第28話 「君のいない生活なんて」・「この恥辱」
文字数 1,664文字
第二幕・第一場
冬。パリ郊外の、ヴィオレッタの別荘にて。
狩りに出かけていたアルフレードが帰宅します。つまらなそうに、銃を召使いに渡すアルフレード。
もう三月になる。
ヴィオレッタは富も名声も、華やかな生活も捨てたんだ。
あんなに人々のお世辞を浴び、その美貌で男という男を服従させていたのに
今ではこの田舎の静かな暮らしに満足している。
僕のために、彼女は全てを捨ててくれたんだ
幸せで胸いっぱいのアルフレード。
しかしヴィオレッタの召使い、アンニーナが旅装でこそこそと戻ってくると、何かおかしいと気付きます。
アンニーナをしつこく問い詰め、アルフレードは事態を理解します。
ヴィオレッタは二人の生活費を捻出するため、自分の馬や馬車、その他の財産を処分していたのです。
一人になったアルフレードは、経済状況を把握していなかった自分を恥じます。
真面目なアルフレードは、ヴィオレッタのみに苦労を背負わせてしまった自分を激しく恥じ入ります。
ここで歌われるのが「ああ、この恥辱、悔やまれる」という歌です。
最後の部分、「この汚名はきっとそそいでみせる」という歌詞は何度も繰り返されますが、ここも後の伏線になっています。
アルフレードは慌ててジャケットを羽織り、パリへ出かけて行きます。
こちらの動画は二曲続けてのもの。イタリアのジュゼッペ・フィリアノーティさんはリリック・テノール(軽めで優雅さや甘さのある声質)の名手だそうです。
一曲目は、幸福の絶頂のアルフレードによる「君のいない生活なんて考えられない(燃えたぎるような青春の情熱を)」。
自分たちの生活実態を知るアンニーナとの会話をはさんで、
二曲目は「後悔してもし切れない(ああこの恥辱、悔やまれる)」。慌てて身支度を整え、パリへ向かうところまで。
男声は、まずは高さでテノール・バリトン・バスなどと分類されますが、さらに声質に応じて細かく分類されます。
テノールの場合、リリック・テノール、スピント・テノール、ドラマチック・テノールの順で軽い声質→重い声質となります。他にブッフォ・テノール、キャラクター・テノールなどがあります。作曲の時点で声質までが考慮されていることが多いので、歌手によってそれぞれ演じられる役柄が異なります。