第32話 「私達はジプシー。遠くの国からやってきた」

文字数 1,356文字

第二幕・第二場
ここはヴィオレッタの友人、フローラ・ベルヴォワの屋敷。

舞台上には、賑やかなパーティーの光景が浮かび上がっています。

今夜は子爵様主催の、仮装の宴よ
人々に愛嬌を振りまくフローラ。
ヴィオレッタとアルフレードも来るはずですよ。

招待状を出しましたの

(初めまして。フローラのパトロン、ドビニー侯爵です)

あの二人、別れたらしいぞ?

ヴィオレッタはドゥフォール男爵と来るだろう

ドビニー侯爵は異様に情報が早いですね!

ガストーネはアルフレードの友達なのに、何も聞いていないのでビックリ!

え!?

人々から驚きの声が上がります。

中でもグランヴィル医師は、ヴィオレッタを診察するために頻繁に二人に会っているので腑に落ちません。

昨日までは幸せそうでしたけど?
不穏な空気になりましたが、ここで舞台は一転。

余興として、楽しい舞踊が始まります。

タンバリンを手に入ってきた女性ダンサーたちは、ジプシーの娘に仮装しています。

私たちはジプシー女。

遠い国からやってきました

あ、この曲!

子供のピアノ教室に通っている頃、この曲を弾いたよ。

これも『椿姫』の中の曲だったんだ~♪

怪しげな短調で始まる、不思議な魅力のある曲だよね。

小さい子にも覚えやすいメロディーなのかも

手相占い、星占い

未来の運勢、占って差し上げます

女たちはまずフローラの手相を見ます
恋敵が多いですわ!
あらま、大変!
続いてドビニー侯爵。
これはよろしくない兆候ですわ。お身持ちが悪いこと!
え……!(結構ショック)
ホホホ、当たってるわ。

ご用心あそばせ

何だと! 濡れ衣だ
まあまあまあ、喧嘩はなしで、ね?

(常に調整役のグランヴィル医師)

物語の行く末を暗示するように、再び女たちが踊ります。
これまでのことより、これからのことを

過去がどうあろうと、未来にご用心!

今度は男性の踊り子たちによる出し物です。

闘牛士の姿に仮装して、いさましく部屋に入ってきます。

我々はマドリードの闘牛士!

腕っぷしは強く、目の力も強い

娘は言った。「一日で五頭の牛を倒せる? できたら私の身も心もあなたのものよ」

闘牛士は言った。「やってやろうじゃないか」


さあ五頭の牛と対決だ。

彼は見事、勝者となった。あっぱれ、これこそ愛の証し!

望みの褒美を、彼はしっかりと腕に抱いたとさ

パーティーは大変な盛り上がりで、踊り子たちと一緒に踊り出す貴族もいます。

性的なお誘いも(こっそりだけど)もちろんアリ!


男性の踊り子たちは、賭博の台を指してしめくくります。

ここの試合は、陽気な卓上の運試し。

さあ、勇ましく運試しを!

というわけで、『椿姫』にも舞踊のシーンが登場します。

実際に昔の貴族の屋敷で行われたパーティーでも、こんな余興が用意されていたと言われています。

出し物をいっぱいやるんだね~
客を飽きさせないように、フローラは前もってかなり準備をしていたんじゃないかな? 同じような余興は、第一幕のヴィオレッタのパーティーでも行われていたはずだよ
スペイン風の踊り……『カルメン』の真似してねえか?

『椿姫』の方が成立年代が古いってば(笑)! 当時はスペインのエキゾチックな雰囲気に、憧れみたいなものがあったんだろうね。


さて踊り子たちが言った通り、部屋の真ん中でガストーネたち遊び好きの貴族が賭博の準備をしています。

次回、この賭博で物語が急展開しますよ~!

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