第52話 やばい、伯爵が来た!

文字数 1,735文字

第1幕 第6景
一人で興奮しまくっていたケルビーノ。

一度は部屋を出て行こうとしましたが、すぐに戻ってきます。


間の悪いことに、彼が誰よりも恐れるアルマヴィーヴァ伯爵がここへやってきたのです!

まずい。出られない。

ああ、もう駄目だ!!

というのも、女性に恋をしまくっているケルビーノは、昨日バルバリーナとの逢引現場を見とがめられたばかり。

今ここで見つかったら、今度はスザンナと逢引していたと誤解されてしまいます。


ケルビーノは椅子の後ろに隠れ、スザンナはその上から見えないように布を掛けます。

どどど、どうしよう~。

よりによってケルビーノと二人きりの時に、伯爵がいらっしゃるなんて!

あたし、悲惨だわ

伯爵は当然のように部屋に入ってきます。
スザンナ。いかがした?

そなた、うろたえているように見えるが

お殿様……お許し下さい。

こんなところを、人に見られてはなりません。後生ですから、お帰り下さい

出たな~、エロ伯爵!

お前、ケルビーノのことを叱れる立場じゃねえだろ

ここも注釈が要りそうだね。

西洋のお城では、男性の主人に仕える人と、夫人に仕える人とできっちり分けられていたの。スザンナは夫人に仕える立場なので、伯爵と二人きりでいるのは明らかに不自然なんだ。スザンナが「人に見られちゃまずい」と言っているのはそういう意味です

ちょっとだけだよ。

それでそなたを解放する。

お聞き

伯爵は優しくスザンナの手を取ります。

あからさまに振り払うことのできないスザンナ。

それでも必死に逃れます。

何も聞きません!
一言だけだ。

そなたも知る通り、私は国王よりロンドン駐在大使に指名された。で、供として連れていくのは、フィガロということに決めたのだ

ここで「秘密の大使夫人」に任命されてはかないません。

スザンナは何とか恐ろしい任務から逃れようと画策しますが……

お殿様。恐れながら、お願いが……
言われるや否や、伯爵は大興奮!

スザンナの頼み事とあらば、何でも聞いてやるつもりです。

申せ、申せ。我が愛しの者よ。

そなたは一生、私に権利を行使することができるのだぞ

伯爵はスザンナを抱き寄せ、再び彼女の手を取ります。
さあ、この私に頼み、求め、命ずるが良いぞ
放して下さい、お殿様!

そんな権利、頂戴いたしません!

顔を歪めるスザンナ。
欲しくもないし、聞く気もありません。

ああ、不幸な私!

いや、違うぞ、スザンナ。

私はそなたを幸福にしてやりたいのだ

スザンナが明らかに嫌がっているのに、伯爵はしつこく口説き続けます。
スザンナ。私の気持ちは知っておろう。バジリオがそなたにすべて語っておるからな。


なあ聞いてくれ。

日が暮れる頃、庭で私と会ってくれないか?

私はそなたの好意に報いるであろう

そのとき、外で声がします。

城に出入りの音楽教師、バジリオのようです。

さてさて、夫人の所にいなかったということは……

伯爵はどこにいらっしゃるのかな?

(と言いつつ、スザンナの所が怪しいと見てやって来ました)

(ちっ。邪魔が入った)

誰の声だ?

きゃー、大変!

バジリオ先生が来たわ

(こんなところを見られたら、結婚前に伯爵と逢引をしていたと誤解されちゃう)

応対に出なさい、スザンナ。そして誰も入らせぬように
伯爵の方も、こんな所を見られたくないのです。

二人とも慌てふためき、部屋を見回します。

わ、私はこの椅子の後ろに隠れることにする!
ダメで―す(泣)!!

(だってそこにはケルビーノが隠れているんだもん)

いいから。

あいつを立ち去らせてくれ!

と言いながら、本当に椅子の後ろに入り込んでしまう伯爵。スザンナは止めようとしましたが、間に合いません。
ああん、もうっ!

何をなさいます!

あわやケルビーノは見つかったか!

と思いきや、間一髪。身軽な少年はするりと抜け出て、椅子の前に回り、今度は椅子の上に乗り込みます。


スザンナはケルビーノを部屋着で覆って隠します。

な……何というか、本当にドタバタだねえ(笑)
いくらうまく隠れていたって、普通、見つかるよな
ちょろちょろと動き回れる、身軽な少年の雰囲気を持った人が、ケルビーノ役にふさわしいかもね
こちらは第一幕全体の動画です(単独の動画が見つからず、すみません)。

今回のお話に対応する部分は、31.00~32.55付近。スキンヘッドの伯爵が、強烈な印象です!

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