第57話 「お授け下さい神様、何かの慰めを」
文字数 1,700文字
第2幕 第1景
はめ込みベッド用のアルコーヴ(壁のくぼみ)、三つの扉のある豪奢な部屋。
伯爵夫人ロジーナが涙を流しながら、静かに歌います。
夫の愛を失い、悲しみに暮れる伯爵夫人が歌うのが、カヴァティーナ「お授け下さい神様、何がしかの慰めを」。
悲しい内容ですが、明るい長調で紡がれる、優しく清らかなイメージの歌です。
こちらは『椿姫』の動画でもご覧頂いた、ディアナ・ダムラウさん。全身純白の伯爵夫人は、この世の人ならぬ雰囲気ですね。
涙を拭う伯爵夫人。
とはいえ、慌てて言い添える伯爵夫人。
急いで出迎えるスザンナ。
フィガロが陽気に部屋に入ってきます。
涙の跡もあらわな伯爵夫人に、彼はニッコリとご挨拶。
お殿様は計画遂行のため、お決めになられたんですよ。
僕を大使館付きの使い走りに。そしてスザンナを秘密参事に。
ところが彼女が頑固にお断りするもので、さあ困った!
窮したお殿様は「マルチェッリーナに加勢するぞ」と僕らを脅してきたのです。
話はざっとこんな感じですね
フィガロの計画 その①
バジリオを通じて、伯爵が偶然に手紙を手にするよう仕向ける。
その手紙には、伯爵夫人が舞踏会で愛人と密会する件が書かれている。
聞いた途端に焦り出す伯爵夫人。
フィガロは伯爵をまごつかせ、混乱させるつもりなのです。
自分がしようとしている悪事を、自分の妻がしていると思ったら?
そのことで伯爵が右往左往している間に、フィガロとスザンナはさっさと結婚式を挙げてしまおう。計画の主眼はそこにあります。