第34話 "Scena Della Borsa(財布の場面)"

文字数 1,984文字

このままでは、ドゥフォール男爵がアルフレードを殺しかねないと思ったヴィオレッタ。

こっそりアルフレードに会い、今すぐ帰った方がいいと警告したところです。


すると、アルフレードはこんなことを言い出しました。

帰ってやってもいいよ。

君が僕に付いて来るならね

唇を噛み締めるヴィオレッタ。

それはできません。ジェルモンとの約束があるからです。

それは絶対にできないの。

お願い、汚れた私の名は忘れて。

これきり、私に構わないで。

あなたとは、別れると誓ったんです

誰に誓ったんだ
その権利をお持ちの方に
ドゥフォールか?

彼を愛しているのか?

(ここは、嘘をつくしかない)

ええ、そうよ

この答えに、アルフレードは怒りを爆発させます。
う~ん。ヴィオレッタはジェルモンをかばっているだけなのに……

アルフレード、分かってよう~

アルフレードは、単細胞なのか?

性格的には、直情径行だよね。このアルフレードの怒りをどんな風に表現するかも、演出によってかなり異なるよ。


そして、次が有名な「財布の場面」(マネー・シーン)となります!

激高し、人々を呼び集めるアルフレード。
みんな、ここへ集まってくれ!
どうした?

何事だ

(ヴィオレッタを指差す)

この女が誰で、何をしたかご存知か!

アルフレード、やめて!
この女は僕を愛したために、全財産を手放した。

愚かな僕は、それに甘んじた。


しかし遅くはない。この身の汚名は雪いでやる!

皆さんをお呼びしたのは、証人になって頂くためだ
アルフレードの懐には、先ほどの勝負でせしめた札束が入っています。

彼はそれをわしづかみにし、人々の前に掲げます。

何が起こるのかと、震え上がるヴィオレッタ。


アルフレードは、ヴィオレッタにお金を投げつけます!

これで、借りは返したぞ!
ひらひらと舞う、大量の紙幣。
……!
公衆の面前で全身にお金を浴びる。これは娼婦として断定されたことを意味します。

愛する人から最大の侮辱を受けたヴィオレッタは、あまりのショックにその場で倒れてしまいます。


こうなると、ドゥフォール男爵も黙っていられません。アルフレードの足元に白手袋を投げつけます。これは決闘の申し込みを意味します。

他の人々も、アルフレードを責め立てます。

婦人に対して、何という振舞い

卑劣な男、許してはおけぬ

さあ、出て行って頂こう。

婦人の心、これほど傷つけるとは

我々みんな、耐えがたい

倒れたヴィオレッタの元へ、フローラとグランヴィル医師が駆け付け、介抱します。

それを見つめながら、とんでもないことをしてしまったと、ようやく少し冷静になるアルフレード。


そこへ、今になって息子に追いついたジェルモンが入って来るのです。

ジェルモンはちょうど、今の出来事を見ていました。

お前は皆に軽蔑されたが、それも当然だぞ
呆然とするアルフレード。
怒りのためとはいえ、婦人を傷つけるとは


これが私の息子だと? とてもそうは思えぬ

これがアルフレードだと? 私の息子はどこだ

僕は何ということをしてしまったんだ!

裏切られた愛と嫉妬。僕は絶望してしまったんだ

あのままでは、諦めきれなかった。

でも怒りをぶちまけた今、僕の胸には激しい後悔が

アルフレードが落ち着きを取り戻すと、人々の攻撃は収まりますが、本人の後悔は変わりません。
お気の毒に。

あなたの気持ちはよく分かります。

さあ、涙を拭いて!

僕は何てことを……
意識を取り戻したヴィオレッタ。

どうにか起き上がり、一人寂しくつぶやきます。

アルフレード。すべては愛のためなのよ。


あなたは知らない。愛がどれほどのものか。

あなたに軽蔑されてまで、その証を立てるほどのものとは

けれど、とヴィオレッタは続けます。
いつか分かる時が来るでしょう。どれほど私が愛していたか。

その時、神様があなたを後悔の念からお救い下さいますように

私は死んでもなお、あなたを愛するでしょう。

息絶えてもなお、あなたを愛するでしょう。

それぞれの思いが交錯するように歌われ、第二幕のフィナーレとなっていきます。
その悲しみに、同情します
怒りに任せた自分が悔やまれる……
私は彼女の心を思うと辛い
死んでもなお、あなたを愛します
彼女と我々への侮辱、私の手で……!
こちらは、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場の公演から。

ヴェルディはまさにこの劇場のために『椿姫』を書き、1853年の初演もこの劇場で行われました(※建物は1990年代に火災によって消失。その後再建されています)。

お金を浴びる……確かにひどい侮辱だね。

あんなに紙幣が散らばって

誰も、拾わないんだな?
ここにいるのは、お金に困っていない人たちなんだよ

しかし、これから決闘か。

一応、アルフレードも反省してるからなあ……

男爵、許してくれないかなあ?

どうも許してくれなかったみたいなのね。

決闘シーンは描かれないんだけど、確かに行われるの。


果たして、ヴィオレッタをめぐる二人の男性がどうなったのか。

それは第三幕で分かります。

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