第51話 「自分で自分がわからない」
文字数 1,435文字
いきなり新婚夫婦(?)の部屋に飛び込んできた、小姓のケルビーノ。
泣きながら、この少年はスザンナにすがり付いてきます。
いつものことなのでしょう。スザンナは特に驚きもせず、むしろ歓迎する様子。
とはいえ、この少年が伯爵からあらぬ誤解を受け、クビになってしまう。その話が本当なら、ちょっと見過ごせない話です。
ちっとも秘かではないのですが……
我が意を得たり、とばかりにケルビーノはうなずきます。
どうやら伯爵夫人の話になると、自分が失業の危機にあるという切迫感はどこかへ行ってしまうようです。
バルバリーナはスザンナの従妹に当たる女の子。同じようにお城の使用人で、後で出てきますよ。
またこの少年ケルビーノの名前ですが、智天使ケルビムから来ています。古い絵画では頭に直接羽根が生えた姿で表されることも多いですが、だいたい金髪の美少年のイメージなのだそう。
「ケルビーノ(ケルビム)のように美しい」という常套句もあるそうです
↑有名なこの天使の絵(※ラファエロの『システィーナの聖母』の一部)も智天使ケルビム。日本では某イタリアンファミレスの内装などで見かけますね!
言うや否や、ケルビーノはスザンナの手からリボンをひったくります。
スザンナはリボンを取り返そうとしますが、ケルビーノはちょろちょろと椅子の周りを回って逃げます。
スザンナは怒り狂って追いかけますが、捕まえられません。
そのうち疲れて止まってしまい、ケルビーノを怒鳴りつけます。
紙切れを差し出すケルビーノ。
ここで歌われるのが、ケルビーノのアリア「自分で自分が分からない」。
あらゆる女性に恋をしてしまう、思春期の少年の混乱ぶりを描いた歌です。