第3話 …とその前に「前奏曲」
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あおぞら市文化会館は、ごく普通の多目的コンサートホール。
地域のイベントにも使われます。
建物、設備ともにかなり老朽化しており、住民の評判は芳しくありませんが……
……今日はせっかくのオペラ公演。楽しんでいきましょう!
オペラ専門の「歌劇場」の場合、舞台の手前に半地下の空間「オーケストラピット」があります(例:東京都渋谷区の新国立劇場)。
本来、楽団員はそこに入って演奏するのです。客席からはあまり見えません。
さあ、指揮者が入場してきました。みんな拍手で迎えます。
一瞬の静寂。いよいよ始まります!
まずは「前奏曲」です。聴いてみましょう!
劇音楽の始まりに、まだざわめいている聴衆の注意を引くために演奏された器楽曲を「序曲」(オーヴァーチュア)といいます。劇全体の性格や、あらすじを説明するような曲で、次第に表現方法が固定化されていきました。
後に作曲家がもう少し自由な形式で作ったものを、「前奏曲」(プレリュード)と呼ぶようになります。『カルメン』の場合はこちらですね。「即興」に近いイメージです。
舞台が明るくなりました。
見えてきたのは、古い町並み。
第一幕
セビリアの町の広場。貧しい人々が行き交っています。
目の前にはタバコ工場。王宮も近いので、衛兵が守備についています。
兵士の一人が、人々を眺めて歌い出します。
※以下、物語部分は
安藤元雄訳『オペラ対訳ライブラリー カルメン』音楽之友社
を参考にさせて頂きましたが、アレンジを加えており、台本に忠実ではありません。
また台本には各種の版があることが多く、演出の違いでも細部がかなり異なることをご了承下さい。
清楚で可愛らしい女の子が広場に登場します。
明らかに戸惑っています。
ミカエラは田舎から出てきたところ。恋人のホセは、モラーレスとは別の隊にいるので、今はここにいないようです。ミカエラはがっかりしつつも、また出直してくると言います。
だけどまだ彼女と話したいモラーレス。衛兵の交代の時間まで、自分たちの詰め所に入って待つようにと強く勧めます。
気付けば他の衛兵たちも寄ってきており、ミカエラはすっかり取り囲まれています。
ここで、ラッパの音が高らかに響きます。
衛兵の交代の時間です。
だけど最初に入ってきたのは子供たち。
教会の聖歌隊を前身とする、少年合唱団。登場シーンのあるオペラ演目も多く、見どころの一つとなっています。
子供たちとともに、銃を肩に担いだ「本物の」衛兵たちも入ってきます。
ずらっと整列し、今までの衛兵たちと交代するシーンもかっこいい。
やがて、じっと向き合う、ホセとモラーレス。