第36話 続き:名作オペラ『椿姫』の誕生!

文字数 1,438文字

ジュゼッペ・ヴェルディは旅行でパリに来て、演劇の『椿姫』を観たんだな?
そうなの。でも一人じゃなかったんだよ。

その時に付き合っていた女性歌手と一緒だったの。

ジュゼッピーナといってね

ジュゼッペとジュゼッピーナ?

カップルでおんなじ名前かよ!

そうだね(笑)。

でもこの二人、ちょっと訳ありだったの。

そもそもヴェルディという人がなかなかの苦労人でね

次々とイタリア・オペラの歴史を塗り変え、「オペラ王」とも称されるヴェルディ。19世紀を代表する、ロマン派音楽の作曲家です。

イタリアでは紙幣の顔になったことがあるほどの人ですが、実は庶民の出身で多くの苦労をしています。

小学校の音楽室を思い出してみて。

偉大な音楽家たちの肖像画があったでしょ?

あの大半は、エリート層の人たち。バッハなんか、超一流宮廷音楽家の人だよね

オレの好きなベートーヴェンも、苦労人だってよ?

飲んだくれの父ちゃんに叩かれながら、ピアノの練習をしたんだ

ベートーヴェンも苦労した人だけど、彼はまだ上流階級に属していたと言えるよね。


ヴェルディは田舎の寒村の、旅芸人を泊めるような、小さな宿屋に生まれたんだ。正真正銘の庶民だよ

※以上、伝記などによく書かれている内容ですが、ヴェルディは自分の苦労を誇張する癖もあったようです。(作者より)
お金はなかったんだ……

それで音楽の勉強ができたの?

そこなんだよ!

ヴェルディはお金持ちのパトロンに助けてもらって、音楽の道を歩むことになったんだ。その人の娘と結婚もしたけど、結婚後も義父に生活費を出してもらってて、頭が上がらなかったみたい

パトロンに頼らざるを得ない、か。

そういうヴェルディだからこそ、ヴィオレッタのような女性に共感できたのかもね

その奥さんが、ジュゼッピーナ?
それが違うの。

最初の奥さんと二人の子供は相次いで死んじゃったんだ。まずは子供たちが病死。その後を追うように妻も病死。

えー!

家族がみんな死んじゃうって、半端じゃないよね……

そう。ヴェルディはものすごく落ち込むの。


その後『ナブッコ』というオペラで高い評価を得て、ようやく立ち直っていくんだけど、その頃に出会ったのがジュゼッピーナだったんだ。

でも彼女はすでに三人の子持ち。しかもそれぞれの父親が違ってたみたい

え、なんかすごい女だな。

奔放な女だったのか?

実際のところは分からないけど、世間に冷たくされていたふしがあるので、そう思われても仕方がないところはあったのかも。

でもこの二人、十年もの同棲を経て結婚しているから、やっぱり真剣だったんじゃないかな。


そしてここが重要なんだけど、ヴェルディは訳ありの彼女をひたすらかばってたの。さんざんお世話になった義父が健在だったから、気を遣ってなかなか結婚できなかったんじゃないかと言われてるよ

なんか、小デュマの話に似ているような…
そう、似たような構図かも!

愛し合っているのに結婚できない。まさにそういう時に、ヴェルディは『椿姫』の舞台を見たんだね

それは衝撃だっただろうね~。どう見ても他人事じゃないもん
ヴェルディがどれほど『椿姫』に感動したか。

それは帰国後、一気呵成にオペラを仕上げたことにも表れているんじゃないかな

小説とオペラとでは、話が同じなの?

オペラは、小説の重要なシーンをピックアップして作られてるの。

だから大筋では同じだけど、違う点も多いよ。


特に大きな違いがあるのはラストシーン。

だけど、それを話してしまうとネタバレになるので、まだ伏せておきま~す!

ではでは、第三幕を見てみましょう!
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