第5話 カルメン逮捕と「セギディーリャ」

文字数 1,430文字

ミカエラの手から、ホセは母親の手紙を受け取りました。
これを読み終えるまで、待ってくれ
ダメよ。私がいなくなってから読んで。

また後で来るから!

焦った様子で、また走り去ってしまうミカエラ。

ホセは首を傾げ、その後ろ姿を目で追いますが、手紙を読んでその理由が分かります。


しんみりと目を閉じ、感慨にふけるホセ。

分かったよ……母さん。

ミカエラを僕の妻にします。僕だって彼女を愛しているんですから

しかしここで、タバコ工場から「キャー」っと悲鳴が上がるのです。


何の騒ぎだ!
ええっと、この強面のおっさんは誰だっけ?
スニーガといって、ホセの上官です(実は前にもちょっとだけ出てきてたの)。

ここで衛兵たちの取りまとめをしています。

スニーガは、バリトンよりさらに低い声、バスの役なんだ

不穏な音楽とともに、タバコ工場から女工たちがどっと飛び出してきます
助けて! 助けて!

聞こえないの?

何が起こったんだ?
女工たちは口々にわめき、スニーガに訴えます。

どうもカルメンと他の女工・マヌエリータが、口喧嘩の果てに取っ組み合いを始めてしまったようです。


女工たちはスニーガをはさみ、真っ二つに分かれてどっちが悪いと大論争。

おいおい、静かにしてくれよ~
女工たちは葉巻を作るため、小刀を持っています。

凶器があるだけに、危ない!

実際、カルメンはマヌエリータに怪我を負わせてしまったようです。

げげっ。カルメン、傷害事件を起こしちゃったの?
どうやらそのようだね
ほんと、素行の悪い女だな~。聞いて呆れるぜ
おい、お前。中に入って調べて来い!
はい!
ホセはタバコ工場へと駆けこんで行きます。
やがて、縛られたカルメンが、ホセに引っ立てられて外に出てきます。

やはりマヌエリータは怪我を負い、カルメンが加害者であることは間違いないようです。

スニーガはホセに、もっと詳しく取り調べをするよう命じます。

ところが……

ラララ……

切られようと焼かれようと、あたしゃ何にも話さないよ

歌うんじゃない!

(ったく、しょうのない女だな)

この女の逮捕状を作ってくる。お前はここで見張りをしてろ!
スニーガは怒りを露わにして立ち去ります。


二人きりになったカルメンとホセ。

ここでカルメンが怪しい動きを始めるのです。

ねえ。セビリアの城壁の近くに、いい店があるんだ。

あたしの友達の、リーリャス・パスティアのお店

(と言って、ホセに体をスリスリ)

セギディーリャを踊ろうよ

マンサーニャを飲もうよ

うるさい。黙れ!
だから、あたしを逃がしてくれたら、あんたの恋人になってあげるって言ってんのよ。


ねえ、あたしが欲しいでしょ? あたしと遊びたいでしょ?

超有名な、この誘惑の場面。

ここで歌われるのが「セギディーリャ」という曲です。

(セギディーリャとはスペインの詩型の一つで、さらにその詩を用いた民謡・舞曲を指します)

ええ~っ!

まさか……まさかだよね?

ミカエラちゃんがいるのに……

そのまさか、です!

だからこそ、ウサギは男性の皆さんに聞きたい。

あなただったら、この誘惑に耐えられますか?

いやいやいや、これはないだろ!?

冷静な男なら、まずこういう選択はしないぜ

やっぱりそうか……。


ま、多くの男性が、サバ君と同じ感想を持つかもね。

実際、ホセ役のテノール歌手にとって、この場面を演じるのはとっても難しいんだって。つい冷静さを失い、膝を屈してしまう男の性(さが)を、わざとらしくなることなく、自然に演じなければならないからね

その固いガードを突き崩すほど、カルメンの色香がすごいってことだね

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