第41話 『アイーダ』

文字数 2,478文字

さてさて、このチャットノベル。幸いにも読んで下さる方がいらっしゃったので、ここまでやってこられました。本当にありがとうございます!


しかし、そもそもノベルデイズは音楽のサイトではありません。どこまでこの話題で引っ張れるのやら……(と、ここの作者が気をもんでおります)

え、何? もしかしてもうおしまい?
いやいや、まだ終わりませ~ん(笑)。

でもちょっとだけお断りしておくことがあるの

もったいぶるなあ
このサイトには、「物語」に強い興味を持つ方がたくさんいらっしゃいます。なのでオペラを物語の側面からご紹介しようというのが、このチャットノベルの試みなのです
それでいいじゃん。何か問題でも?
いやあ、それが。

前にもちょっとお話しした通り、オペラの物語は不完全。中には荒唐無稽としか言いようのないものもあるんだ

あ。

作者は自分の力不足を棚に上げて、イマイチ感を誤魔化そうっていう魂胆だな?

うるさい。おだまり、サバ君よ(と、やっぱり顔を出す作者)。
しかし不完全な物語が、どうして「名作」と呼ばれるんだろう?
歌と音楽の力が圧倒的だから、だね。それで物語の欠点をカバーできてしまっているんだ
確かに、『カルメン』も『椿姫』も、ツッコミどころはいろいろあったなあ

あの二作は、まだ物語がしっかりしてるの(小説が基盤であるだけに)。それでもなお、「あれ?」「おかしいな」と思うところはあったでしょ?

この後に出てくる作品は、いきなりオペラとして作られたものもあるので、余計にそうだと思って下さい。


そういうわけで、音楽に詳しい方の中には、物語からオペラに入るのはお勧めしない、という人も多いんだ。音楽系サイトなどでは、あらすじ紹介はごく簡単に。むしろ楽曲紹介に力を入れているようです

ふうむ。とはいえ、まずは物語を知りたいと思うけどな?

自分で小説を書くぐらいの人は、余計にそうだと思うよ

その曲がどんな場面の何を表しているのか、分かった方が楽しいよね
まさに音楽と物語の相乗効果がオペラの醍醐味だよね。なのでここでは、物語からのアプローチを続けます。


だけど、この先は少〜し難易度が上がってくるかも、ということだけご了承ください

え、難しいのはちょっとな〜
いやいや、別に大丈夫。

ただ物語が「あれ?」な分、オペラの世界の約束事や、時代背景の説明が多めになります

分かるようになっているかが大事だね
ヴェルディって、「オペラ王」と呼ばれてるぐらいなんでしょ?

『椿姫』以外の演目はどうなの?

まさにそこです!

ヴェルディは他にもオペラの傑作をいろいろ残しているの。人間の声というものが、いかに劇的な効果をもたらすか。そこをよく分かっていて、自在に操れる人だったんだろうね。


だから『椿姫』のみでヴェルディを終わらせるのは、あまりにもったいなくて……

でも、このチャットノベルの方がいつまで続くか分かりません。読者様に飽きられたら、そこで打ち切りになるでしょう(またまた作者より)。
というわけで、ヴェルディの他の演目について、今のうちにご紹介しておきます。


二人は『アイーダ』って聞いたことある?

あ、サッカーのやつ?
正解!

サッカー選手の入場時、オペラ『アイーダ』の凱旋行進曲の一部が使われてるね

あー、知ってる! 中田英寿選手がイタリアで聴いて気に入ったんでしょ。それを知ったサポーターが、応援のために歌い出したのが始まりだって
日本のサッカーに『アイーダ』が持ち込まれたルートは、他にも複数あるみたいだね。

とにかくイタリアではもともと応援歌になっていた曲です。


ヴェルディはイタリアの象徴みたいな作曲家だし、オペラの中ではまさに英雄をたたえる場面の曲だし、選手を応援するのにぴったりの曲なのかも

『アイーダ』って、イタリアのお話なの?
じゃなくて、古代エジプトを舞台にした異色オペラなんだ
え~、古代エジプト⁉

そう。当時のエジプト総督イスマーイール・パシャの注文で作られたの。


19世紀も後半になると、ヨーロッパでは絶対的な権力を持つ王様がいなくなって、たっぷりお金をかけたオペラは作りにくくなっていたの。だけど旧体制が残っていたイスラム世界では逆に可能だったみたい。エジプトは国家の威信を賭け、大金を払ってヴェルディに制作を依頼したんだって!

エジプトで本当に起こった話なの?
史実に基づいてはいないよ。物語の中心は恋愛なの。

だけどそこにエジプトとエチオピア、二つの国の興亡をからめてあるので、壮大な戦記物を見ているかのようなんだ。引き裂かれた男女の運命が、スケール感たっぷりに描かれるよ。

ヴェルディの音楽がいかにドラマチックか、『椿姫』以上に感じ取れるかも!

※物語そのものは史実と無関係ですが、原案は考古学者のオーギュスト・マリエットが作成。エジプトと敵対する「エチオピア」は、今のスーダンの辺りに栄えたクシュ王国をモデルとしています。またアイーダの父、エチオピア王のアモナズロは、紀元前3世紀のクシュ王アマニスロがモデルです。
「凱旋行進曲」は、第二幕第二場に出てきます。

エジプトの将軍ラダメスがエチオピアとの戦争で勝利をおさめ、凱旋帰国する場面です。

こ、これは劇場で見たいかも〜。超豪華な舞台セットのやつね
やけにかっこいいファラオだな
もっとファンタジーっぽい演出もあるけど、実際の遺跡や壁画を参考にしたものだと、古代エジプトにタイムスリップしたような気分になれそうだね。


また過去にエジプトで上演された時は、本物の遺跡を使って行われたこともあるようです(遺跡の保全の観点からは疑問ですが)。

上の動画は曲の前半部分のみなので、サッカー入場に使われているフレーズは出てきません。

こちらの動画でお聞きください!

この部分、オペラの舞台では「アイーダ・トランペット」という特別な金管楽器で演奏されます。

トランペット奏者は、この時はオーケストラピットではなく、衣装を着けて舞台上で演奏するのが慣例です。

こうした部分も、本物の舞台を見に行く醍醐味ですね!

ヴェルディの作品については、さらに他にもご紹介したいものがあります。次回もぜひお付き合い下さい!
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