第50話 女の喧嘩の二重唱

文字数 1,304文字

第1幕 第4景
バルトロとマルチェッリーナが悪だくみをしているところへ、伯爵夫人の洗濯物を持ったスザンナが戻ってきます。
まだすっかり負けたわけじゃなし。

私に希望は残っていますよ

んまっ。

あの生意気スザンナが来る。この私がお相手してやろう

スザンナに気づかぬふりをするマルチェッリーナ。
あのお人よしの真珠(※)は、彼女と結婚したいんだろうけど
「真珠」は完璧な美しさを意味しますが、ここでは皮肉を込め「ごろつき、ろくでなし」という反義語で使われています。
後方で、はっとするスザンナ。
あたしのこと言ってるわ
でもフィガロには結局、それ以上のことは望めないのよ。

彼にはお金がないもの。世の中は万事、金次第だからね

(何て言い草なの! でも幸いなことに、お城の誰もが知ってるわ。あのおばさんがどれだけ評判が悪いか。ここは慎ましやかにしておこう)
よしよし。分別があるじゃない。

大人しくして、よくできた子だこと。

その上、お殿様の気を引くような態度を取ってるんだもんね~

(ム、ムカつく~(怒)!

でもここは、退散した方が良さそう)

可愛い花嫁さんだもんね~
お互いに無視したまま部屋を出て行こうとした二人。

しかし同時にドアの所へ行ってしまったため、そこで鉢合わせとなります。


嫌味たっぷりにお辞儀をするマルチェッリーナ。

さあ、お仕えさせて下さいませ、輝くばかりの令夫人
スザンナも嫌味を込めてお辞儀を返します。
あたくし、それほどに勇ましくございません。

ご辛辣な令夫人様

(お辞儀)

いえ、そちら様がお先ですよ

(お辞儀)

いえいえ、そちら様です

二人は同時にお辞儀をします。
わたくし、自分の本分をわきまえております!
無作法は、致しませんわ!
(お辞儀)

ご新婦様!

(お辞儀)

誉れ高い令夫人様!

(お辞儀)

伯爵のいいお方!

(お辞儀)

スペイン中の、憧れの方!

そのご器量!
そのお召し物!
そのご身分!
そのご年齢!
年のことを言われたマルチェッリーナは激高します。
よくもまあ、やってられないわ!
怒り狂って出て行くマルチェッリーナを、スザンナは冷ややかに見送ります。
老いぼれの巫女様、笑わせますこと
一人につき、5回ずつか?

お辞儀の回数

女同士の喧嘩って、いつの時代も変わらないね~。

こうなると、男はコソコソと逃げ回りたくなるんだなあ。バルトロはどこかへ行っちゃったよ

こちらは1976年のオペラ映画『フィガロの結婚』。

スザンナを演じているのは、ミレッラ・フレーニさん。

『椿姫』の動画では死の直前の悲痛な姿でしたが、こちらはコミカルな表情ですね!

第1幕 第5景
マルチェッリーナが去った後、スザンナは思い切り「イーっ」と顔をしかめます。
あっちへお行き、学問婆さん! 横柄な女博士さん!

少しばかり本を読んだからって、あのババア、伯爵夫人のことまでいじめやがって!

慌ただしく、少年ケルビーノが飛び込んできます。
え~ん。スザンナ~!!
何よ、あんた。何のご用?
あ、ほんとだ~。

ケルビーノは女性歌手が演じてる~

女性が演じる少年ケルビーノが、後で「女装」をさせられたりするから、さらにややこしくなるんだ(笑)。

彼はスザンナにあることをお願いしに来たのですが、その内容は次回で語って頂きましょう!

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