第40話 号泣!フィナーレ・ウルティモ……
文字数 2,374文字
近くの教会に行くことも叶わぬ自分の体力。ヴィオレッタは厳しい現実に打ちひしがれます。
ここで歌われるのが「こんなに若くして死ぬなんて」という曲です。
ヴィオレッタの死は免れない。
アルフレードも悟りますが、到底受け入れられるものではありません。首を振り、焦ったようにヴィオレッタを励まします。
「こんなに若くして死ぬなんて」。
アメリカのルネ・フレミングさんは、ソプラノ歌手として「当代随一」とも評される方です。
メトロポリタン歌劇場の映画館配信「METライブビューイング」では、解説と案内役として登場することも。
グランヴィル医師とアンニーナ、それからジェルモンが部屋に入ってきます。
苦しい息の下で、必死に笑顔を見せるヴィオレッタ。
ヴィオレッタの病状が、ここまで悪くなっているとは知らなかったジェルモン。驚いて目を見開きます。
そんな父親を、アルフレードは涙の下から見つめます。
アルフレードが近づいていくと、ヴィオレッタは震えながら、小さな肖像画を差し出します。
アルフレードは受け取りますが、涙を振り飛ばすように激しく首を振ります。
ジェルモンも部屋の片隅で悲嘆に暮れています。
ヴィオレッタは、アルフレードに最後の言葉を残します。
……もしどなたか、慎ましく清らかな乙女があなたに心を捧げたなら、
どうか花嫁にしてあげて。
そしてその方に、この絵姿を。
ある人からの贈り物だと伝えて。
その人は天の高みで、二人のために天使たちと祈っていると……
泣き叫ぶアルフレード。
そのとき、ヴィオレッタは急に眼を開け、ゆらりと立ち上がります。
ヴィオレッタの異様な姿。全員、固唾を飲んで見つめます。
全力で喜びを叫ぶヴィオレッタ。
しかしその直後、くずおれます。
アルフレードが抱き止め、その腕の中でついにヴィオレッタは息絶えるのです。
華やかなノベデイ劇場を後にし、駅に向かう三人。
さっきまで鼻水をすすり上げていたクッキーちゃんも、ようやく機嫌を直してくれました。
そこが原作とオペラの大きな違い!
原作では彼女の遺品が競売にかけられて、ようやく主人公はその死を知るんだよ。
でもヴェルディや台本作家たちは、見捨てられたまま孤独死させたんじゃヒロインがあんまり可哀想だから、せめてもの思いであの第三幕を作ったんじゃないかな
これにて『椿姫』の章は、完結。
次の演目は、年が明けてからの公開を予定しています。
その前に年内は「おまけ」として、ヴェルディの他のオペラをちょっとだけご紹介する予定です。よろしくお願いします(作者より)。