第64話 疑わないで(ここからフィナーレ曲)

文字数 1,575文字

第2幕 第6景
衣裳部屋のドアを叩き、激高する伯爵。
いい加減に出て参れ! 不埒な小僧め。

ぐずぐずするな!

そんなにお怒りになったら、あの子以上にわたくしが怯えてしまいます
この期に及んで、まだ逆らおうとするのか
何とか夫の怒りを解こうと、必死に言い訳をする伯爵夫人。

しかしその意図とは裏腹に、中途半端な言葉はさらなる誤解を生んでしまうのです。

わたくし、天に誓いますが、疑われるようなことはしておりません。

あの子は……

襟をはずし……胸をはだけて……

襟をはずし……胸をはだけて……

続けよ!

婦人の服を着せるため……
この恥知らずな女め!

思い知らせてやるぞ!

あんまりですわ。そんなにまでお疑いになるなんて
夫の強要に耐えきれず、けっきょく鍵を引き渡す伯爵夫人。
あの子は潔白だって、貴方もご存知のはず……
私は何も知らぬ。お前など、私の目の届かぬ所へ行ってしまえ!

お前は不実の女。悪行の女。

しかも私の名誉を汚そうとしておる

こうまで事態が悪化しては、もはやこれまでと観念する伯爵夫人。

夫婦関係は破局です。

分かりました。出て行きましょう。

それでも、わたくしは無実です

夫に信じてもらいたくて、必死にひざまずく夫人が痛々しいシーン。

この時代、横暴な君主は実際にいたんでしょうね。

ちょっとお~。伯爵ってばひどくない?

夫人は本当に何もしていないのに、マジで離婚する気か(怒)!

夫人も、もう少しちゃんと言い返せばいいのに
きっとそのぐらい、伯爵が怖い人だったんだよ。

だけど彼がひどいことを言えば言うほど、後で本人がつらくなってくることに注意。

伯爵夫人はもはや正気を保てていないので、スザンナからお仕置きしてもらいましょう!

そなたが不道徳であること、その顔に書いてある!

奴は死ぬが良いのだ。もうこれ以上、私を惑わせるでない

ケルビーノを殺すの?

ああ、盲目の嫉妬が、この人に途方もないことをさせてしまいます

とうとう衣裳部屋の扉を開ける伯爵!


しかし中から出てきたのは、取り澄ました表情のスザンナでした。

第2幕 第7景
伯爵夫妻は絶句します。

スザンナはあちこちにハタキをかけ、せっせといつも通りのお掃除。

……スザンナ……?
お殿様。その驚きようは何でございます?
たっぷりと皮肉を込め、スザンナは言いつのります。
さあ剣を取られて、お小姓を成敗なさいませ。

ここにほら、不埒なお小姓がおりますことよ!

(と言って、自分が両手を広げて見せる)

(独白)

やられた……!

頭がクラクラしてくる……

(独白)

どういうわけなの? スザンナがあそこにいるなんて

お二人は頭が混乱して、何が何だかって感じね! キャハハ(笑)!
そち一人か?

ケルビーノがいるであろう

衣裳部屋をご覧下さいませ。

ここに隠れておりましょうよ

見よう。見ようぞ。

中に隠れているのだろう

伯爵は中へ入ります。
はあ~。どうなることかと思った。

しかし伯爵のことは、もっと懲らしめてやりたいよ。

あいつはひど過ぎる。

この程度じゃ懲りねえよな、このおっさん
そうだよねえ(笑)。

次回、気を取り直した伯爵夫人にも、がつんと言ってもらいましょう!

よろしければ、こちらの動画もご覧下さい。

日本語訳をメロディーはそのままにボーカロイドで歌わせています。オペラとは違いますが、理解の手助けになりますよ

第2幕の「16曲 フィナーレ」全体を収めた動画です。全体では22分ほど。

最初の方が、今回の内容に対応した部分です。

~3.00あたりまでが、夫人に別れを言い渡すシーン(先ほどの動画と同じ)。

スザンナ登場後は、4.30あたりまで。

今回の場面は、伯爵と夫人の二重唱で始まり、そこにスザンナが加わって三重唱となりました。


次回はまだ三重唱で物語が進みますが、その次のお話ではもう一人加わって四重唱に。

さらにその次は五重唱に。

さらにその次は……

だんだんすごい構成になってくるので、何より歌をお楽しみに!


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