第8話 スター登場「闘牛士の歌」

文字数 1,252文字

皆さーん。パスティアがそろそろ閉店だって。

お気を付けてお帰り下さーい

いやいや、まだ帰らんぞ。夜はこれからだ!
そうそう。まだ遊び足りないね
困惑するパスティア。でもそのとき、外から人々の大合唱が聞こえてきます。
バンザイ、バンザイ、闘牛士!
バンザイ、バンザイ、エスカミーリョ!
ちょっと!

グラナダの闘牛士、エスカミーリョが来てるわよ!

えっ。

あの大スター、エスカミーリョのことか!?


ちょうどいい。ここへ招き入れたまえ!

各地を巡って興行をする闘牛士たち。

今はセビリアに来ているようです。

じゃ、僕が呼んできます!

モラーレスが張り切って戸口に駆け寄り、扉を開けます。

するとそこには、大勢のファンに取り囲まれたエスカミーリョが。


超絶色男の登場です!

(帽子を取って軽く挨拶)

キャー!!

(店内の女性たち、失神寸前)

嘘でしょ、嘘でしょ!

この店にエスカミーリョが来てくれるなんて!

か……かっこいい……

(ま、いっか……。

軍人たちが居座るのは困るけど、店に有名人が来てくれるのはうれしいね)


どうぞ。こちらをお飲みください、闘牛士さん!

(とグラスを差し出す)

諸君の乾杯を、謹んで受けよう
ここで歌われるのが「闘牛士の歌」。

オペラ『カルメン』を代表するような名曲です。

皆さん、目がハートになってますね~
これまた、こんなにモテる男がいるのか~!?
このシーンも超有名なんだ。

颯爽と現れた大スターの姿に、みんなが魅了される。しかも勇ましく、力強い歌声。鳥肌が立つような場面です。ここは最高にかっこいいバリトンに演じてもらいたいですね

軍人と闘牛士はウマが合うもの

なぜってどちらも戦いが楽しみだから!

全員、息もできないほどにエスカミーリョを見つめています。
闘牛場は満員 お祭りの日

闘牛場は満員 上から下まで……


なぜって今日は武勇のお祭り

血気さかんな人々のお祭りだ


さあ。構えはいいか! ああ!

二行ずつ韻を踏んだこの歌の形式を「クプレ」と呼びます。

(英語のカップルに相当)

トレアドール、構えはいいか

トレアドール トレアドール


だが忘れるな 戦いながらも忘れるな

黒い瞳がお前を見ている

恋がお前を待っている

ああ、ステキ……

私を恋人にしてもらえないかな
私よ、私!

しかし、闘牛士のハートを射止めたのは、やっぱりダントツ美人のカルメンでした。

別嬪さん。君の名前は?
カルメン。カルメンシータ。

同じことよ

エスカミーリョはカルメンを口説きますが、どういうわけか彼女は動きません。

こういう時は引きずっちゃいけない、と粋な男は知っています。


闘牛士はさっと身を引き、店を去って行きます。

むむ。大スターに誘われたのに、カルメンは断った。

もしかしてそれは……

ホセのことが好きだからだ!

カルメンはホセに助けられたことを、忘れてはいなかったんだね

そういうことだね! この後、営倉から出されたホセが、カルメンに会うために店にやってきます。


だけどその前に、ある話し合いが持たれるの……

もしかして、パスティアが心配そうにしてたのと関係ある?
その通り!

次回は盗賊団による「ヤバい」密談の話でーす

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