第59話 「恋とはどんなものかしら」

文字数 1,311文字

第2幕 第2景
伯爵夫人とスザンナは、部屋でケルビーノがやって来るのを待ちます。

少年はトラブルメーカーだけど、二人にとってはかわいくてしょうがない!

幼気なケルビーノが、あの人のお遊びの口説き文句を聞いてしまったなんて、悲しいこと。


いいえスザンナ、あなたに関係ない話ね。

でもあの子、困っているなら、どうして私の所に直接来なかったのかしら。(妙なところで恥ずかしがり屋さんね)

その唄(カンツォネッタ)というのはどこに?
ここにあります。

ちょうどいいわ、彼にこれを歌わせることにしましょう

スザンナは例の唄のことをさっそく報告してしまったようです。本人は冷静になったら、恥ずかしいと思うかもしれないのに……いつの世も、女はおしゃべりですね!


そうこうしているうちに、ケルビーノが来たようです。
さあさ、お入りください。士官様!
そんな言い方しないでよう~。

嫌なことを思い出しちゃうじゃないか。

僕はお別れしなくちゃならないんだ。こんなにお優しい伯爵夫人と

そしてこんなにお美しい!
(ため息)ああ、そうさ、もちろん
(ケルビーノの真似)

ああ、そうさ、もちろん。


この、ぶりっ子ちゃん!

さ、今朝私の所で歌ったのを、奥方様のために歌って!

何と、リハーサルなしに歌わされる羽目になったケルビーノ君!

傍若無人な少年も、伯爵夫人の前では激しく動揺します。

どなたのお作なの?
ご覧下さい。彼は真っ赤ですわ
わたくしのギターを取って、伴奏しておあげなさいな
ケルビーノはどうにか覚悟を決めます。
ぼ、僕、こんなに震えてますけど、

でも奥方様のご所望ならば……

ご所望よ。世話が焼けるわね
スザンナはギターでリトルネッロ(前奏)を弾きます。

ここでケルビーノによって歌われるのがアリエッタ(小さなアリア)「恋とはどんなものかしら」

オペラ『フィガロの結婚』を代表する有名な曲で、BGMとしてもいろいろな所で使われています。

(19世紀の書籍の挿絵)
あなた様方はご存知です

恋とはどんなものか


ですからご婦人方、ご覧ください

僕が心に恋を抱いているかどうか

僕が感じていることを申し上げます

こんなことは、僕には初めて

これが何なのかわかりません


何かが欲しくて仕方がなくて

時に喜び、時に苦しみです

身が凍り、でもまた感じます。魂が燃え上がるのを

そしてまた一瞬のうちに、身が凍ります

僕は幸せを探し求めてる

僕以外の誰かに

でも誰がそれを待ってくれているのか

それが何か、わかりません

こちらはオランダ国立オペラの動画です。

ケルビーノを演じるマリアンヌ・クレバッサさんの歌、そして少年らしい仕草が秀逸なので、皆様にぜひ見て頂きたいと思いました(スザンナがギターを弾いていないのがちょっと気になりますが)。


コミカルな演出かと思いきや。

昔のことを思い出して泣いてしまう伯爵夫人を、少年が一生懸命に慰めている様子が何とも健気でグッときます。これも素晴らしい解釈ではないでしょうか。

これ、「3分クッキング」のテーマソングじゃん
他にもCMや何かで聞いたことあるよ~
少年の可愛らしさが目一杯詰まった曲だね。

もしかしたら、世界で最も有名なオペラアリアかも!

モーツァルトの音楽の中でも、最も愛されている曲の一つではないでしょうか

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