第82話 『魔笛』

文字数 1,697文字

さてさて。

『フィガロの結婚』に劣らぬ人気を誇るモーツァルトのオペラといえば……

まずは『魔笛』だよね!

44話で触れた通り、『フィガロ』は「正統派」のイタリア語で書かれました。一応は、教養のある人が楽しむ作品だということ。それに対し『魔笛』は、一般大衆向けにドイツ語で書かれたジングシュピール(歌芝居)です。

ドイツ・オペラが盛り上がっていくのはモーツァルトの死後のことですが、『魔笛』はその嚆矢の一つと言っても良いのではないでしょうか。

「マテキ」って何だ?

魔法の笛ってこと?

そうそう!

物語は大雑把に言うと、王子様によるお姫様の救出劇なんだ。

危険な任務についた主人公のタミーノ王子に、身を守るために与えられるのが「魔笛」だよ

魔法と言うからには、ファンタジーのお話なのかな?
まさにファンタジーだね。

一応、舞台は古代エジプトってことになってるけど

古代エジプトっていえば、『アイーダ』もそうだったな
うん、あれとは全然違うんだ(笑)。

舞台セットにピラミッドとか神殿が出てくることはあるけど、こっちは完全におとぎ話のイメージだから

ちなみに主人公のタミーノ王子についてですが、台本に「日本の狩衣姿」と指定があるので、それに従えばこんなイメージだね
えー!!

これがオペラの王子様?

……モーツァルトとも、古代エジプトとも、結びつかねえ
ま、衣装や髪型は演出によっていろいろだから(笑)。


それから、この物語は単純な勧善懲悪ではなくて、途中で善悪が入れ替わってしまうところも特徴なの。

タミーノ王子が救出に向かうのは絶世の美女パミーナ姫。彼女は悪い神官ザラストロに捕らえられてしまったので、助けに行って欲しいというのが、姫の母親である「夜の女王」の願いだったんだけど……


夜の女王?

なんか、名前だけ聞くと怖い感じだな

その通り。

世界征服を企む悪者は、実は「夜の女王」の方だったの。神官ザラストロは、悪い母親から娘を守るためにあえて誘拐したんだよ

というわけで、超有名なこのアリアを聞いてみましょう。

『魔笛』といえば、この歌ですからね!


夜の女王がパミーナ姫に剣を渡し「これで宿敵ザラストロを殺せ!」と命じるシーンに出てきます。

パミーナ姫は、優しかったお母さんが人間離れした恐ろしい女王に豹変して大ショック。

↓怖すぎるビジュアルですが……(笑)
地獄の復讐が、我が心に煮えくり返る

死と絶望が我が身を焼き尽くす


お前がザラストロに死の苦しみを与えないなら

そう、お前はもはや私の娘ではない

数あるオペラアリアの中でも、とりわけ激しい超絶技巧で知られる曲。

『復讐の炎は地獄のように我が心に燃え』。

単に「夜の女王のアリア」と言われる時は、この曲を指します。女性による怒りの雄叫びが衝撃的!


こちらは様々なソプラノ歌手の歌を集めた動画。

皆さんはどの歌手が一番好きでしょうか。ぜひ聞き比べて下さい!

何という歌だー!

モーツァルトは歌手を殺す気か!?

ほんとにすごい歌!

最初の歌手は、椿姫やフィガロの伯爵夫人にも出てきたディアナ・ダムラウさんだね

最後の人も椿姫だ。

エディータ・グルベローヴァだな

4分台のナタリー・デセイさん(水色のドレス)も、現代最高のオペラ歌手と言われる人でーす
しかし、これは普通の人間の声じゃないよねえ。

モーツァルトはどうしてこんな曲を思いついたんだろう?

作曲を依頼した劇場支配人のシカネーダーが、とにかく「今までにないオペラを」と注文したみたいだよ。

モーツァルトの方もそうまで言われたら、一度聴いたら忘れられないような曲にしたかったんじゃないかな?

これ、世界で数人しか歌えないんだって?
そう言われることもあるね(ちょっと誇張しているようですが)。

とにかく、歌えるだけでもすごい! とんでもない難曲であることは、クラシックファンでない方にもお分かり頂けるかと思います

こちらの動画は、マンガ等を用いて『魔笛』の内容が非常に分かりやすくまとめられています。

20分近くあるので、お時間のある時にどうぞ!

モーツァルトの生涯最後のオペラ『魔笛』。他にもいろいろ動画があるので、ぜひ検索してみて下さいね。


次回、モーツァルトのオペラをもう一つご紹介します!

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