第18話 「もしオレを愛しているなら」

文字数 1,206文字

本番前のつかの間、二人きりになるカルメンとエスカミーリョ。


二人の間では、恋が始まったばかりです。今は一番盛り上がっている時期のよう。

これ以上ないほど甘美なデュエットが歌われます。

もしオレを愛しているなら……カルメン。

間もなくオレを誇りに思うだろう

ああ。愛してるわ、エスカミーリョ。

こんなに好きになった人はいなかった。

この言葉が嘘なら死んでもいい

ああ、愛してる
愛してる
カルメンと軽くキスを交わすと、エスカミーリョは背筋を伸ばして闘牛場へと入って行きます。

うっとりとして、その後ろ姿を見送るカルメン。

ロシアのアレクサンドル・ヴィノグラードフさんは、バリトンではなくバス歌手ですが、艶のある低い声がエスカミーリョの雰囲気と合っていて、とても素敵です。

ぜひ聞いてみて下さい!

(劇場は前回の動画と同じ、アメリカのメトロポリタン歌劇場。歌手は別人ですが、演出・衣装が同じです)

もはやどう突っ込んで良いのか分からなくなってきた(笑)。

しかしカルメンの、開き直った悪女っぷりは、ある意味すごいね

こんなに嫌味たっぷりのラブソング、初めて聞いたよ

だけどエスカミーリョって人も、よく分からないな~。

カルメンがこんな女だと分かっていて付き合うのか、お前は!

そうだね。エスカミーリョは毎日を命がけで生きている人だから、カルメンと同じように刹那的なところがあるのかも

そして、こんなに甘やかなデュエット曲なのに、どこか不穏な空気が漂っています。
なんか……この後に起こることの予兆のような気がする……
エスカミーリョがいなくなった後、

メルセデスとフラスキータが慌てた様子で、カルメンの元へ駆け寄ってきます。

ちょ、ちょっとカルメン!

ここにいちゃ、いけないわ

気を付けて。あいつが来てるわ。

ホセよ。

人込みに隠れてる

あそこ。こっちを窺ってる
そ~っと仰ぎ見るカルメン。

直後、ぎょっとして下を向きます。

ほ、……ほんとだ。

見えたわ

どうやらカルメンは、ホセに付きまとわれているようです。

しかしとっくに運命を受け入れる覚悟をしているカルメンは、さほど動じません。
忠告ありがとう。

でもね。カルメンは逃げないよ。

ちゃんとあいつと話し合って、納得してもらうんだから

ほんと、気を付けてね……
気を付けてね……
もうすぐ闘牛が始まるので、メルセデスとフラスキータは会場の中へと入って行きます。

いっぽう、カルメンは一人だけ外に残ります。


落ち着かない気持ちで、かつての恋人が現れるのを待つカルメン。

明るかったオーケストラの音楽が、ここで暗く転調します。

(う……来た!)

(内心の動揺を必死に押し隠して)

……あんたね(汗)?
……オレだ
カルメンの前に立つ、うらぶれた姿のホセ。

着飾ったカルメンとは対照的に、ホセの服装はボロボロです。荒んだ生活を思わせます。

……何か、異様な空気だぞ!
怖~い展開になってきた!
そう、この薄気味悪い雰囲気が何とも言えません。

次回、怒涛の『カルメン』最終回です!

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