第17話 「アラゴネーズ」と闘牛士入場

文字数 1,687文字

最後の休憩は短めなんだね
三幕、四幕は少し短めっていうこともあるね。

たまに、続けて上演しちゃうこともあるようだけど……

たった10分の休憩しか取らないのなら、続けてやっちゃったほうがいいんじゃね~?
そうなんだけどね~。

第四幕は物語上、また少し時間が経っている設定なの。だから続けてやると、聴衆の方が不自然だと感じてしまうんだよね

第四幕の前に演奏されるのは、間奏曲「アラゴネーズ」。

アラゴン地方(スペイン北部)の調べという意味です。


タンバリンの規則的なリズムと、オーボエによる波打つようなメロディーが美しい曲です。

この物語の結末を予感させる、もの悲しい音楽になっています。

第四幕
今日はいよいよ、セビリアの闘牛開催日です!

闘牛場前の広場には、着飾った多くの人々が集まっています。

祝祭の空気に包まれ、華やかな雰囲気。人々は今か今かと、闘牛士の登場を待っています。

(闘牛場の入り口)
群衆の中では、かまびすしい物売りの声が響きます。
たったの2クアルトだ!

安いよ、安いよ!

美味しいオレンジはいかが?

涼しい扇子はいかが?

プログラムもあるぞ
おい、オレンジをくれ。早く!
このオペラグラス、いいな~
オレンジはいかが

扇子はいかが

あー!

またうちの母ちゃんが出てきた。

扇子をヒラヒラして、笑ってる

ここでは大人の合唱団はもちろん、児童合唱団、それからバレエ団の皆さんも再び勢ぞろいなんだね
興奮に包まれる大群衆。

いよいよこのオペラのハイライト、闘牛士たちの入場シーンが始まります!

闘牛士には階級があり、下から順に人々の前に姿を現します。

後から登場する闘牛士ほど、華やかな衣装を身に着け、人々の大きな喝采を浴びるのです。

来たぞ! 来たぞ! 四人組だ!
来たぞ! 来たぞ! 闘牛士だ!
来たわ、闘牛士よ!


槍にきらめく日の光!

帽子を空に投げ上げろ!


来たぞ、四人組!

闘牛士の一隊だ

人々はワクワクしながら待ちますが、最初は肩透かし。

一番最初に出てくるのは、警備のための警察官たちなのです。

現代と違って、この当時の警察は庶民を弾圧する威圧的存在。

子供たちは正直に歌います。

しかも親指を下に向けて大ブーイング!

ほら最初に出てくるのは、いけすかないお巡りさ。


帰れ! 帰れ! お巡り帰れ!

やっつけろ、帰れ!

警察官が馬で通り過ぎた後、

ようやく本命の闘牛士たちがやってきます。

行進に敬礼だ

勇敢なチュロに敬礼だ

バンザイ、チュロ

ごらん、バンデリジェーロを

きらびやかな衣装だよ、ごらん

別の一隊が来たぞ
ピカドールをごらん

何て美しいんだろう

しかし、みんなが待っているのはあの男。

真剣(エスパーダ)を持つ、最上級の闘牛士です。

エスパーダ……
エスパーダ……
エスパーダ……

エスパーダ……


静かに始まった合唱は、次第に大きくなっていきます。

そしてあの大スターの名を呼ぶのです。

エスカミーリョ……
エスカミーリョ、エスカミーリョ
エスカミーリョ!
音楽が最高潮に達したとき、最も華麗な衣装を身に着けたエスカミーリョが登場します!

花吹雪が舞い、人々は大きな拍手でこの英雄を迎えます。

闘牛士、剣の達人よ!
ドラマの最後に現れて

とどめの一撃を刺す男!

大合唱が、闘牛士の勇気をたたえます。
……

(帽子を取って手を振り、笑顔で人々の声援に応える)

……

(一緒にファンの声援に応える)

おいおい、ちょーっと待て!
カルメン、何でお前がそこにいるんだー(怒)!!

(お前のファンじゃねーし)

さあ今までで最大級のツッコミが、この二人から入りましたね?

でも、多くの人が同じように思うはず。


あなたはこれを許せますか?

この二人はすでに交際を開始しているようです

第四幕の闘牛士の入場。

大きな歌劇場では、本物の馬に乗って登場させる場合もあります。

オペラ『カルメン』の中で最も費用のかかるスペクタクルなシーンです。


(今日三人が観ているのはアマチュアの舞台なので、闘牛士はもちろん歩いて登場。

衣装等は手作りで制作したようです。このような場合、いかにお金をかけずに豪華に

仕上げるかが腕の見せ所ですね)


前奏曲のメロディーが合唱で出てくるところも、非常にドラマティック。

祝祭的な雰囲気がこの歌にあふれています。

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