第76話 「牡の山羊と牝の山羊は」

文字数 1,322文字

第4幕 第4~6景
一人、残されるマルチェッリーナ。

怒り心頭で去って行く息子を、呆れ顔で見送ります。

わが息子ながら、呆れたこと。

すぐにスザンナに知らせてあげよう

スザンナは潔白に決まってるわよ。

世の女たち、結束しましょう。男たちを見返してやりましょう!

ここからマルチェッリーナのアリア「牡の山羊と牝の山羊は」


「フィガロ」は長い演目なので、省略されることも多い曲です。でもユーモラスな魅力にあふれ、「善玉」となったマルチェッリーナの見せ場の一つとなっています。

子供まで産みながら、長い間結婚してもらえなかった彼女。ギャグ調でありながら、身勝手な男たちへの本音も滲み出ている一曲です。

牡の山羊と牝の山羊は、いつも仲良し。

仔ヤギ同士だって、喧嘩はしないわ。

獰猛な獣だって、相手をそっとしておくものよ

なのに人間の女たちは哀れなもの。

不実な男を愛して、むごい仕打ちを受けるのよ

オーストラリア、シドニーのオペラハウス(建築の方で有名ですね)での公演から。

こちらのマルチェッリーナは、メガネと胸の付けボクロがいい(笑)!

剽軽でセクシーなおばさん、マルチェッリーナの魅力全開です。


女たちよ、一緒に戦おう!

……って感じで、一気にフェミニズムの空気になったね

第1幕でマルチェッリーナはスザンナとあんなに言い争ってたのに、すっかり変わったな
利害が一致した、っていうことだね。

マルチェッリーナは女中頭になるぐらいなので、物事を冷静に捉えるタイプの女性だったのかも。思い込みの激しい息子を見たら、お嫁さんの肩を持って当然!


さほど人気は高くないアリアですが、この物語のテーマは身分だけでなく男女の主導権の転換にもあります。革命を象徴する一曲ではないでしょうか。

ここで、舞台は場面転換。

両側に小さな館のある、樹木の生い茂った庭。もちろん伯爵のお城の庭です。

果物とドーナツを持ったバルバリーナがやってきます。
ランラン♪

これから愛しのケルビーノ君と楽しいデートよ。

左側の館で待ち合わせなの

お城の厨房に寄って、おやつを調達してきたんだよ。

料理人のおじさんたちに、キス一つ払わされちゃった♡

12歳の少女にキス強要かよ……

ここに出てくる男たち、みんな犯罪者レベルだな

ところがここで、人の気配が。バルバリーナは慌てて隠れます。


やってきたのは、ランプを持ち、マントを羽織ったフィガロ。バルトロ、バジリオもついて来ており、さらにお城の奉公人の男たちがぞろぞろとやってきます。

誰かいるのか……?

バルバリーナか?

(と言ってランプで辺りを照らす)

一体何なのだ。

お前が来いと言うから来たんだぞ

その犯罪者みたいな恰好は何なんです?
間もなく分かりますよ。

これから我が花嫁とお殿様のお祭りが始まります。だから我々はそれを祝ってやるんですよ!

(独白)

ちぇっ。あたし抜きで話し合うなんて

じゃ、皆さんこの辺りにいて下さいね。

僕は段取りを付けに行きます。口笛で合図をしますので、その時に集まって下さいね

こんな大ごとにして、大丈夫か、フィガロ?
フィガロも伯爵と似ているところがあるよね~。

思い込みだけで女の浮気を疑って、後で潔白だと知ったら自分が恥ずかしいのに

後でスザンナにパーンとひっぱたかれるので安心してね(笑)
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