第46話 婚礼間近の朝まだき

文字数 1,809文字

ではでは、お待たせしました。

オペラ『フィガロの結婚』が始まりまーす!

参考:小瀬村幸子訳『オペラ対訳ライブラリー フィガロの結婚』音楽之友社
第1幕 第1景
城内の、がらんとした部屋。

フィガロは物差しを手に何かを測っています。

スザンナは鏡を見ながら、花飾りの帽子を試着しています。

5……10……20……30……

36……43……

部屋の計測をしている(?)のに、どさくさに紛れてスザンナに近づいていき、

彼女の胸やお尻に触るフィガロ。


帽子に夢中のスザンナはその手を振り払い、試着を続けます。

ああ、うれしい! あたしにぴったりみたい。

ちょっと見てよ、愛しいフィガロ!

うん、似合うよ、ハニー!

このきれいな帽子、君のお手製だとはね。

ああ婚礼間近の朝まだき

僕のような花婿には最高にスウィートさ

と言っても、帽子そのものには興味のないフィガロ。

ごまかしつつ、再びスザンナを抱き寄せます。


幸せいっぱい。抱き合って、チュッチュっとキスをする二人。

キャハハー(笑)!
おいおい、のっけから何なんだよ、この二人
フィガロってば、触り過ぎでしょ!
結婚間近で、有頂天になっている二人です。

微妙に会話が噛み合っていないのは、ご愛嬌……っていうか、恋人同士ってこんなもんかもね

2004年、パリのシャンゼリゼ劇場で行われた公演より。

この会場はクラシックコンサートによく使われるそうですが(特にストラヴィンスキーの『春の祭典』が大スキャンダルを巻き起こしたホールとして有名)、年に3回だけオペラを開催するそうです。

何を測っているの?

あたしの大事なフィガロちゃん!

この場所にうまく収まるか、確かめてるんだよ。

伯爵様が、僕らにベッドを下さるからね

ベッド

スザンナは、すっと笑顔を引っ込めます。

……この部屋に?
そう、僕らにこの部屋を与えて下さるんだ。

伯爵様は気前がいいよなあ

スザンナは急に不機嫌になってしまいました。

この部屋が気に入らなかったようですが、フィガロにはその理由が分かりません。

なぜ嫌なんだ? ここはお城の中で一番便利な部屋じゃないか
分かってくれないの?

あたしはスザンナ、あんたは馬鹿!

ありがたいね。そんなに褒めないでくれ!
イチャついてたかと思ったら、今度はプチ喧嘩かよ
「あんたは馬鹿」って、スザンナもなかなか言うね~
いつの時代も、女性には男性が鈍感に見えちゃうんだな~(笑)。


ちなみにフィガロは、最も低い男声「バス」の役。

オペラでは声域でキャラクターを説明しているところがありますが、フィガロの場合は「真面目」で「鈍感」という感じですね。

上記の会話部分。こちらの動画は映像なしですが、日本語字幕がついているので分かりやすいです。

速い会話に、チェンバロの伴奏が付いているのを聴いてみて下さい!

会話とチェンバロの音、お聞き頂けたでしょうか?

物語を進め、言葉を聞き取りやすいように伴奏を控え目にしたものです。

これを「レチタティーヴォ・セッコ」といいます。

モーツァルトはレチタティーヴォ・セッコの妙手なのです!

ちなみに会話が激してくると、オーケストラ伴奏の「レチタティーヴォ・アコンパニャート」に切り替わっていきます。
なぜかこの部屋が気に入らないスザンナ。

フィガロはちょっと考えてみろと言い聞かせ、この部屋の利点を強調します。

例えば……

奥方様が「ディンディン」と鈴を鳴らして君を呼んだら、

一足で駆け付けられる。

それからお殿様が「ドンドン」と足を踏み鳴らしたら、

僕はひとっ飛びで御用を足しに行ける

スザンナはむっとしたまま、答えます。
そうね。

朝方にお殿様が「ディンディン」とあなたを呼んで、少しばかり遠くへやって。

その後は悪魔とともに、「ドンドン」とやって来るわ。あたしの所へ。

それもひとっ飛びで、ね

アメリカ、メトロポリタン歌劇場の『フィガロ』。

映画監督リチャード・エアさんは、最近はオペラ演出を旺盛に手掛けているようです(前に引用させて頂いた『カルメン』の動画もリチャード・エア演出でした)。一見地味ながら、センスの良さが際立つ舞台です。

『フィガロ』も演出によって舞台セットや衣装がガラッと変わりそうだね?

ど派手なフィガロも見てみたいな~

そうなの。この演目は特にファンタジー風でもモダンでも応用が利くので、様々な雰囲気で演じられているよ。違いを見比べるのも楽しいね!


引用する動画は、なるべくバリエーション豊かにしたいと思っていますが、うまく見つからなかったらご容赦を~

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