第75話 闇の中で進む「革命」

文字数 1,452文字

ようやくたどり着いた、第4幕。

ラストだね!

作者もちょっと疲れてるらしいぜ?
何しろ長いので。
お付き合い下さっている皆様、恐縮です(作者より)。
この第4幕は、夜の庭でストーリーが進むの。

暗闇だから、お互いの姿がよく見えず、登場人物は混乱するっていう設定なんだけど……


見えないのは客席にいる聴衆も同じ!

このシーンは昔から「演出家泣かせ」と言われています

第4幕 第1~4景
お城の長い回廊。

バルバリーナが一人、何かを探しています。

どうしよう……

困った。見つからないわ。

スザンナは何て言うかしら。お殿様も……

バルバリーナの唯一のアリア「あれをなくして……あたし困った」。

どこか悲しみを感じさせる旋律です。


今回はオペラの舞台ではありませんが、フランスのオーディション番組で歌う「天才少女」の動画をご覧下さい。この女の子がバルバリーナと同い年であるところが良いのです!

はいはい、注釈で~す!

今日はやけに早いタイミングで切るなあ……

だってこの歌、「フィガロ」の中でもかなり特殊なんだもん(笑)。


12歳の明るい女の子、バルバリーナのアリアにしては、何だか暗い雰囲気だと思わない?

確かに、「フィガロ」の中では初めて「まるごと短調」の歌を聴いたような気がする
そうなの。バルバリーナが歌う悲しみは、単になくし物をしたというだけではなく、もっと深い隠喩があるのではないかと言われています。


このオペラが公開された時点では、フランス革命はまだ予測できていなかったでしょう。でもこの物語は旧来の秩序を壊し、新しい世界を作り上げるというラストに向かっていきます。

身分や性差を隠す暗闇で歌われる、少女のアリア。


近いうちに失われる何かがあることを、モーツァルト達は察していたのではないか……

……こんな説があるのですが、皆さんはどうお感じになるでしょうか?

ちなみに「バルバリーナ」の名は「小さな野蛮人」の意味。

一見無力な少女こそが、秩序を壊す力の源なのかもしれません。

フィガロがやって来ます。
どうした、バルバリーナ?
なくしちまったのよ、従兄(にい)さん
(従姉のスザンナと結婚したので、バルバリーナにとってフィガロは「従兄」になったわけです)
無邪気なバルバリーナは、ペラペラとしゃべってしまいます。

伯爵から、手紙を留めていたピンをスザンナに返しておくよう頼まれたことを。

なくしたのは、そのピンだったのです。

……これだろ?

(と、硬い表情で差し出す)

ありがと、フィガロ!

誰にも見られないよう注意しなさいって言われてたの。

だから、内緒にしといてね!

バルバリーナがスキップで去った後、その場に凍り付くフィガロ。

今、とんでもないことを知らされてしまいました!

ついさっき結婚したばかりなのに……

スザンナは伯爵と逢引をする気でいるんだ。

松の木を象徴するあのピンが、すべてを物語っている

様子を見ていたマルチェッリーナがやって来ます。

母親にすがりつき、泣いてしまうフィガロ。

母さん……僕は死んじゃうよ
結婚したばかりで、僕は妻に裏切られるような情けない亭主にならなきゃいけないんだ!
落ち着きなさい、フィガロ。

そう簡単に人を疑うもんじゃないわ

マルチェッリーナの忠告も聞かず、今度は怒りを露わにするフィガロ。
見てろ。世界中の亭主どもの仇を討ってやる!
フィガロも相変わらず単純だなあ……
おばさんは悪役から一転、「いい人」になってる
この物語は身分だけでなく、男尊女卑の秩序を打ち壊すイメージも持っているんだよね。

というわけで、この後は女たちが結束して男たちに対抗していきます!

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