第57話 「お授け下さい神様、何かの慰めを」

文字数 1,700文字

ここから第2幕だね
はい、第2幕もよろしくお願いします!

第1幕はフィガロ達に与えられる予定の部屋でお話が進んできましたが、ここから舞台は伯爵夫人の部屋に移りますよ~

お、伯爵夫人が泣いてるぞ?
第2幕 第1景
はめ込みベッド用のアルコーヴ(壁のくぼみ)、三つの扉のある豪奢な部屋。

伯爵夫人ロジーナが涙を流しながら、静かに歌います。

お授け下さい、愛の神様。なにがしかの慰めを
私の苦悩に、私の嘆きに。

大切なあの人をお返し下さるか、

さもなくば私を死なせて下さいませ

夫の愛を失い、悲しみに暮れる伯爵夫人が歌うのが、カヴァティーナ「お授け下さい神様、何がしかの慰めを」。

悲しい内容ですが、明るい長調で紡がれる、優しく清らかなイメージの歌です。

こちらは『椿姫』の動画でもご覧頂いた、ディアナ・ダムラウさん。全身純白の伯爵夫人は、この世の人ならぬ雰囲気ですね。

悲しいというより、優しさを感じさせる歌だね。

これが伯爵夫人のキャラクターなのか

モーツァルトの歌って、けっこう複雑だな。

悲しいのに、悲しくない。

これがヴェルディだったら、気が狂いそうな号泣ものの歌にしそうだけど?

そうだね。暗くなり過ぎず、悲しみを優しく包むのがモーツァルトなのかも。

涙はほんの一しずく、といった感じです

涙を拭う伯爵夫人。
こちらへ来て、かわいいスザンナ。

わたくしに、続きの話を聞かせて

もう終わってます!(あっさり)

あの人は、あなたを誘惑しようとしたのね?

お殿様は、そんな遠回しなことはなさいません。

あたしみたいな女とは、お金で取引なさろうとするのです!

ああ、あのひどいお人は、もうわたくしのことを愛していない!
でもお殿様は、貴女様には嫉妬深くなさいますよね?
そういうことなのよ。

当世の男たちは、不実で、身勝手で、プライドだけは高いの。

自分のことは棚に上げて、女の浮気は許さないのよ

とはいえ、慌てて言い添える伯爵夫人。
あ、だけど、フィガロはあなたのことを愛しているから、きっと大丈夫よ
(何も知らずに、歌いながら近づいてくる)ラララ……
あ、彼ですわ!
急いで出迎えるスザンナ。
来てちょうだい、フィガロ。奥方様がお待ちかねよ
フィガロが陽気に部屋に入ってきます。

涙の跡もあらわな伯爵夫人に、彼はニッコリとご挨拶。

ご心配いりませんよ、お殿様が僕の花嫁を気に入ったこと。


確かにお殿様は、あの領主権を密かに元にお戻しになりたがっている。

これは現実に可能なことだし、欲望を持つ人間としては自然なことですよね

現実に可能……!
自然……!
そう、実に自然なこと。

そしてスザンナが望めば、即実行です!

ちょっと。やめてよ!
はい。もうやめました♡
お殿様は計画遂行のため、お決めになられたんですよ。

僕を大使館付きの使い走りに。そしてスザンナを秘密参事に。


ところが彼女が頑固にお断りするもので、さあ困った!

窮したお殿様は「マルチェッリーナに加勢するぞ」と僕らを脅してきたのです。

話はざっとこんな感じですね

フィガロったら、冗談半分に言わないで!

深刻な問題なんだから

僕が冗談半分だと、お二人は不満なんですね?


でも大丈夫。僕はちゃーんと、考えてきましたよ。

さあ計画発表です! しっかり聞いて下さいね

フィガロの計画 その①


バジリオを通じて、伯爵が偶然に手紙を手にするよう仕向ける。

その手紙には、伯爵夫人が舞踏会で愛人と密会する件が書かれている。

聞いた途端に焦り出す伯爵夫人。
ええっ、そんな……!

あの人にそんな手紙を見せたら、嫉妬で気が狂って、恐ろしいことになるわ

なお結構じゃないですか!

その方が早く片付くというものです

フィガロは伯爵をまごつかせ、混乱させるつもりなのです。

自分がしようとしている悪事を、自分の妻がしていると思ったら?


そのことで伯爵が右往左往している間に、フィガロとスザンナはさっさと結婚式を挙げてしまおう。計画の主眼はそこにあります。

うーん。これはうまくいくのか?
妻を寝取られる悔しさを、フィガロは伯爵にも味わってもらおうとしてる?

でも無実の罪をかぶせられる伯爵夫人が可哀想な気も……

なかなか計画通りに進まないところが、このオペラの特色なのです。

次回もフィガロの計画が進みます!

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