第47話 領主の例の特権で

文字数 1,258文字

はっとするフィガロ。

伯爵がここへやって来る?

何か不穏なものを感じます。


しーっと唇に指を立てた後、スザンナは事情を話します。

お殿様は最初、ご領地の外で美人を追いかけられたけれど、近頃はそれにも飽きられて。

今度はお城の中で、お楽しみに及びたいわけよ。

ただ、お美しい奥方様には、もう欲情しないらしくって……

(動揺しまくり)

だ、だ、だったら誰に欲情するってんだよ!

だ・か・ら。あなたのスザンナちゃんよ!
のけぞって驚くフィガロ。

まさにここは伯爵の居室からも、すぐに来られる部屋なのです。

しかもベッドをくれるといいます。何というあけすけな「親切」でしょう!

く~、何てこった。

下心のある施しかよ

まだあるわよ。私を疑わずに聞いてね。


ドン・バジリオ。あたしの歌の先生で、殿様の仲人を務められたあの人も、

あたしに繰り返し言い聞かせるのよ。

お殿様の言うことを聞きなさいって

バジリオ! あのクズ野郎!
伯爵様があたしたちにくれることになってる持参金だって、本当のお祝いじゃない。

言うことを聞きなさいって、プレッシャーかけてんのよ。

あたしにちょいちょいと、お楽しみの時間を寄越せっていうことよ。

領主の例の特権でね!

(※初夜権のことです)

ちょーっと待て!

あの特権は、伯爵様ご自身が廃止したじゃないか

初夜権とは……

ラテン語の「ユス・プリマエ・ノクティス」の訳語。権力者、聖職者などが、その共同体内で婚約した男女がいた場合、新郎よりも先に新婦と性交できる権利で、ヨーロッパでは主に中世に存在したとされます。

そうよ。廃止したはずよ。

でも今は後悔なさっているの。

だから復活させようとしているのよ。

それも、あたしから!

何ということでしょう!

しかしフィガロは、かえって腹を据え戦う気になりました。

ブラヴォー、気に入ったぜ。

何とご親切な伯爵様だ。

そっちがその気なら、相手してやろうじゃねえか

ここで鈴の音が響きます。
誰がお呼びだ?

奥方様か

さっと立ち上がり、扉へ向かうスザンナ。
じゃあね、ステキなフィガロ
負けるな。勇気を出せよ、僕の宝
スザンナはまともに戦えば負けることを知っています。

扉の向こうに体を滑らせつつ、フィガロに向かって自分の頭を指すのです。

あなたは脳みそをフル回転よ!
スザンナに危機が迫っているのに、妙な冗談を言い合って。

何か二人とも呑気だな~

スザンナはフィガロに疑われたくないんだろうけど、自分の魅力には自信がありそうだね。

さりげなくモテる自慢をしてるみたい。

それもフィガロの注意を引きたい気持ちからだろうね。

伯爵に言い寄られて、迷惑そうにしているスザンナだけど、ちょっぴりまんざらでもないような態度を取ることもあるんだ。「あたしを大事にしないと大変なことになるわよ」って言いたいのかも

女ってめんどくせ~
今回はダイジェスト映像で、全体の雰囲気を感じ取って下さい!

新国立劇場では、「段ボール・フィガロ」と呼ばれたこちらの演出が人気だったようです。

積み重なった真っ白なダンボールが、新生活を象徴。舞台全体が傾くのも、封建社会の終わりを告げているようです。

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