第62話 「いいから出てきなさい」
文字数 1,754文字
第二幕 第三景
待ってましたとばかり、狩猟服姿の伯爵がズカズカと部屋に入ってきます。
じろっと疑いの目で部屋を見回す伯爵。
夫人はぎこちなく笑ってごまかします。
伯爵が取り出したのは、フィガロが書いた例の手紙です!
そこには、伯爵夫人の浮気をうかがわせる文面があるはず。
息を呑み、身構える伯爵夫人。
ところがこの時、衣裳部屋で大きな物音がするのです。
がたーん
苦し気に言い訳をする伯爵夫人ですが、伯爵はもう疑念のかたまり。
衣裳部屋に誰かがいるだろうと、夫人に詰め寄ります。
夫人はスザンナだろうと答えてしまい(さっき部屋に帰ったと言ったので矛盾しています)、ますます伯爵の疑いを強めることに。
ここでスザンナが召使部屋に通じるドアから戻ってきますが、二人の言い争う様子を聞いて大慌て。
すぐに隠れ、物陰からそっと夫婦の様子を窺います。
ここから三重唱「いいから出てきなさい」です。
衣裳部屋の扉をドンドンと叩く伯爵。
状況が少し飲み込めてきたスザンナ。
固唾を飲んで様子を見守ります。
これは大変なことになりそう……
スザンナは隠れたまま、青ざめています。このまま喧嘩が激しくなると、伯爵夫妻は決裂してしまうかもしれません。これは伯爵家にとって、大スキャンダルです。
イギリスのカントリー・ハウス「グラインドボーン」で行われるオペラフェスティバルより。所有者・資産家のクリスティ家によって主催されるもので、特にモーツァルトのオペラに力を入れているそうです。
ベッドの下で、顔だけ出して歌うスザンナが、お茶目でかわいいですよ!
伯爵はすべての扉に、ガチャっガチャっと鍵をかけていきます。
夫人はそれを見て、スザンナが戻って来られないと思い込み、絶望します。
夫人は不承不承、夫と腕を組みます。
伯爵は部屋を出る前にくるっと振り向き、衣裳部屋の扉を指さします。
物陰でビクっとするスザンナ。
伯爵夫妻は出て行きます。