第13話 「聞け、仲間よ」・「混ぜて!切って!」
文字数 1,729文字
第三幕
あれから数か月後。
激しく愛し合ったカルメンとホセでしたが、今ではすっかり倦怠期に入っているようです。
カルメンはあっという間にホセに飽きてしまいました。
そしてここは山の中。
山越えの密輸団が、いつも休息に使っている場所です。
暗闇の中、いくつもの松明が見えます。荷物を運ぶ人々と、銃をもって警護に当たる人々。
不気味な伴奏とともに、闇の世界の人々による、静かで勇ましい歌声が始まります。
こちらの動画は間奏曲から始まります。
このエロティックなバレエが表現しているのは、二人の愛と情熱ではないでしょうか。それは短い間に燃え上がり、やがて力尽きていきます。
そして「聞け、仲間よ」は六重唱の歌。
主要登場人物に加えて、合唱も加わった壮大な歌となっています。
人々が休息に入ると、ホセは一人じっと遠くを見つめます。
そんな彼を、カルメンが不満そうに睨みつけます。
これがチャンスとばかりに、積極的に帰宅を促すカルメン。
ホセはかっとなって言い返します。
ところでジプシーの女たちは、占いが大好き。
数人の女たちが、カード占いを始めます。
メルセデスとフラスキータの二人には、カードからそれぞれ幸運が告げられます。
ところが、カルメンには悲劇が予告されます。
カードはカルメンの死、次いでホセの死を暗示するのです。
さすがにショックを受けるカルメン。
「ジプシー占い」の多くは、タロットカードで行われるようです。
この当時のキリスト教徒には、占いやまじないに頼ることは表向きには禁じられており、ロマの人々の様子に一種の不気味さを感じていたようです。でもロマの占いは必ず当たるとも信じられていました。
ここで歌われるのが「混ぜて! 切って!」という歌です。
メルセデスとフラスキータが楽しげに語るシーンから、カルメンが厳しい運命を
受け入れる覚悟を示す、暗い後半部分への転換が見られます。
国境には三人の税関吏がいるらしいと情報が入ります。
カルメンたちは、これから自分たちが売春まがいのことをすると予告します。
ホセに対する当てつけです。
ホセにとって、これ以上の屈辱はありません。嫉妬に打ち震えます。
ダンカイロたちは先の道を確かめに出発し、ホセは一人、荷物番を命じられます。