第83話 『ドン・ジョヴァンニ』

文字数 1,463文字

最後にもう一つ、モーツァルトのオペラをご紹介しましょう。

二人は「ドン・ファン」って聞いたことある?

う……何か、女たらしの代名詞みたいな人?
ちょっと前に「紀州の……」っていうのがニュースになったな
ドン・ファンは17世紀のスペインにいたとされる伝説上の人物です。好色放蕩な美男子の代名詞だね。

これをイタリア語風に発音すると「ドン・ジョヴァンニ」となるわけです(上の画像は、オペラ『ドン・ジョヴァンニ』のワンシーンを描いた絵画だよ)

じゃあそのトンデモ・イケメンの話をオペラにしたってこと?
まじか。

でもカサノヴァの話もあったし、「フィガロ」であれだけお色気表現を見たから、そんなに意外でもねえぞ

ドン・ファン伝説のあらすじは、貴族の娘を誘拐してその父親を殺したドン・ファンが、父親の石像に呪い殺されるというもの。

この破滅的な主人公に惹かれた人は結構いたみたいで、多くの人が作品化してるんだ

こちらの画像はモリエールの戯曲『ドン・ジュアン』より。

(モリエールは17世紀フランスの劇作家)

こうした先行作品を元に、「フィガロ」と同じ台本作家ダ・ポンテがドン・ファン伝説をオペラ化したんだ。


ちなみに、モーツァルトに作曲を依頼したのはプラハのエステート劇場。

プラハでは「フィガロ」が大ヒットしたので、次のシーズンもモーツァルトで行くことにしたの。

だからオペラ『ドン・ジョヴァンニ』については初演もこの劇場で行われ、指揮はモーツァルト自身がやったんだって!

『ドン・ジョヴァンニ』からは、このアリアをお聞き頂きましょう!
遊び人ジョヴァンニを追ってきた、昔の女エルヴィラ。

ジョヴァンニの従者レポレッロが、もう諦めるよう彼女を諭す時に歌われるのが「カタログの歌」です。

(レポレッロです)


いいですか、奥さん。うちの旦那が征服した女の数たるや、私がこうしてカタログを作らされるほどだ。


まず、イタリアでは640人でしょ

ドイツでは231人でしょ

フランスでは100人、トルコでは91人

でもこのスペインでは……何と1003人だ!

(ドンナ・エルヴィーラです)

(そんなまさか……信じないわ)

軽い調子で1003人(mille e tre)と歌う部分、名台詞として知られています!
いや~、とにかくすごいね。

でもこんな破天荒な生き方が許されるはずないよね? 人を傷つけてるし……

地獄に落ちろって言われそうだよな
まさにその通り〜!

ジョヴァンニはラスト、自分が殺した騎士の石像によって、猛火に包まれて死ぬんだよ

そこ、うれしそうに言うなよ……
新国立劇場のダイジェスト映像がこちら。

モーツァルトらしい、明るくユーモラスな音楽に全編が包まれる中、冒頭に出てくる序曲と、ジョヴァンニが地獄へ落ちるラストシーン(同じ音楽が使われています)は暗く重厚な雰囲気となっています!

絶叫で終わるのか……

因果応報とはいえ、すさまじいラストだね

だよね。この演目はオペラ・ブッファとして書かれたけど、単純な喜劇とは言い難いので、モーツァルト自身も「悲喜劇(ドラマ・ジョコーソ)」と呼んだんだって
でも物語としては、この激しさが面白いのかもな
そう、過激な話ほど面白い(笑)!

なのでシーズン2では、「もっと激しく、もっと繊細に」という感じで、とにかく物語が面白い演目を取り上げたいと思います。

再開時期は未定ですが、気長にお待ちいただければ(笑)

ではその時にまたお会いしましょう〜

みんな、元気でな〜

というわけで、シーズン1はここでおしまいです。

最後までお付き合い頂いた皆様、本当にありがとうございました(作者より)。

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