第4話 「ハバネラ」・「手紙の二重唱」
文字数 1,895文字
タバコ工場が、昼休みになったのです。広場の男たちは急にそわそわし始めます。
もちろん、男たちが手ぐすね引いて待っているのを知りながら……
にんまりと笑う、黒髪の美女。
男たちは待ってましたとばかりに、カルメンに群がります。
よろしければ、こちらの動画もぜひ! コンサート映像ですが、フランス語と日本語の歌詞が字幕で出るので、分かりやすいです。
歌手はウサギが大ファンの、エリーナ・ガランチャさんです。
実はこの曲、盗作疑惑があります。この曲を聞いたイラディエルという作曲家が、自分の作品と同じメロディーだと訴えたところ、ビゼーは借用を認めました。著作権のない時代ですが、悪いという認識はあったようです。ビゼーは民謡だと思い込んでいたとか。
でも聞いてみると、原曲は全く趣が異なります(長調で、明るいイメージ)。「ハバネラ」は短調で始まる、暗くドラマティックな曲なので、まったく別物と言って良いのではないでしょうか。悪女カルメンの性格や生きざまを表現できており、これ以上このシーンにふさわしい曲はありません。
だけど当のカルメンの視線は、自分のことなど見向きもしない一人の男に吸い寄せられていくのです。
(しかも、チュッとキス)
そして、その花をホセに投げつけます!
その通り。ホセの運命がここで決まってしまいました。
拾わなければ良かったのに……というニュアンスが、この後に続くオーケストラの切ないメロディーで表されます。
この時のホセの気持ちは、第二幕の「花の歌」で切々と歌われます
ここで歌われるのが、ホセとミカエラが故郷を懐かしむ「手紙の二重唱」。
先ほどの「ハバネラ」の不気味さと対照をなすような、穏やかで美しい旋律です。
この後も二人の故郷を思い出させるシーンでは、繰り返しこの旋律が出てきます。
これは「伝言」です。ミカエラのキスは、ホセのお母さんから。
お返しにホセは「お母さんに」と言って、ミカエラにキスを返すのです。
心からほっとしたように微笑むホセ。