに手を入れます。
最初に光の中へ引っ張り出したのはフィガロでした。
フィガロと「嫌らしいこと」をしていたのは誰でしょう?
すると今度こそ……
でも何かおかしい……
繰り返されるごとに、音楽はどんどんクレッシェンドしていきます。
もう一つの館から、一人の女が出てきます。
彼女は先ほどかぶっていた、スザンナの帽子を外し、堂々とした姿で人々の前に現れます。
まさに青天の霹靂!
伯爵夫人は皆と同じようにひざまずこうとしますが、伯爵はそれをさせません。さっき口説いたのが誰だったのか、伯爵にも分かりました。もう言い逃れはできません。
自分には君主にふさわしい寛容さがなかったこと。
神様の前で誓った愛を踏みにじっているのは、他ならぬ自分だということ。
これまで見下していた人々に、とっくに見抜かれていたのです。
伯爵は参ったとばかり、夫人にひざまずいて懇願します。
だけど、とうとう負けを認めました。これは身分や性別による上下関係の、根こそぎの転換です。
夫人はさんざん苦しめられてきたうちの一人。夫を許せないと思っても不思議ではありません。
でも反省し、覚悟を決めたその人を見て、彼女はニッコリ笑うのです。
勝手に人を疑い、殺すの何のと息巻いていたのは伯爵自身。
だからこそ、この謝罪は命がけの覚悟を要しましたが、ここで夫人の優しさに救われました!
伯爵夫人を中心としたこの「許し」の歌。「宗教的」とも評される、崇高かつ最高に美しい合唱曲で、この物語は締めくくられます。
優しくあること、人を許せることの素晴らしさを感じさせるシーンです。
花火が打ち上げられ、祝祭的な雰囲気の中でこのオペラは終わります。
最後はまた二期会さんの動画より(第4幕全体の動画です)。
28.30付近~が今回の内容です。
最後までお付き合い頂き、まことにありがとうございました(作者より)。