第18話 「もしオレを愛しているなら」
文字数 1,206文字
本番前のつかの間、二人きりになるカルメンとエスカミーリョ。
二人の間では、恋が始まったばかりです。今は一番盛り上がっている時期のよう。
これ以上ないほど甘美なデュエットが歌われます。
カルメンと軽くキスを交わすと、エスカミーリョは背筋を伸ばして闘牛場へと入って行きます。
うっとりとして、その後ろ姿を見送るカルメン。
ロシアのアレクサンドル・ヴィノグラードフさんは、バリトンではなくバス歌手ですが、艶のある低い声がエスカミーリョの雰囲気と合っていて、とても素敵です。
ぜひ聞いてみて下さい!
(劇場は前回の動画と同じ、アメリカのメトロポリタン歌劇場。歌手は別人ですが、演出・衣装が同じです)
そして、こんなに甘やかなデュエット曲なのに、どこか不穏な空気が漂っています。
エスカミーリョがいなくなった後、
メルセデスとフラスキータが慌てた様子で、カルメンの元へ駆け寄ってきます。
そ~っと仰ぎ見るカルメン。
直後、ぎょっとして下を向きます。
どうやらカルメンは、ホセに付きまとわれているようです。
しかしとっくに運命を受け入れる覚悟をしているカルメンは、さほど動じません。
もうすぐ闘牛が始まるので、メルセデスとフラスキータは会場の中へと入って行きます。
いっぽう、カルメンは一人だけ外に残ります。
落ち着かない気持ちで、かつての恋人が現れるのを待つカルメン。
明るかったオーケストラの音楽が、ここで暗く転調します。
カルメンの前に立つ、うらぶれた姿のホセ。
着飾ったカルメンとは対照的に、ホセの服装はボロボロです。荒んだ生活を思わせます。