第68話 何とビックリ七重唱!

文字数 1,730文字

ケルビーノの軍隊入りの件が落着し、ほっとしたのもつかの間。

今度はマルチェッリーナ、バルトロ、そしてバジリオが、つかつかと入ってきます。

公正であられます領主の伯爵様
わたくしどもの話を
即刻、お聞き届け頂かねばなりません!
待ってましたとばかり、伯爵は大喜び。
(独白)

この三人は、私の仇を討ちに来てくれたんだな。

これでようやく逆襲ができる

スザンナ、伯爵夫人、フィガロの三人は震えあがります。

敵は一気に四人になりました。迎え撃つ方策は見つかるのでしょうか?


何とか伯爵に取りすがろうとするフィガロ。

あれは三人の愚か者。三人の無分別な者どもです。

一体何をしに来たのでしょう?

言ってみましたが、無駄です。

伯爵は新たにやってきた三人の味方なのです。

静かに。騒ぐでない。

各人、思うところを述べるが良い

(フィガロを指さし)

この者はわたくしと、結婚の約束を取り交わしました。

従いまして、この契約の履行を要求するものでございます

スザンナ、伯爵夫人、フィガロは驚天動地。

(フィガロだけ、借金の時の契約書を思い出してドキっ)

三人、声を揃えて言い返します。

何だって! いい加減なことを言うな!
お? 作者め、公式アイコンでは表現が追い付かず、ついにシルエット画像を出したな
これ静かに。裁くのは私だ
わたくしめは彼女の弁護士に選ばれましたので、

適法なる要求をば明示すべく、ここへ参っております

フィガロたち三人、また叫びます。
あいつは詐欺師です!
これ静かに。裁くのは私だ
セビリア中に知られた人間である私は、証人としてここへ参りました。

金銭の貸付により、この結婚は契約されたものにございます

あれは三人の変人どもです!
では調べてみよう。

契約書を読むといたそう。すべては法規に従い、運ばねばならぬ

不利な証拠を突きつけられた上、裁判官(伯爵)が原告側のみに肩入れしているという、何とも不公平な裁判が始まってしまいました。

ここから4対3の合唱の掛け合いが始まります。

つまり、七重唱! 聞きどころにして、超難曲として知られます。


以下、左側の4人のシルエットは、マルチェッリーナ・バルトロ・バジリオ・伯爵。

右側の3人は、フィガロ・スザンナ・伯爵夫人です。

何と見事な一撃!

何と見事な成り行きか!

こちらは困った

こちらは驚いた

あの者ら皆、失望しているぞ
絶望した。

目が回りそう

いずれか我らに恵もたらす神が、

ここへ彼らを(我らを)寄越されたのだ

間違いなく、誰か地獄の悪魔めが、

ここへ彼らを寄越したのだ

高笑いする悪役4名と、絶望するフィガロたち3人。

20分にも及ぶ、長大な第二幕フィナーレ曲の中で、ラストを飾る部分です。

一人が間違えると、次々と間違いが連鎖……ということも(練習では)あるのだとか。というわけで緊張感たっぷりの曲でもあります。

七人の息がピッタリと合ったこの歌をぜひご堪能ください。

早口言葉みたいだな
7人がそれぞれ、好き勝手なことをしゃべってる(笑)!


しかし別々のセリフが同時進行、というのは、本当にオペラならではの表現だね。

小説ではもちろんだけど、演劇やミュージカルでも見ないような気がする

(※特殊な例ではあるそうです)

演劇などではセリフを聞き取れるようにしておかないと、観客が物語について行けなくなるからね。


オペラの場合、セリフで細かい情報を伝えるよりも、音楽で雰囲気を伝えるのが優先。

その点ではやっぱりオペラは「演劇」じゃなくて「音楽」なんだな~(ちなみにオペラのお客さんは、一般的に「観客」ではなく「聴衆」と呼ばれます)

だけどさあ~、物語の情報が伝わらなかったら、「聴衆」はやっぱり理解に困るんじゃないの?
確かにそこ、気になるよね(笑)。

だけど物語にリアリズムが求められるようになったのは、大まかに言えば19世紀以降のこと。


オペラの演目の多くは古いものなので、今の感覚とはギャップがあるんだよ。そこを埋めていくのが、演出の役割だね

だから面白い演出がいっぱいあるんだね!
さてさて。

フィガロは借金のために、マルチェッリーナと結婚しなければならないのか⁉


と不安を抱かせたところで、第2幕は終了。

小休止の後、第3・4幕はペースを上げてご紹介する予定です。

フィガロたちの運命がどうなるか、ぜひ今後も見守って下さい!

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