第10話 最高に切ない「花の歌」

文字数 1,316文字

ホセはしおれた花を取り出し、カルメンに見せます。

そして思いつめた様子で、カルメンへの愛を語り出すのです。


ここで歌われるのが「花の歌(お前が投げたこの花は)」。

お前が投げたこの花……

牢屋の中でも、決して手放さなかった

(……呆れた。まだ持っていたんだ)
しぼみ、枯れても、この花は甘い香りを放っていた。

この香りがあったから、僕は暗闇の中、お前の顔を思い浮かべることができたんだ。

(女々しいわね。どこまでグズグズ言う気かしら)
憎んでやろう、呪ってやろうと自分に問いかけもした。

どうして運命は、あの女を僕の人生に立ち入らせたのか、と。

だが自分の呪いを自分でとがめ、

僕ははっきりと感じ取ったんだ。


僕の願いはただ一つだけ!

カルメン、お前に会うことだけだ!

ああ、カルメン、愛してる……

カルメンの冷たい態度をよそに、ホセの方は切々と自分の想いを歌い上げます。

一方的だけど、ホセの本気度がひしひしと伝わってくる名曲です。


こちらはドイツの人気テノール、ヨナス・カウフマンさんの映像。

動画では(出獄後のためか?)メイクで目の下に隈がありますが、この人、とーってもイケメンです。歌唱力のみならず、容姿も演技力もご堪能ください(笑)!

うーん、これぞ熱演!

最後の「カルメン、ジュ・テーム(愛してる)」の言葉が胸に響くね。


普通の女性だったら、ここまで愛されたら泣いて喜んじゃうと思うけど?

カルメンっていう女には、その有難みが分かんないんじゃないかな~
ホセはこんなに一生懸命なのに、と思うよね。

でもこれは、カルメンが今欲しい言葉じゃなかったみたい。

完全にホセの一方通行だね。

第一幕の「ハバネラ」で予告されていた通り、恋は追いかけると逃げちゃうんだ

いいや。あんたはあたしのこと、愛してないよ。

本当に愛してたら……

愛してたら?
何もかも捨てて、あたしに付いてくるはずだ。

一緒にジプシーの旅に出るはずだ

放浪の旅は素晴らしい。何もかもが自由だと、カルメンはホセに強く訴えます。
そうだよ、いい考え!

あんたも一緒に行こう。

素晴らしい日々が待ってるよ

もちろん、ホセにとっては受け入れられる話ではありません。
な、何だって!? 冗談はやめてくれよ。

僕に出奔しろって言ってんのか? 今の生活と仕事を捨てろって言ってんのか!?

ホセには、安定した仕事があります。

あくまで今の生活のまま、カルメンと付き合いたい。それがホセの願いです。

あり得ない。そんな無茶はできないよ。

君は何という要求をするんだ

あっそ。

じゃ、もういいよ。あんたなんかに用はない。とっとと帰りな!

住む世界が違い過ぎる二人。

水と油のように、決して交わることがありません。

分かった。もう帰る!

なんてひどい女だ。もう会わないよ。

さようなら!

さようなら!
二人が別れを決めた、まさにその時。

トントンと扉が叩かれ、とんでもない人物が入って来るのです。

あ、ホセじゃないか!

何でお前がここにいるんだ! オレの女、カルメンと何をしてるんだ!

ええええ~

何というタイミングの悪さ! しかも相手はホセの上官、スニーガじゃん

スニーガは、カルメン目当て。店から人が消えた頃を見計らって、戻ってきたんだね
ここで別れた方が、ホセのためには良かったんだろうけどな
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